活動記録其の55・気田川編Part−3
文:隊長
2002年8月31日
復活の土居隊員、気田川で邪悪な釣り師を一喝!
〜でも気田川はフレンドリーな釣り師さんがいっぱいで、ワリと好印象!?〜
  8月31日といえば、言わずと知れた夏休み最後の日である。しかし今年の8月31日はひと味違った。なぜならばそれは夏休みをもう一日延長できる土曜日であり、また毎年9月1日に鮎のエサ釣りが解禁になる気田川においては夏に下れる最後の日でもあった。
 そこで名古屋カヌーチーム“鮫”は去りゆく夏を惜しむため(?)清流・気田川へと向かった。
 朝約7時、“死の商人”ことアビルマン隊員にそそのかされ、GUMOTEX・ジュニアを購入して晴れて正隊員となった“金魚”ことマリちゃん隊員を拾って、オレは東名高速道路をひた走っていた。天気は微妙な晴天。しかし情報によると気田川には未だに釣り師多数とのことである。しかも明日9月1日からは鮎のエサ釣りが解禁されるため、9月になると釣り師の姿は激増してしまうらしかった。ってコトは今日はまだ増えていない、いや、友釣りやる人間なんてエサ釣りやる人間に比べたら全然少ないハズ、という気がしていたので駆け込みツアーとなったのが本日なのである。

 現地に着いてみるとすでにアビルマン隊員、うーやん隊員、ためごろう隊員、クリ坊隊員、そして約1年ぶりの参加となる“鋼鉄パドルアタッカー”土居隊員の姿があった。本日のメンバーはこれにオレとマリちゃん隊員を加えた7名だ。
 それにしてもこのアウトポイントに設定した気田川橋の下で、すでに50人近い人がいる。ほとんどは川遊びやバーベキューの家族連れなどだが、釣り師っぽい人もチラホラいる感じだ。
すでにちょっと心配である。

 土居隊員の車を置いてエントリーポイントに向かうが、途中の車道からチラチラ見える川面には釣り師の姿が目立つ。
「ヤバいかも...」
 オマケに途中で、釣り師てんこ盛りのカーブの川原をフネを担いでポーテージしているカヌーイストが見えたりして、さらに陰鬱な気分が漂ってくる。
 しかしここまで来てしまった以上、やめて帰るのもバカげた話である。川はみんなのものなのだ。本当は今日辺り、水量も多くなっていて川幅が拡がっていて、なおかつ釣り師も少ない宮川とかに行くべきだったのではないだろうか(とか川に来た後で他の川のコトを口に出すとロクなことにならないけど)。
 まぁしかし気田川も、この夏でもほぼ毎週カヌースクールのツアーが行われていたり、グループで下っている人も多数居たようなので、我々もその一角に混ぜてもらってなんとか下ることができるのではないだろうかと思った。実際エントリーポイントの秋葉神社前に到着すると釣り師も多いがキャンパーも多く、また目の前の流れの中では子供達向けと思われるカヌースクールのようなものが行われていたりした。ちょっと安心するが、それでも釣り師が居ないワケではないのでなるべく下流の方へ回って、
一人でも前を通過しなければならない釣り師の数を減らすことにする。

 セットアップを開始する。土居隊員は超・久々に愛艇GUMOTEX・ヘリオス340を膨らませている。マリちゃん隊員は“ラブカヌー”GUMOTEX・ジュニアEXをセッティングしているが、アビルマン隊員が心配していたとおり、どうやらオレのシャーク2号(旧型ジュニア)との相違点であるフロアーシートが役に立たないものであることが判明。そこでシャーク2号で使っていたフロアー用のコンテナのフタ&成形したお風呂マットを貸してあげることにする。
アビルマン隊員とうー隊員は今日も仲良くいつもの“激烈”シリーズGUMOTEX・サファリである。オレも“シャーク4号”GUMOTEX・ヘリオス380EXなので、今日は
6人もグモラーが揃ったことになる。そしてためごろう隊員だけが、非GUMOTEXのスターンズ・リバーランナーであった。
 約11時20分、セッティングを終えて釣り師のすぐ下流からスタートする。しかしいきなり前方に釣り師が3名ほどいる。が、ここは川幅がそこそこあったのと、釣り師が場所を変えるため歩いている所を見計らって突入したのとで、何事もなく通過する。
 しばらく行くとすぐ例の「直角カーブ」である。しかし1年ぶりの土居隊員はおろか、マリちゃん隊員までもが普通にクリアした。今日の気田川は過去2回に比べてもさらに水量が少なく、従って流れもヨワヨワなのだった。擦る所が多そうで心配だ。しかしそれでも水質はとてもよく、水はいつものように澄んでいる。
さすが気田川である。
 そしてここで重大な事実がひとつ判明してしまう。オレの持ってきていたデジカメの電池が消耗しきっており、まったく撮影が出来なくなってしまっていた(てなワケで
今回は写真ナシでお送りします)。

