活動記録其の1・員弁川編part1
文:隊長
2000年7月2日
2000年シーズン本格開幕!
阿下喜〜星川・員弁川12kmツアー
「発見!“魔の撃沈カーブ”!!」
今回のMAP


 2000年7月某日。三重県・員弁川(いなべがわ)の上流、三方を山に囲まれる山間の街、阿下喜付近の川原から怪しげな黄色いビニール製カヤックの一団が次々と離岸していった。その一団の名は「名古屋カヌーチーム“鮫”」
名古屋市内の物好き会社員、物好き大学生などから構成されるインフレータブルカヤックのみのカヌーチームである。

 チーム“鮫”として初の集団リバーツアーとなったその日のメンバーは隊長、土居隊員、イチロー隊員、ダッシュ隊員、つよし隊員、ジョニィ隊員の6名である。
 その記念すべきスタートからものの数秒後、イチロー隊員はいきなりフネにのりそこね、疎沈。早くも後の“撃沈王”の片鱗を見せつけていた。

 員弁川は上流部といえどもとても穏やかな川である。周りは山に囲まれ、所によっては垂直の岩肌が川べりまで迫っている“秘境”っぽい所まであるが、流れはあくまで穏やかである。水量も豊富とは言えず、普通ならカヌーができるところではない。しかし我々のインフレータブル「お手軽」ビニールカヤックは、そんな水深の浅い川でもスイスイ進むことができ、それがこの、非・本格的なリバーツアーを可能にしていた。

 全員が無事エントリーし、順調に滑り出したかに見えたチーム“鮫”であったが、早くもその約5分後、ちょっとした瀬(しかし今思うと1級未満?ってカンジだった)を通過した後、後方に波の乱れる音を聞いたオレ(隊長)は振り返った。すると水面からカッパのように顔を出しているイチロー隊員の姿が目に入った。
 チーム“鮫”初の撃沈はやはりこの男“ザ・撃沈王”イチロー隊員であった。とりあえずイチロー隊員は 「チッ、しくじったぜ」などと取り繕っていたが、しまいには前週の練習の時に「誰も漕ぎ方を教えてくれなかった」からだとか、「ちょっとバランスを崩しただけ」だとか、「瀬に突入する順番がイカンですね」だとか言い訳を連発し始める始末であった。
 しかしそのイチロー隊員のへらず口をダマらせる極上の恐怖が、しばらく先で大きな口を開けて彼を待ち受けていようとは誰も知る由もなかった。

 川幅がキュッと細くなり、流れが左岸に吸い込まれている所があったかと思うと、急速にスピードの上がる小さな右カーブが続き、その直後(約3m)に平たいテトラポットを角に意地悪く配置した、ほぼ「直角?」と思われるようなキッツイ左カーブが2級程度の瀬を伴って待ち受けている箇所を発見! これがチーム“鮫”史上初にして、2000年度最大の難所といわれる員弁川“魔の撃沈カーブ”であった。
「うおぉぉぉぉ!」
先頭にいたオレはスピードに乗ったまま最初のカーブに突っ込んでしまったためアウトコースにふくらみ、一瞬テトラに衝突!? というところまで接近。ヒヤっとするも、絶妙のパドルさばきで最後の直角カーブをさながら“水上ドリフト”のように艇尾をすべらせ無事クリアした。思わずパドルを頭上に振り上げ、
「クリアー!」
となぜか歯を食いしばりながら、雄叫びをあげてしまったほどの爽快感である。この時のオレはまちがいなくリポビタンDのCMの主人公の一人だった(と思う)。
 だが、へなちょこぞろいのウチのメンバーは!? と、ふと我に帰ったオレはスグにフネを岸に寄せ、後ろを振り返った。
次に突入してきたのは土居隊員。チーム“鮫”の切り込み隊長兼鉄砲玉であるにも関わらずナゼか瀬の突入はいつも2番手だ。土居隊員は重い2人艇ながらもパドルを器用に使ってなんとかクリアー。
 続いてダッシュ隊員。まだ練習も含めて2回目であるが、ダイエットのために“鮫”に参加したぐらい太っているワリに運動神経がいいらしく、絶妙のバランスと突入ルートでパドルさばきもなかなか板についていた。

 颯爽とクリアしたダッシュ隊員の後はしばらく間があいたが、2人が続けてカーブに入ってくるのが見えた。イチロー隊員とジョニィ隊員である。哀しいことに、右カーブにスピードに乗って突入した(というより吸い込まれた)イチロー隊員はそのまま、なすすべもなく外寄りのコースを進んでいた。結果、最後の直角カーブでテトラポットに艇の左を猛スピードで乗り上げてしまい、そのまま綺麗にスキップジャックの青い腹を見せつつ、もんどりうって流れの真ん中に「ドボン!」と、ぼてくり落ちていった。
2発目の撃沈である。まさに押しも押されもせぬ「撃沈王」誕生の瞬間であった。


 5秒後、続いたジョニィ隊員もまったく同じコースを辿り、まったく同じ運命も辿ってしまったことは言うまでもない。
 そしてこの光景をオレとダッシュ隊員は腹を抱えて笑ってしまっていた。人の撃沈は見ていて面白いと聞いていたが、それはかなり本当であった。
 そんなこんなでチーム“鮫”初の難所、“撃沈カーブ”は犠牲者2名を出し、その存在を我々に知らしめたのである。



 その後どうやっても車では来られないようなジャングル風の川原に到着した我々は、バーベキューセットを持ち出し、豪華にもカルビ焼き肉を始めた。ズブ濡れのイチロー、いや“撃沈王”イチロー隊員はシャツを乾かしながら地黒の肌をさらに焼きつつ、撃沈の余韻に浸っていた。メンバーの食欲は、初めての爽快なリバーツーリングのせいかやたら昂揚し、全員が凄まじいまでの食欲を見せたため、のどかなはずのランチタイムもすぐに終わってしまった。そして再度出発。
しかしそのランチポイントのすぐ目の前にはまたしても2級程度の瀬がいくつか散在するポイントがあり、水音を立てて我々を威嚇している。イチロー隊員は当たり前のように瀬を避け、しょっちゅう引っかかって止まりながらも浅瀬をノロノロ漕いで行ったため
「魚へんに弱いと書いて“鰯”(いわし)、それはイチロー」
などとメンバーにからかわれていた。
つよし隊員も“撃沈カーブ”で2隊員が撃沈する様を目撃してびびったのか、イチロー隊員に続いて浅瀬を進んでいった。鰯が2匹である。

 その後は川幅が狭いながらも夏草が両側を覆う素敵なロケーションの川を、照りつける太陽のもと爽快に漕ぎ下るというまさに「気分は最高」のダウンリバーツアーであった。

今回の教訓: なし! 最高!

○○○番外編○○○

情けないジョニィ


ダッシュ隊員危機一髪!迫るテトラポット