活動記録其の13・揖斐川編
文:隊長
2001年6月17日
“wの喜劇”二人艇でも撃沈!
揖斐峡にコダマするイチロー&オカモト隊員の撃沈音!
〜そしてコゲメシ・カレーのお味は!?〜
東海地方の川、といえば「木曽三川」。そしてそれは東から順に木曽川・長良川・揖斐川である。三つの川はそれぞれ濃尾平野を縦断し、河口付近でほぼ一体となり伊勢湾に注いでいる。これだけの大河が三つもまとまる下流付近では、ムカシから河川の氾濫に悩まされ、治水にたいそうな犠牲が払われていたと小学校の時に習った覚えがある。我々“鮫”は過去にこのうちの二つ、木曽川と長良川は過去に下っているし、また東海地方のカヌー乗りであればこのどちらかの川をベースにしているハズである。しかし最後に残された第三の川、揖斐川だけは不思議にリバーガイドを見てもほとんど触れられていない。そしてその支流のひとつ、根尾川では過去にイシカワ顧問が“独り鮫”の結果発電所の瀬で大撃沈。パドルまで流失した上、命からがら生還している。果たしてその本流であるところの揖斐川とは、いったいいかなる川なのか!?
 シーズン'01・2ndステージ、未知の川チャレンジ計画第3弾として、我々は今回の目的地を揖斐川に定めていた。いー感じの天気に恵まれた6月17日(日)午後約13時、東海地区を代表する大河、岐阜県・揖斐川の上流、揖斐川町役場の駐車場にはイラつくオレ(隊長)と風邪ひきの土居隊員、イシカワ顧問、オカモト隊員の4名の姿があった。我々は遅刻しているラスティック伊藤隊員と“撃沈王”イチロー隊員を待っていた。伊藤隊員もイチロー隊員も比較的現地に近いところに住んでいるにも関わらず、いや、近いからこそ遅くなっているようである(←つまり甘くみていた)。
 地図上で見る限り揖斐川はこの揖斐川町辺りから堰堤に次ぐ堰堤で、カヌーで下った人の話を聞かないのはこれが原因と思われる。実際、ひどい区間になると300mおきぐらいに堰堤があるのだ。そういえば、支流の根尾川も中流から下は同じように堰堤だらけになっていた。やはり本流も支流と同じなのだろうか。
 ここから少し上流に遡ると、久瀬ダムから西平ダムという二つのダムがある。その間ならば漕行可能のようだ。またその名も“揖斐峡”という、ステキっぽい名前のところまである。まったり系カヌーチームの我々としてはとにかく、「景色がいい」というのが重要なので、この地名は見ただけでかなり期待させられるものがあった。事前にスカウティングに行ったラスティック伊藤隊員も「いやぁ、あそこは結構いいですよ」というほど、ロケーションは期待できそうなのだ。が、そのスカウティング情報を持っている伊藤隊員、遅刻。ってゆーか、結局到着は最後であった。
 ラスティック伊藤隊員の先導で揖斐川沿いを遡った我々がエントリーしたのは、久瀬ダムの下流約1.5kmの地点である。時間はすでに14時を回っていた。今回はここから約5kmの行程である。

 揖斐川といってもここまで遡ってくると水量はやはり多くない。いや、ダムで何カ所もせき止められ(それでもまだ、更に上流に新しいダムを建設中らしい)、放水量を調節されているからかも知れないが、なんか少ない。しかし途中に水力発電所があり、その放水口から先は割と豊富な感じである。その発電所までの前半はホントにのんびりゆったりコースであった。“撃沈王”イチロー&オカモト隊員は、おーすみ隊員(離隊)より譲り受けたGUMOTEXの二人艇ヘリオスに二人乗りで初参戦である。ラスティック伊藤隊員は通販で購入したスターンズ・レイカータンデムの進水式&デビュー戦だ。あとのメンバーはいつも通りのフネでの出艇であった。


イチロー&オカモト艇はなかなか息が合わず、あっちゃこっちゃしてなかなか方向が定まらないでいる。そーいえばセッティングで空気入れる時からコンビネーションが悪く、チグハグな動きをしていた。ってゆーか、乗り込むときに前後ろを間違え、船尾を前にして乗ってしまったというお笑いコンビのような二人組である。やはり遅れていく。伊藤隊員の新艇は二人艇で約3.5mあり、“鮫”史上もっとも長いフネとなったせいか、「ラスティック1号・スキップジャック」よりかなり安定度・乗り心地共にいいらしく、いつもにも増してまったり漕いでいる。風邪ひきの土居隊員は風邪のクセに上半身ハダカにライフジャケット一枚という出で立ちで「寒い!」とか言いながら、いつもの半分以下の元気にも関わらずほぼ先頭グループにいた。オレとイシカワ顧問は前回の飛騨川で静水を漕ぎ慣れたせいか、弱流とはいえ流れのある川を漕ぐのはラクラクで、張り切って漕いでいく。
 揖斐川の水質は、とりあえず流れているあたりではそこそこの透明度があった。しかしトロ場では深く濃い緑色となり、飛騨川より、少々濁っている感じがする。やはりダムのせいなのだろうか。しかし「揖斐峡」というだけあって、切り立った山に両側を囲まれた峡谷のロケーションは我々を満足させるのに十分なのだった。


