文:隊長 |
2001年8月12日 | |||
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東海地区を中心に局地的豪雨が吹き荒れたお盆一日前の8月12日(日)、久々に金山総合駅・南口に集合した我々は岐阜県では「土岐川」、愛知県に入ると「庄内川」と呼ばれる川に向かった。今日のメンバーはオレ(隊長)、そして今月末には仕事の関係で中華人民共和国へと赴任するため日本を離れてしまうラスティック伊藤隊員、沖縄出身で高校は体育科に通っていたという“自然児”ふっちゃんゲスト隊員(♀)、そして前回の豊川ツアーで計6沈をブチかまして栄えある“疎沈王”の称号を得たMr.6(シックス)ことダッシュ隊員の4名である。 員弁川、今や東海地方の名のある川という川をほとんど制覇しつつある我々、名古屋カヌーチーム“鮫”の「発祥の地」、いわば我々にとってはエルサレムのような“聖地”である(←大ゲサ)。この第一のホームリバー遠征はなんと今年度初なのだ。それには二つの理由がある。ひとつは昨年9月、全国的にニュースでも大々的に報道された「一年分の降水量の半分」が「一日で」降ったという「東海豪雨」の後、流れが変わり、また川底が馴らされて浅くなってしまったといわれていたこと。そしてもうひとつはこのところの少雨によって、昨年以上の渇水が続いているということだった。しかし 「今日はとりあえず渇水の心配はなさそうだな」 一昨年、“鮫”のもととなるカヤック遊びをしていた堰堤の所の水位を見た時、オレはそう思った。こちらは雨がそれほど降らなかったのか、堰堤を越えるほどの水は無かったが、経験上、この水位なら問題なく下れるハズだった。天気も薄曇りに時々晴れ間が覗くといった感じで、コンディションは悪くないように思われた。そこをアウトポイントにしてダッシュ隊員の車を置き、我々はいつものエントリーポイント・阿下喜に向かう。今日はムカシに帰って馴染みの8kmコースということにする。 途中、これまた馴染みのジャスコで食糧を買いだした我々が、阿下喜からエントリーしたのは午後2時を少し回った頃だ。エントリーポイントは、いきなり流れが大きく変わっており、以前は左岸を流れていた本流が右岸に寄ってしまっている。しかも全体に川幅が広くなってかなり浅くなってしまっていた。水深が20cmあれば通れる我々のインフレータブルカヤックが、すぐ引っかかって止まってしまう。水量は少なくないハズなのに。早くも不安になってしまった。 今回、ふっちゃんゲスト隊員はラスティック伊藤隊員の二人艇“RUSTIC−U”スターンズ・レイカータンデムに同乗し、Mr.6ことダッシュ隊員は“疎沈号”GUMOTEX・サファリ、オレは久々に“タンデム・スキップジャック”CHALLENGER K2を駆っての員弁川下りである。ダッシュ隊員は前回与えられた“疎沈王”の称号がよほど不服らしく、 「このフネはホントにバランスが悪いんです!」 としつこく強調している。それにしても員弁川は以前の流れが跡形もなくなっているところが何カ所もあった。進んでいくうちにそれが明らかになり、気分が徐々にヘコんで行く。一年前、あの“撃沈王”が産声を上げた小さな瀬も、流れが変わって無くなってしまっていた。しかも深くなっているならまだいいのだが、全体に浅くなり、澱みが深くて秘境っぽかったところまで普通の平べったいザラ瀬になっている。面白さは半減していた。堰堤のポーテージも、付近にある埋没していたテトラポットがほとんど露出してしまい、フネを引いていくことすら困難だ。当然のように歩くところが非常に多い。これじゃ渇水の時の「地獄の水中歩行」と同じである。うんざりしてくるが、ふっちゃんゲスト隊員は 「楽しー、カヌーっていいねー!」 と喜んでいるので、 「まぁ、コレはコレでいーのかなぁ」 とも思う。遠征であちこちのイイ川を見てきてしまっているので、前より感動が薄れているのかも知れないと思った。 そうこうするうちに、細い水路のような所で、倒れた木の枝が張り出して水上の行く手を阻んでいるところを発見。ちょうどライニングダウンしていたので、フネに腹這いになって乗っかり、枝の下を通過する。と、しばらくして後方からふっちゃんゲスト隊員の笑い声が...。振り返るとダッシュ隊員が疎沈していた。
