活動記録其の41・飛騨川編part−2
文:隊長
2002年5月12日
赤い二連星、飛騨川に沈む!?
〜そこに立ちはだかった“すりむきの瀬”とは?〜 
カラリと晴れた晴天が気持ちいい5月12日(日)朝約10時、道の駅「ロックガーデンひちそう」にはオレ、シミズ隊員、シバタ隊員と、今期初参加となるmiki-fish夫婦隊員の姿があった。しばらくすると2時間近く前に着いてスカウティングをしていたアビルマン隊員も到着。続いてイシカワ顧問。あとは今朝9時まで岐阜で仕事をしていて、そのままこちらに向かっているsakuzo隊員のみである。今日はこの8人のメンバーでの飛騨川、まったりコース下りである。

 集合時間から約30分遅れでsakuzo隊員が到着し、道の駅「ロックガーデンひちそう」を出発する。国道41号線沿いを飛騨川上流に向けて進む。かの有名な飛水峡を通過し、前回と同じアウトポイント・白川口駅下の駐車場に到着。そこに7台中4台の車を置き、後の3台で約8km上流・名倉ダム下の川原に向かった。
 車で入れるギリギリの所まで行き、あとは徒歩で草むらを抜けて岩場を100mくらい行くと川原がある。そこで早速フネを組み立て始める我々。飛騨川は前日まで降っていた雨のせいか、昨年来たときよりは水量が多いように見える。しかしダム〜ダム間なので、降雨後とはいえ、やはり劇的には増えていない。さて、今日はどれくらい歩くコトになるのか? はたまた
スイスイ行けるのか?

 約11時45分、8人・7艇のセッティングを終えた我々は飛騨川にエントリーした。オレはいつものシャーク4号(GUMOTEX・ヘリオス380)、シミズ隊員は飛騨川なだけにホームグラウンド!? という飛騨之守弐号・スターンズレイカーソロ。イシカワ顧問はカラカルT、そしてシバタ隊員はGUMOTEX・ヘリオス380、アビルマン隊員は相も変わらず懲りない“激烈最強号”ことGUMOTEX・サファリ、sakuzo隊員も同・赤いサファリである。なんだかこの二人は、揖斐川に続いてまたしても
赤い2連星”である。そしてmiki-fish夫婦隊員はやはり“航空母艦”オリノコなので、今日の“鮫”はバトルシップから巡洋艦・駆逐艦まで揃って、まるで“連合艦隊”の様相である。そういえばmiki-fish旦那隊員が、飛騨川の件をメールでやりとりしている時に
「教ぃえて〜、くださぁい〜」
などと、さだまさしの“防人の歌”(映画・連合艦隊のテーマ曲)のフレーズでメールを送ってきていたのを思い出す。
などとぼんやり考えている間に、エントリー直後のちょっとした落ち込みが目前に迫ってきた。前回はシャーク3号・リバーランナーという過剰装備で来てしまったオレだったが、今回は余裕ブチかましまくりのシャーク4号・GUMOTEXヘリオスである。しかし当たり前のようにカンタンにクリア。
「ああ〜、さいこー!」
 と、振り返ると、sakuzo隊員が、隠れ岩にかすってバランスを崩し、
いきなりアッサリと撃沈する瞬間が目に飛び込んできた。チーム“鮫”No.1の使い手・sakuzo隊員の初沈は、やはりサファリだったのだ。この瀬は確かに落差だけはあり、そういえば昨年は“鰹”ことにしお隊員などはいきなりポーテージしていた。
「今の瀬はワシの
サファリには4級でしたー」
というのが、sakuzo隊員チーム“鮫”初撃沈の弁だった。
なんだか、いきなり波乱のスタートである。

 飛騨川は相変わらず巨石の景観が楽しめる川だった。しかし水質も相変わらずで、やっぱり碧がかっている。基本的に淀みが多いからなのだろうか。流れている所も無いわけではないが、他の川に比べると流れているうちに入らないような、やっぱり超スローな流れである。
 しばらくは何も起こらず。晴天下の巨岩ロケーションを楽しみながら進む。右岸の木立の向こうからは、時折電車が通過していくような音が聞こえてくる。高山本線が通っているのだ。

 さて、浅い飛騨川で、
一番ビクビクしているヤツは誰だったか? それはもちろんこの男、アビルマン隊員である。彼の愛艇・サファリは横方向の安定がイマイチで、ちょっとした隠れ岩にかするコトが命取りになるのは過去の疎沈数の多さが物語っている。水量の豊富な川はパワーも上がり、ウェーブも大きくなることからイヤがるアビルマン隊員だったが、水量の少ない川でも結局「撃沈」か「疎沈」かの違いで、やっぱり「沈」の危険は変わらないのだった。

