活動記録其の活動記録其の32・気田川編part2
文:隊長
2002年3月24日
極楽☆お花見ツーリングin気田川!! 
〜チーム“鮫” VS 20艇のポリ艇軍団! ...って、相手にされてなかった!?〜 
2002年3月24日(日)、オレ(隊長)はボートの大会が行われているのを横目に、良く晴れた天竜川沿いを北上していた。昨年6月以来、約9カ月ぶりの気田川まではあとわずかである。しかし正直言って、今日は先週からひいている風邪が治りきっていないため、あまり冷たい川には浸かりたくない気分だ。川は良くても、オレのコンディションがイマイチであった。

 しかし開幕3戦目にして、3月から気田川である。前回は鮎釣り解禁後、平日を狙って来たのだが、今回は正々堂々日曜日なのだ(←って、エラいのか?)。今日のメンバーは風邪ひきで喉が痛いオレと、チーム“鮫”の“アンブレイカブル”シミズ隊員、そして新たに“ミスター・沈”などという怪しい中国人の様な称号を得た、見た感じスペイン系の男・アビルマン隊員の3名だ。

 気田川は相変わらず素敵な透明度で我々の到着を待っていた。前回と同じ気田川橋下のアウトポイントに全員が集合したのは、予定集合時間より早い午前約10時20分だ。最近なんだか妙に集まりのいいチーム“鮫”である。さっそくアビルマン隊員の車をそこに置き、残り2台で上流のエントリーポイント・秋葉神社へ向かう。
 ロケーション・水質・難易度と、まさに我が“鮫”に最適の川・気田川は天竜川の支流である。今日は前回が大雨直後の増水で少々濁っていたのに対し、水量は少ないながらも透明度はアップしているようだ。これが本当の気田川なのだろう。
 秋葉神社に着くと、当たり前だが、今日は日曜である。前日・土曜から来ていると思われるキャンピングカーが所狭しと並んでいた。まるでアメリカのようだ(←イメージが貧困)。これが週末の気田川の風景なのだろう。川原の上にズラリとテントが並んでいないだけまだ、気田川としては完全なオン・シーズンにはなっていないようだ。おそらくゴールデンウィークくらいになれば、よく
“難民キャンプ”と形容されるように今年もギッシリとテントが並ぶに違いない。
 前回が月曜で貸し切り状態だったのに比べると少々残念だ。今日はイキナリ川原の前の瀬でどこかのショップの主催と思われるポリ艇軍団の講習だか、ツアーだかが行われている。20艇ほどの色とりどりのフネがゾロゾロと水の上に並んでいる様はなかなか壮観で、気田川が全国的にも有名なカヌイストの巡礼地であるというのも、今回初めて実感できる。
「ううむ、しかしあの軍団の中を通過していくのは、ちょっと勇気いるなぁ」
とオレが言うと、“不沈艦・飛騨之守2”スターンズ・レイカーソロを駆る、普段ワリと控え目なシミズ隊員が、今日は意外にも
「ど真ん中を突っ切って行きましょう!」
などと恐ろしいコトを言っている。元々はファルトボートに乗っていたシミズ隊員だが、どうやら今はもう完全に「ダッキー野郎」に成りきったようだ。何やらポリ艇軍団を目の当たりにして俄然、闘志に火が着いているらしい。
 それに対し、アビルマン隊員は
「にょほほ〜、今日もオレ最強!」
などと、まったくワケのわからない反応をしている。しかし
(彼らの見ている前での疎沈だけは避けなければ!)
と、固くココロに誓っているであろうコトは想像に難くない。デビュー以来、毎回の疎沈&撃沈にもまったく懲りるコトなく、すでにチーム“鮫”が誇る素敵なダッキー野郎“ミスター・沈”として
不動の地位に就いたこともすでに自覚したようだった。
 ちなみに今日から彼の愛艇、GUMOTEX・サファリは3戦目にして早くも「激烈号」改め
「激烈最強号」などと、さらに懲りない名前に改名されている。わざわざNGワードを盛り込んだ名前にしている辺り、すでに“撃沈王”イチロー隊員と同様、マゾヒストの領域に入りつつあるのかも知れない。“疎沈王・Mr.6”ことダッシュ隊員に対しては、同じサファリを駆るものとして相当のライバル心を燃やし、既にメールで宣戦布告したとのことだ。現在の所“Mr.6”は秘密特訓でもしているのか、まだ今シーズンの参加からは逃げている。しかしサファリ×サファリ、“ミスター・沈”VS“Mr.6”の(脂肪が)アツいバトルの火蓋は、すでに一方的に切って落とされているのだ。決戦の地はやはりこの、気田川の本流・“暴れ天竜”こそがふさわしいのではないだろうか。