そうしてダッシュ隊員が疎沈パフォーマンスで笑いを提供したりしつつ、やっといつものランチポイントまでたどり着いた我々はジャスコで買ったおにぎりセットを取り出し、ビールとチューハイで乾杯する。ところどころ青空が見える薄曇りの空の下、我々は楽しいランチタイムに舌鼓を打っていた。しかも今日は川原で「和食の後のコーヒー」をたしなむべく、インスタントコーヒーと水を買ってきていたのだ。しかし! ここでもやはり問題発生。コップは忘れずに買って持ってきたクセに、またしてもお湯を沸かす「鍋」を車の中に忘れてきてしまったのだ! またあほである。なんで我々はこんなにも学習しないのであろうか。仕方なく、まったくもっていつかの木曽川の如く、またしても我々はビールの空き缶でお湯を沸かし、それでコーヒーを入れたりしてしまったのだった。しかし結構ウマい。 ランチポイントを出る時、ダッシュ隊員が安定性を見てくれというので、オレがサファリに乗り、ダッシュ隊員がCHALLENGER K2に乗る。乗ってみると確かにサファリは安定性が良いとは言えなかった。幅があまりないため、最初はふらつく感じがする。しかしこの感覚はどこかで...と思い当たるのはオレの“シャーク2号”GUMOTEX Jr.であった。ほとんど同じ感じの安定感である。腰で合わせる漕艇術を覚えるまでは確かにコワいかも、と思うが、そのつもりで乗るとシャーク2号より長さも剛性もあるためタテ方向の安定度は良く、スピードも出るようだ。かなりイイじゃないの。これ見よがしにダッシュ隊員の前でサファリを操ってターンまでカマしてやる。すると左右のチューブがデカくて、CHALLENGER K2を操るのにも四苦八苦していたダッシュ隊員がひとこと言った。 「スイマセン!」 これでもうフネのせいには出来なくなったようだ。すると今度はふっちゃんゲスト隊員がCHALLENGER K2に乗ってみたいと言いだし、ダッシュ隊員と交代。果敢に一人で漕いでみせ、予想以上にたくましいところを見せてくれた。そのまましばらく行くとダッシュ隊員が代わってくれというのでオレ→CHALLENGER K2、ふっちゃんゲスト隊員→スターンズ、ダッシュ隊員→サファリと、もとのサヤに戻る。ダッシュ隊員曰く、オレがあんまりサファリを乗りこなしているのでオレのフネのように見えてクヤシクなったらしい。そしてまたしばらく行くとふっちゃんゲスト隊員が今度はサファリに乗りたいと言いだし、再びダッシュ隊員と交代。ダッシュ隊員はわざわざ小さな瀬の前でニヤリと腹黒い笑いを見せ、 「ここで代わってあげよう」 とフネを譲った。イキナリ瀬に突入させて、ふっちゃんゲスト隊員の沈を誘う魂胆のようである。しかしオレに続いて瀬に入ってきたふっちゃんゲスト隊員はバランスを何度も崩しそうになりながら絶妙なリカバリーを見せて見事にサファリを操って見せるではないか! さすが“自然児”である。こうしてMr.6(シックス)の悪の野望はもろくも砕け散ったのであった。 その後ラスティック伊藤隊員のフネに戻ったふっちゃんゲスト隊員は、流れが変わって弱くなったとはいえ、アノ“撃沈カーブ”に引っかかった重たいスターンズ・レイカータンデムを伊藤隊員を乗せたまま押し出し、自分は瀬に飛び込んで泳いで追いつこうとするなど、ナチュラルパワー全開のパフォーマンスを我々に見せつけたのだった。このパフォーマンスから彼女を“瀬泳ぎ”ふっちゃんゲスト隊員と名付けることにする。う〜ん、しかし遂に“鮫”にも超・強力な女性隊員が現れることになるのだろうか!? それに対してダッシュ隊員は、へなちょこをフネのせいに出来なくなったら今度は 「パドルが重くて...」 などと言い出す始末である。なんて情けないヤツなんだ。 「じっくりと鍛え直してやらねば!」 と熱くココロに誓うオレであった。 そしてやはりトータルでかなりの距離を歩いた我々がなんとかゴールしたのは、日も暮れかかった午後約7時である。水量が少なくないにも関わらずこれでは、員弁川を下るのは、これを最後にしなければならないようだ。慣れ親しんだホームリバーにさよならを告げる時が来たのだ。とても残念だが、最後にこう書いて終わろう。 「ありがとう! 員弁川!」
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