 そんな感じでビビリながらも、にこやかに漕ぎ続けるアビルマン隊員。ちなみに前日、
「明日の天気なら沈しても気持ちよさそ〜」
などと、ワザと沈することを匂わせているともとれるメールを送ってきている。取りようによっては
「予告沈」か? とも思えるが、とりあえずsakuzo隊員と違って無事のようだ。

 しばらくして、前回来たときはその流れの複雑さ、落差にビビりまくったものの、結局流れが弱くて引っ掛かって止まってしまっただけの瀬が現れた。また今日も複雑なコース取りが必要なのは間違いないが、どうせ止まってしまうに違いない。そう思ったオレはスカウティングもせずに先頭で突入する。すると! 全部で20m近い岩場の続く所は、最初は右に左にウネり、ちょっと楽しませてくれたものの、一番最後の落差のある瀬では、やっぱり岩が大きく露出しすぎているため、通れずに乗り上げて止まってしまった。
「うーむ、またか」
そう言いながらフネを降りて押すオレ。なんとか瀬からは脱出し、左岸の岩場にフネを上げて後続のメンバーにコースを教えようと少し岩づたいに戻ってみた。その間にsakuzo隊員が引っ掛かりながらも瀬を通過。見ると次のシミズ隊員は、オレが引っ掛かった所よりちょっと手前の所でやはり乗り上げて、フネを降りている。そして...? その横を見覚えのあるスケルトンブルーのインフレータブル・クーラーボックスが流れていく。
「あれ?」
そうである、もちろんアビルマン隊員のものであった。前日某ディスカウントショップでアビルマン隊員が、公式戦デビューの櫛田川で失ったサファリの浮力体代わりにと購入したものだった。
「またやりやがったか...」
と、今度は赤いフネが流れてきた。
「やれやれ」
と言うのも束の間、今度は瀬の中でフネを降りて立ち往生していたシミズ隊員が、アビルマン隊員のサファリに気を取られたのか自分のフネを流出させてしまう。なんだか次から次へと...
もうメチャクチャ!?


 今度は巨岩の向こうを回って歩いてきたアビルマン隊員が見えた。どうやら瀬にビビって降り、スカウティングかポーテージかしようと思ったら意外と流れが速く、荷物からフネから次々と流してしまったあげく仕方なく右岸を歩いてきたようだ。何やってるんだか...。
 結局流れ出した荷物とフネはsakuzo隊員と、フネに追いついたシミズ隊員に回収されたが、アビルマン隊員は足が付かない所でフネを受け取ろうとしてまた少し流されたりしている。ほんとにまったくもって、何だかな〜なチーム“鮫”なのだった。

 続いてシバタ隊員、イシカワ顧問、miki-fish夫婦隊員と、事態が収拾されるのをトロ場で順番待ちしていたメンバーが順に下ってくる。イシカワ顧問だけが、オレの指さしたコースを無事に抜けたが、後のメンバーはみんな引っ掛かってコースが変わったり、止まったりしながらなんとか抜けてきたのだった。
 ここは順番待ちでゴタゴタして進まなかったので、
“渋滞の瀬”と名付けられる(またしても勝手にワケのわからない名前を瀬につけてしまうチーム“鮫”)。
 そしてその後しばらくして、ランチタイムのため右岸の比較的広い岩場に上陸。

 今日の給食当番は初、シミズ隊員である。シミズ隊員は
「料理ができないんでカンタンなものでお茶を濁します。
物体X(長良川編part−3参照)になったらスミマセン」
などと事前には弱気の発言だったが、メニューはシブく「ざるそば」なのだった。
 そして、先にそのメニューを聞いていたオレは、もう少しそれが腹に溜まるものになるよう、カレーシチューの準備をしてきていた。しかも具はネギと鶏肉のみという、そばに掛ければいわゆる「カレー南蛮」ってヤツになることを計算してのメニュー決定である(←自画自賛。
 しかし、やはり問題発生。10人分のそば(しかも
また「乾麺」←このヘンが学習してないチーム“鮫”)を茹でて、なおかつカレーシチュー8皿分を作ると、水が足りないかも...。
 これは、シミズ隊員が気を利かせてポリタンクの他にさらに、仕上げ用の水を用意していたため、なんとか茹でる時の水をケチれば足りそうということが判明。
 結局水切り用のザルを三段にし、順に上から水を流してそばを仕上げる「三段式そばさらし」のワザ(笑)で少ない水を駆使してのざるそばは完成した。
 いつものようにビールで乾杯する。今回より新ルールとして、
「食事が完成する前にビールを飲むべからず」
が適用されている。しかし天気のいい日に川原で、カヌーの合間に食べる食い物はどうしてこんなにもウマいのか。とにかく最高にウマい! あっという間に10人分のざるそばは消えて無くなり、8皿分のカレーシチューも無くなった。

