活動記録其の12・飛騨川編
文:隊長
2001年6月10日
チーム“鮫”巨石の沈む飛騨川で、曇りのち雷雨、そして晴れて霧。
今回のMAP

“飛騨川”はオレ(隊長)のイメージの中では「かなりスゴい」部類に入っている川であった。
 2001年2ndステージ・その2として6月10日(日)、木曽川の支流、岐阜県・飛騨川に向かったのはオレ(隊長)、イシカワ顧問、“かつお”にしお隊員、そしてゲスト隊員として我がチーム“鮫”のホームページを見て同行を申し出た自称“初心者”のなるなるゲスト隊員と「川下り2回目」という“ラーメン通”だいけんゲスト隊員の2人を加えた5名である。

 さて、飛騨川といえば「飛水峡」であろう。しかしリバーガイドを読むと
「ラフトで中・上級」とある。
「死ぬでしょう、ワタシたち」
と、飛騨川行きを検討していたオレ(隊長)とイシカワ顧問は顔を見合わせてしまった。
「もうひとつ、ちょっと上流に中山七里ってコースも載ってますよ」とイシカワ顧問。しかしそこも「ラフトで中級」という記述が。
「...。」
 要するにそこは、どうやらチーム“鮫”の実力では漕行不可能、という意味らしい。普通であればこれで飛騨川断念となるところだが、そのヘンは往生際の悪い“鮫”である。ってゆーか飛水峡はムリでも、それに近い景観が楽しめればそれでいーのだ。てなコトで仕事の合間を縫って徹夜明け朝一番でイシカワ顧問はスカウティングに向かった(←仕事が忙しいにも関わらず、最近生活がカヌー中心になってるイシカワ顧問)。結果、「名倉ダム下からJR高山本線・白川口駅前あたりなら7〜8kmとれそう」という報告があり、今回の飛騨川ツアーは決定したのだった。
 国道41号線をひた走り、岐阜に入った我々は途中のユーストアでゲスト隊員たち(なるなるさん&だいけんさん)と合流。食糧の仕入れを済ませ、一路JR白川口駅へと向かう。
 途中、下を流れる飛騨川が所々見えるが、なんか意外と穏やかな川のように見える。しかしそれは「ひつじの皮」で、下には凶暴な「オオカミの顔」が隠れているのかもしれない...。
 アウトポイント・白川口駅近くの漁協下の駐車場に車を一台置く。10分後、約8km上流にある、名倉ダムから少し下流の川原に降りた我々はフネを組み立て始めた。
 かつお隊員は今回イシカワ顧問から譲り受けたスキップジャック“かつお号”をカスタムして参戦の予定だったが、カスタム中に次から次へと原因不明の穴が空き、遂に修理不能となったため、急遽“かつお2号”(←あずさ2号みたい)として購入予定のGUMOTEX.jrの試乗ってことで、オレ(隊長)の“シャーク2号”を借りての出艇である。
 イシカワ顧問は前回の武儀川ツアー時、K2 CHALLENGERに懲りてオレに売り渡したため、今回は本来の愛艇カラカルTだ。そしてオレは“絶好調”スターンズ・リバーランナー、なるなるさんたちはリンクスUに二人乗りである。

 当初、飛騨川に「バトルな川」というイメージを抱いていた我々は、かつお隊員の参戦について心配していた。何と言っても川は3回目、柔軟性はおろか柔軟な適応力も持っていない(だから魚へんに堅いと書いて“鰹”)かつお隊員である。しかも安定の良いスキップジャックから安定イマイチのGUMOTEX.jrに乗り換えていきなりである。そこで超安全な川ならいざ知らず、よりによって飛騨川なのだ。とても親切なオレは、一応ちょっとでも浮力が高い方が安全だろってコトで、下に布一枚しかないGUMOTEX.jrのフロアに敷けるようビーチマットを用意してきていた。しかし、そのビーチマットの幅がイマイチ広すぎたため、下に敷くどころかハミ出てしまい、ほとんど意味を成さない。うーん失敗...ま、いっか。
 とか言いながらオレ自身はといえば“飛騨川”に勝手なイメージを膨らませて「穏やかなコースといえども、油断ならん。ヤバいポイントもあるかも...」と、今回ヘルメット(湾岸戦争バージョン)を被っての参戦であった。これまでは穏やかな川ばかりであったため、ヘルメットを被るのは初である。
 午後1時ちょいすぎ、山が迫っているため少々狭い曇り空の下、我々は飛騨川へと繰り出した...直後にかつお隊員が乗り込みに失敗して疎沈。やはりスキップジャックで慣れているかつお隊員はバランスをとるのに苦労しているようだ。ツーリング開始すぐのところにある、結構落差のある瀬(でも2級くらい?)をいきなりポーテージ。しかしそれ以外の所でもあまりの危なっかしさに、なるなるさんが見かねてアドバイスをしている。