 風もほとんどない静かな水面を我々は漕ぎ進めて行く。黄色い木の葉が水面を流れていくのが見えた。ゆっくりパドルを進めていったつもりなのだが、すぅーっと追い抜いてしまう。フネの作った波に木の葉はもまれていった。揖斐峡は静けさに包まれていた。



 そしてイチロー&オカモト艇が最後尾でフラフラしていたころ、オレは問題の水力発電所の放水口の手前にいた。後ろには土居隊員とイシカワ顧問、そして伊藤隊員が続く。山間のロケーションで目の前には発電所の放水口である。このシチュエーションに緊張を隠しきれないのはもちろんイシカワ顧問であった(※根尾川篇参照)。前回の飛騨川と違ってヘルメットも被らず、いつもと同じ探検帽のオレとは対照的に、イシカワ顧問はシッカリとヘルメットを被り、あごひももキュッと引き締めている。かなりドキドキしているに違いない。
 放水口は見たところ放水量は結構あるのだが、川幅が全体に広くなっており、深さも意外とあるためか流れはそれほど渦巻いたりはしていない。その先も瀬のようになっている所が見えるものの、一直線に先が見通せて、流速は早そうだがクラスで言えばせいぜい1級程度である。クリアを確信し、気合いを入れたパドリングで突入する。左横からの強い流れを感じるが、それを予想して斜めに突っ込んでいたオレは予定通りのコースを進む。流れに乗って4・500mはあるストレートを一気に滑り降りる。かなり爽快だ。下の岩のエディーに入って待っていると続々とみんなが下ってきた。みんな爽快感でニコニコ顔になっている。
 そろそろ腹が減ったのでランチポイントを探すことにする。再び先頭に出て川原を探すオレ。と、前方に流れが右に寄り、崖に当たった流れがハネ返ってまた下の崖に当たるという「W字状」の流れと、それに絡む瀬が3つほど続いているのが見える。これをしのいでからメシにしようと決めたオレは、その下の川原を上陸地点にすべく、またしても先頭を切って瀬に突っ込んだ。思ったよりパワーがある流れだった。放水口からかなり離れているのだが、ほぼ一直線に来た水の流れが急に蛇行を始め、その勢いを一気に崖にぶつけている感じだ。崖が迫り、ハネ返った波に乗り上げるオレのシャーク3号。しかし員弁川の“魔の撃沈カーブ”を何度もクリアしているオレと、スキップジャックより高性能なシャーク3号のコンビを撃沈させるには弱すぎたようだ(←ちょっと自己陶酔)。横Gをくらいながらもカンタンにクリアしてしまった。しかし事件は、続くイシカワ顧問、土居隊員・伊藤隊員と全員がクリアした直後に起こった。

 やっぱりこの男、“ザ・撃沈王”イチロー隊員とオカモト隊員の二人艇が最後に、流れに乗って入って来た。が、その態勢は思いっきり「横向き」になっていた。“w”の崖に「ドリフト」というより、まるで「スライディング」するような格好で突っ込んでしまう。重心が内側に傾いているので、フネも内側にローリング...。「ザボン!」という音が聞こえそうなくらいハッキリと撃沈した二人は、転覆したフネの向こう側に姿を消してしまった。次に見えた時、流れの中の二人は、あえぎながら逆さになったフネにしがみつこうとしていた。そしてそのまま20mほど流され、なんとか足の付く所にたどり着いたようだ。土居隊員が笑いこけながら流出した荷物を拾っている。人の沈は何回見てもおもしろいものだ。我々は腹を抱えて大笑いしてしまっていた。
 “wの瀬”(←勝手に命名)の後、ランチポイントに上がった二人の反応は様々だった。イチロー隊員はサスガに慣れているようで、妙にスッキリした顔をしており、すがすがしい雰囲気すら漂わせている。オカモト隊員はライフジャケットの浮力が足りなかったのか、足のつかないところでハナ先だけが水上に出ていたらしく、「鼻から水飲んだー」と顔を曲げて苦悶していた。



 そしてお待ちかねの川原メニューは今回、なつかしの味「飯ごう炊さん&カレー」である。川原でメシを炊く。しかしこの小学校の林間学校を思い出すメニューに、これまた「お約束」の結末が待っているなどとは、その時まだ誰も気が付いていなかった。
 研いだコメにヒタヒタぐらいの水を入れ、火に掛ける。わずか5分ほどでフタが持ち上がり湯気が漏れ始める。が、その「湯気」が焦げ臭い匂いの「白煙」に変わるのにも5分はかからなかった。火力が強すぎて焦げたのである。湯気を見たイチロー隊員が「赤子泣いてもフタとるな」などと笑っている間に、我々のご飯は着々と焦げていたのだ。二つの鍋の両方が焦げ、紆余曲折の後、よりヒドイ焦げ方の方を土居隊員・オカモト隊員・イシカワ顧問が食べる。オカモト隊員が土居隊員の持ってきたおにぎりにも、カレーを掛けて食べるという強引なことをしている一方、イシカワ顧問はレトルトカレーを温めるために沸かした川の水でカップラーメンを作って食べようとしていた(←結局みんなに止められてやめた)。大のオトコが6人集まっても、相変わらずメチャクチャのチーム“鮫”なのであった。
 その後も我々は「まった〜り」とフネを漕ぎ西平ダム手前の深い碧色をしたたまり場で、落ちていく夕日を見ながらしばし漂った後、上陸したのだった。

今回の教訓: 「二人艇に二人乗りすれば安定する!
 とは言い切れない。それは人による。」