 ポリ艇の皆様の動向を横目に、ボチボチとセッティングを開始した我々が準備を終えた頃には、すでに20艇のカラフル軍団はダウンリバーを開始して去っていた。
 誰も居なくなった川原にフネを降ろす我々。今回も前回と同じ「気田川・下流コース」全行程約13kmである。
 今日の気田川は以前、初めて行った時の宮川に迫る水質だ。シミズ隊員がいきなり見とれて漕ぐのを止めてしまっている。さらに瑠璃色の羽根をしたカワセミが川べりを飛んでいるのを見つけ、みんなではしゃいでしまう。やはりチーム“鮫”である。瀬の難易度がどうとかテクニック的にどうとかは、それこそほとんどどーでもよく、やはり“癒し系”の水質と自然たっぷりのロケーション、この二つさえあればあとはどーでもいーのだった。
 そして何が最高って今日は両側の山肌にある桜がすでに7分咲きとなり、ポカポカ陽気と相まって、いかにも
「春のお花見☆リバーツーリング」といった趣である。日本の正しい春を感じ、八の字眉になって素朴に感動していたオレはその時すでに、風邪をひいてて喉が痛かったことや、さっきまで頭痛がしていたことすらカンペキに忘れ去ってしまっていた。寒がってウェダーを履いてきたことさえ、もう後悔し始めてしまう。
 青い空に白い雲という晴天下、春の気田川に咲き誇る桜は、しつこい風邪すら癒してしまうナチュラル・パワーを持っていたのだ。ああ、もう帰りたくない...。

 スタート後しばらく行くと、例の“直角の瀬”がある。アビルマン隊員は、来る前に前回の気田川のレポートを読み、“直角の瀬”をかなり警戒しているらしい。今日は来ていないが、うー隊員から「インコースを攻めれば大丈夫」と、メールでアドバイスまで貰っている。しかし前回こそ降雨後の増水で少々強力になっていたものの、今日は
「ありゃりゃ?」
って感じで、まったくヒヤリともしないままカンタンに通過してしまう。アビルマン隊員も拍子抜けのようだ。ちなみに今日のオレは前回のオレ的“フル装備”シャーク3号・スターンズ・リバーランナーとは異なり、よりによってセルフベイラーすら付いていないシャーク4号・GUMOTEX・ヘリオスである。しかし余裕過ぎて、少々の瀬があっても前回の時、同じくヘリオスに乗っていた土居隊員のような水船にすらならない。フネがデカいせいか、なんだかほんとうに超・余裕である。
 無沈伝説更新中のシミズ隊員も当たり前のようにクリア。今日は先日購入したビルジポンプも装備しており、いくら水を被っても上陸しての水抜きする必要がないため、いつもにも増して余裕の表情であった。ってゆーか、このシチュエーションにトロけて、前回の時の伊藤隊員のように顔が弛みきっていただけだろうか...。

 それにしても気田川はやはり“癒し系”である。それもかなり上のほうにランクされる川である。
適当に蛇行するコース、適当に山が迫り、これまた適当に開けたロケーション、その中にゆったりとフネを進めて行ける。そんな“まったり系”リバーツーリングの楽しさを満喫させてくれる川なのだ。前回大きな音をたてて動いていた川岸の重機も、今日は日曜なので動いていない。気田川は静まり返り、聞こえるのは我々のパドルの音と川沿いの道をタマに通る遠い車の音、そして上空を飛ぶトンビが時折放つ鳴き声くらいである。我々はすでにほとんど漕がず、またしてもまった〜りと流されてしまっていた。


 しばらく行くと前方にポリ艇が見える。追いついてしまったようだ。やはり20艇もの集団で下るというのは全体に動きが遅くなってしまうのだろう。近づいていくと、最後尾のヤツがこれ見よがしにワザワザ
こっちを向いてロールをして見せてくれた。どうやら我々とは趣旨が違うらしい。
 しかも彼らは右岸に上陸し始めているようだった。その川原には車が何台か止まっている。もうここで終わりなのだろうか。時計を見るとまだ12時20分である。しかし何かここは見覚えが...と、よく見てみるとそこは前回、我々が上陸してランチポイントにした所だ。やはりコースが同じだと、ランチポイントも同じような所になってしまうのだろう。
 我々はポリ艇軍団を横目にニコやかに通過し、もう少し先で食べることにする。と、そのポイントのすぐ目の前に左岸から竹が何本か倒れ、水面にしだれ掛かっている所が! 先頭を行くシミズ隊員が
「わぁぁぁ!」
とビビりながら下を抜けていく。オレもパドルで竹の枝をなぎ払いながら進む。が、竹が低くて避けられない...!?
 間一髪、必殺(←意味不明)のリンボーダンス・スタイルに切り替えて枝の少ない所をすり抜け、ギリギリクリア。しかし帽子だけは引っかかって後に落ちてしまった。その後は緩い右カーブと少々の瀬があり、下はトロ場になっている。そこで振り返ると、後をついて来ていたハズのアビルマン隊員が来ない。見ると、オレンジジュースのペットボトルが流れてきていた。まさか...?
 しばらく待っていると赤いフネがやってきた。サファリである。
「遅いなー」
と言うとアビルマン隊員は
竹沈してましたー」
という。どうやら先ほどの倒木ならぬ「倒竹」に引っかかって、ポリ艇の皆さんが見ている前で疎沈したようである。さすが“ミスター・沈”である。今日もやっぱり、やらかしてくれている。なんて期待を裏切らない男なんだ。