 続いて後半戦である。相変わらず飛騨川は浅く、結構小さいなんでもない瀬でも隠れ岩が地雷のように潜んでいて、アビルマン隊員とsakuzo隊員の“赤い二連星”を脅かしていた。オレやシバタ隊員のヘリオスは、380cmの巨体に一人づつしか乗っていないため超・軽快で、浅くても比較的スイスイ行く。miki-fish夫婦隊員の“航空母艦”オリノコは、浮力はあるのだが、二人乗っているため、若干喫水が下がっている。しかし、やっぱり巨体のワリに無事に通過してきている。シミズ隊員とイシカワ顧問はといえば、こちらも変わらずいつも通り好調に来ているようだ。

 ちょっと行くと子供たちが魚取りをしている所に出会う。sakuzo隊員がにこやかに漕ぎ寄せ、何が取れたか聞いている。心温まる交流である。
 と、その直後のちょっとした瀬の後に、右岸から
木の枝が垂れ下がっている所が! メンバーに緊張が走る。シバタ隊員は前回参加の武儀川で“枝沈”しているし、アビルマン隊員は気田川で同様の竹で“竹沈”をカマしている。これは誰かが!? と思うが、結局全員枝に全身ブラシをかけられながらも無事クリア。
 アビルマン隊員も相当上達してきたのか「予告沈」もしない。今日は“渋滞の瀬”でフネの受け取りに失敗した以外は、まったくもって無事である。
「予告沈」は幻なのか!?

 しかしやはり「その時」はやってきた。
 逆風にひいひい言いながら耐えて進んだ我々が、堰堤を越えてもうラストスパートかという時、いくらか落差のある瀬が次々と襲ってくる箇所に遭遇。
「こんな所あったっけ?」
と、いつものようにスッカリ昨年のコトを忘れている飛騨川2回目のオレとイシカワ顧問であるが、実際なんてことないながらも意外と落差だけはある瀬が、蛇行する飛騨川の流れの中にあちこちある。
 すると中に1m弱くらいの落差がある瀬が現れた。オレは先頭で突っ込んでクリアするが、途中に岩がいくつか突き出していて、ちょっとヒヤッとする。
 と、続いてきたsakuzo隊員が瀬の最後の落ち込みの手前で岩に乗り上げ、撃沈!
フネは腹を見せて流れ出し、sakuzo隊員は
 
「イテッ! イテッ! イテェェー!」
と叫びながらガランゴロンと瀬の中を体一つで転がり流されて来た。
 そして同じサファリを駆る、「赤い二連星」のもうひとり、アビルマン隊員がやってくる。
 が、sakuzo隊員と
まったく同じ岩に乗り上げてバランスを崩し、やはり最後の落ち込みの前で撃沈! これまたsakuzo隊員と同様に赤いフネを先に流出させ、
「痛たたたたたたたたたー!」
とか言いながらガランゴロンと瀬の中を転がってきた。

 続いたシミズ隊員とシバタ隊員は同じく途中の岩に引っかかり、
二人とも後ろ向きに流されて瀬に突入してしまったものの、なぜか無事、沈せずクリア。イシカワ顧問とmiki-fish夫婦隊員も当たり前のように無事クリアした。

 sakuzo隊員とアビルマン隊員の体勢を立て直すため、ちょっと右岸に上がる。見ると、二人とも岩場を流されて来た時、かなりあちこち打ったようだ。sakuzo隊員はお尻をガンガン打ち、ウェットのお尻部分が
ささくれ立つほどの擦り具合で、
「ケツが痛いー」
などと言って珍しく苦悶の表情を浮かべている。アビルマン隊員は足を水中で岩に擦ったらしく、
「うーん、右足が一部ピンク色になってる☆」
となんだかニコやかなのか、痛いのかよくわからない反応をしていた。頑丈そうに見えるこのアビルマンでも、皮膚は普通の人間並らしく、やっぱり岩場の多い川ではウェットスーツくらいは必要なようだ。
 二人とも、いや、このサファリの
“赤い二連星”が「アベック沈」してあちこち擦りむいたので、ここは“すりむきの瀬”(←またロクでもない名前)と名付けることにしよう。

 そしてその後もまったりと漕ぎ、我々は約16時30分、名倉の発電所放水口前でアウトした。
 早く上がれたので、駐車場でフネ並べて干す。フネは30分もかからず、ほぼ完全に乾かすことができた。そんなことでだんだん日が長くなって、夏が近づいてきていることを実感したような気がした飛騨川ツアーであった。

今回の教訓: 「瀬はあってもいいけど、浅い瀬はお尻や足をすりむく。
やっぱりウェットスーツは着といたほうがいいらしい」