 その時オレ(隊長)とイシカワ顧問はと言えば、そんなかつお隊員をほったらかしてずんずん先へと向かい、巨石に挟まれた岩場の景観の見事さに感嘆し、ボケーと口を開けて眺めてしまっていた。
 山あいを流れる飛騨川は巨石が多く、ゴツゴツとした男性的な感じのする岩場の景観が特徴といえるような川だった。しかし、今回のコースがダムとダムの間であったからか、水の清冽さは上流部のわりに今ひとつで、透明度は木曽川より若干キレイなぐらいだろうか。前週、武儀川の透明さにとろけていたオレとしては、水質には期待していただけにガッカリしてしまった。だが、飛騨川には別の魅力がある。進んでいく内、何よりその深いトロ場に沈む巨石の群れの数々に、オレは徐々に魅了されていった。
 流れがほとんどないようなトロ場では、まったくといっていいほどの無風状態のため、水上の風景が鏡と化した水面に逆さに写し取られていた。そこに写る、水面から突き出した巨石の数々の中を縫うように漕ぎ進める。まるで水没した古代遺跡の中を探検しているかのような、不思議な緊張感のある世界がそこにあった。

 水中をよく見るとモアイのような巨石がたくさん沈んでいるのが確認できる。水の中にある別の次元の世界を上から見下ろしているような感覚だ。その巨石の下は、深いグリーンの水の中に溶け込むようにスーッと見えなくなっており、それが水面下の世界を謎のベールに包むのに一役かっているように思えた。

 落差だけは3級くらいあるような、瀬が3つ4つ続いている所にさしかかる。“飛騨川”という名前にまだビクビクしていた我々はしっかりスカウティングをする。岩場を歩いて行ってみると、かなり怖そうな(デカい岩が多いので余計にそう見える)所である。びびっている我々を見て呆れたのか、なるなるさんたちが「ボクらが先に行きましょうか?」と先陣を買って出てくれた。さすがチーム“鮫”である。某ホームページの掲示板に書かれていたような「名前からして怖そう」などというイメージと、その実力は大きくかけ離れているのだった(←自慢になってない)。
 瀬に突入するなるなるさん達のリンクスU! しかし大岩を避け、予定通りのコースを進むが途中で止まってしまう。落差はあっても水量と勢いが全然ないようだ。それを見てイシカワ顧問もチャレンジするが、やはり瀬の真ん中で岩に乗り上げ、停止する。続いてオレ(隊長)の番だが、結果はやはり同じであった。それでも大事をとって、かつお隊員だけはポーテージする。
遅いランチをとるためポイントを見つけて上陸したのはもう15時近くだった。
 今回のランチメニューは飛騨川ってコトで「飛騨牛・肉うどん」と、なるなるさん達のリクエストによる「アサリの酒蒸し」という“鮫”にしてはゴーカなメニューだ。しかし小さな鍋に山盛り入れすぎた肉うどんが沸騰して溢れはじめた頃、ポツポツと雨が降り始め、「ゴロゴロゴロ〜」という3級の瀬音より不吉なカミナリ・サウンドが空から響き始めたのであった。
 慌てた我々は速攻で“飛騨牛肉うどん”を食べ尽くすと、そそくさと川に出る。ほとんど静水ばかりのコースが裏目に出て、まだ全体の半分程度しか来ていない。ここからずっとカミナリの洗礼を受け続けながら下るのはちょっと遠慮したかった。いつものお気楽☆ツーリング(ぼんやり景色を眺めながら“流されて”いることが多い)とは違ってずっと漕ぎ続けることになった我々は、降りしきる小雨の中、山の端や高い木の陰など、直接の落雷を避けるため川の真ん中ではなく、わざと高いものの側を通るようにしつつゴールを目指していた。イシカワ顧問は、もし雷が近づいてきたら「途中リタイア→ヒッチハイク」という最終手段も考えていたらしい。
 しかし地獄の使者が叩くドラムのような(←大げさ)カミナリの音は30分ほどで去り、しばらくすると逆に日が射してきた。雨の直後の山からは夕日を浴びて霧のようなモヤが立ち登り、水墨画の様な幽玄の世界が現れる。その後も古代遺跡のような巨石が散在する飛騨川は我々の目を楽しませてくれた。黄昏の飛騨川をゆったり漕ぐ我々の上方を、川沿いを走るJR高山本線の「ワイドビュー飛騨」が走り抜けていった。飛騨川に対して持っていたイメージは大きく変わっていた。(←深夜特急風の終わり方)

今回の教訓: 「やっぱり、ダムは川を汚しているよーな気がする。」