 その後しばらく行ってから、我々も上陸してランチにすることにした。今日のお昼は、先日オレが読んでいた野田知佑師の本の中に出てきたランチメニューを再現してみたものだ。蕗(ふき)の味噌汁とパンにハム、というシンプルなものである。しかし、蕗だけでは少々寂しいので、ネギとしめじ、そしてサバ缶も2個ブチ込むことにする。ちなみにどうやらアビルマン隊員は蕗が嫌いらしく
「大人の味のものは食べられないッスー」
などとブツクサ言っている。が、無視して彼のコッフェルにはタップリと蕗を入れてあげる親切なオレなのだった。
 シミズ隊員とアビルマン隊員が熾したたき火でフランスパンを軽くあぶり、ナイフで切りながらハムを乗せて食べる。
「ウマい! ウマすぎる!」
こんなにもシンプルなものなのに、なぜこんなにもウマいのだろう。蕗の味噌汁も意外とイケる。サバの風味も活きている。だが、今日は3人なのだ。みんなが
「うう、もう食えねぇ」
と言い出すのに大した時間は掛からなかった。やっぱ一人フランスパン1本ずつは多すぎたか...。ってゆーか、オレは風邪ひいてるからってビールを持ってこなかったことをとても後悔していた。そして味噌汁も具を全部食べきるのが精一杯だった。
 するともうメシが終わったのか、先ほどのポリ艇軍団が下ってきた。
「うっ! し、しまった」
オレは呻いた。これでは下るスピードが早い我々が後からエントリーすればすぐ追いついてしまい、一触即発(意味不明)となってしまう。

 その心配は微妙な形でクリアされることになった。
 結局彼らの通過後10分近く経ってから再エントリーした我々は予想通りすぐ追いついてしまった。しかし20艇の隊列は数百メートルに渡って伸びきっており、我々はしらじらしくもメンバーのように混じり込み、平和的かつ自然に20艇をゴボウ抜きにして行ったのだった。
 ポリ艇ばかりの、しかも全員ウェアからヘルメットまでバッチリ決めてる集団の中を、荷物を積んだり縛り付けたりした
ゴムボート状のカヌーに乗り、バラバラのコスチュームに身を包んでいる怪しげな3人組がヘラヘラと漕ぎ抜けて行く...。
 その超・異質な侵入者である我々に、ニコやかに声を掛けてくるのはなぜだか、女のコの参加者ばかりであった。ベテランぽい人(インストラクターと思われるオジサン)たちは我々が近くを通っても、目すら合わそうとしない。
(いーかげんなフネに乗りやがって)
と思っているのか(←だってラクだし)、それとも
(釣り用のPFDなんか着やがって)
と思っているのか(←だってポケット多いし)、または
(こっちの女のコに声かけやがって)
と思っているのか(←スイマセン)、とにかく何やら険しい雰囲気だ(←妄想?)。
「いい天気ですねぇ」
ぐらいの挨拶はしようかと思っていたが、やはり趣旨が違うようなので、止めておくコトにする。その時、気田川には妙な緊張感が漂っていた。
 しかし後を振り返るとカラフルなポリ艇の間を、パドルを持っていなければ、ただのライフジャケット着た釣りオヤジにしか見えないアビルマン隊員が、
フレンドリーなラテン系の笑顔を振りまきながらニコやかに漕いでいる。なんだか、素敵な光景だ。竹沈したクセに、相変わらず
「今日は気持ちいい〜! やっぱ、オレ最強〜!」
などとまたNGワードをほざいている。するとやはり後で、ちょっとした浅瀬の岩に乗り上げ、疎沈。呪文の効果はてきめんなのだった。

 ゴールが近づき、前回増水で、どれがそれだかわからなかった“オーラスの瀬”が、今回はハッキリと見えてきた。大岩の間を右に落ちてスグ左! という2級ぐらいの結構クセのある瀬だが、爽快にクリアする。アビルマン隊員もドキドキしながらもちゃんとクリア。さすがに4回目である。もうかなりサファリにも慣れ、ウデをあげてきている。しかしサイ・ストラップを付けるのはまだ怖いらしく、結局トロ場の所でヒザに引っかけて左右に揺すってみているだけであった。それでも見たところ、庄内川の時のダッシュ隊員ぐらいには上達しているようだ。
 アビルマン隊員自身も今日は何やら手応えを感じたらしく、上陸した後も上機嫌だ。調子に乗って回りに他に人が居ないのをいいことに、お尻丸出しで着替えたりしている。
 しかし、そんなこんなでもとりあえず、極楽のうちに終了した春の気田川・お花見ツアーであった。


今回の教訓: 竹沈に注意! そしてポリ艇の皆さんに混じっても恥ずかしくないよう、もうちょっとファッションにも気を遣ってみる?