 さて、釣り師軍団であるが、どういうワケか車道から見てウヨウヨいたポイントでも、行ってみると意外と少なかったりする。どうやら釣りのセオリーどおり、本気の釣り師は気合いを入れて魚の食いつきのいい早朝から来るらしく、お昼近いこの時間にはそういう人たちは次々と帰り始めているようだった。やはり
真っ昼間はあまり釣れないのだ。しかし早朝に次ぐ、次のポイント・夕方にはまた増えることも予想されるのでうかうかはしていられない。なにしろ今日は土曜日なのだ。今日夕方から来てちょっと釣ってキャンプで一泊、明日早朝から今度はエサ釣り、なんて「釣り」を「カヌー」に置き換えたらどっかのチームのキャンプツーリングのようなスケジュールで来る人も多いのではと予想される。さらにそれを裏付けるものとして、川の中のあちこちに鉄柱が打ち込んであったり、アルミの脚立が沈めてあったりして、どうやらそれは翌日のエサ釣り解禁に向けた場所取りであるらしいものが多数あったのだ。
(こりゃあ明日とかに来てたらシャレにならなかったかも)
と思うが今日も釣り師の数は、減ったとはいえまだ相当多いと言えた。
 だが、近づくと竿を上げてくれたりする釣り師も結構多い。上げてくれなくても川の中に立ちこんでいる釣り師は、声を掛けると長い竿の下を通るように指示してくれる人もいて、
ワリとフレンドリーだ。確かに竿の先の、糸が水面に向かっているところを通られるより、手前を通過させたほうが安全で迷惑にはならないのだろうが、竿の真下、釣り師と1mくらいしか離れてない所を通るのは我々にはちょっと違和感がある。
 天竜川ほどではないが、全体に気田川の釣り師も比較的フレンドリーで好印象な感じがした。前週の武儀川ツアーで怒鳴られて、それがトラウマになっているらしいアビルマン隊員は今日はとても静かに下っている。来る前には行こうかどうしようか
かなり迷ったらしい。アビルマン隊員は日頃は言いたいコトを言っているワリに、こういったプレッシャーや摩擦のあることになると急にチビッて大人しくなってしまうのだ。
 この時先頭を行き、愛想よく笑顔を振りまきながら道を作っていたのはうー隊員であった。やはりこういう時、
女はたくましいのだ。ってゆーか、“危険なチャレンジャー”うー隊員だからこそ、特にそうだったのかもしれないが。
 釣り師としても女のコが先頭でニコやかにくると、いきなり怒ったりはできないものらしい。野田知佑師の本にも書いてあった方法だが、これは本当に
使える作戦のようだ。

 50人近い釣り師を見ながら前半戦を終えた我々はランチのため上陸した。今日の給食当番は、初のためごろう隊員である。メニューは肉うどんだ。しかしなんとためごろう隊員は肝心の
「つゆ」を忘れてきていた。一瞬みんな黙るが、オレのランチ用コンテナにはいつかの(ホントにいつのだろう?)残りのポン酢が入っており、またこんなこともあろうかと、いつも入れっぱなしになっているトリガラスープの素があったので、事なきを得た。

 昼食を作っていると10名ほどのグループが下ってきた。一人を除いて全員同じヘルメットを被っているので、どうやらカヌースクールのようだ。ちょっとあいさつをする。中にはスリルシーカー(高級ダッキー)やAIRのフォース(コレも高級ダッキー)など、我々が初めて実物を見るものも混じっていて、ついジッと凝視してしまった。
 そのグループが行った後、例によって清流での定番行事となったボディラフティングをして遊んでいると、今度はポリ艇に乗った3人組が下ってくるのが見えた。還暦は行ってないかと思われるが、けっこう年輩のご夫婦とその友人、って感じの人たちであった。
(このぐらいの歳になっても、カヌー乗って川下りできるといいなぁ)
とちょっとうらやましく思った。

 その後ランチセットを撤収した我々は、鹿のフンがそこかしこに散らかる川原を後にした。するとすぐ下流で先ほどのポリ艇の熟年3人グループの人たちが上陸していた。我々のフネに興味を持ったらしく話かけてきたので、ちょっとカヌーに乗ったままお話をする。どうやらダッキーを知らなかったようで興味津々の様子だ。
「値段はいくらくらいするの?」
とか、
「破れないの?」
とか、
「どこで買えるの?」
とか、
「重いの?」
とかいろいろ聞かれる。そして最後に
「どこから来たの?」
と聞かれたので正々堂々と
「名古屋です!」
と張り切って答え、彼らと別れた。

 それからしばらく行くとちょっとした瀬がある所に3人ほど釣り師が立っている所があった。どうやら竿を上げてくれる気は
ないらしい。仕方なくフネを右岸に上げ、担いで川原を歩いていく。ガラガラと川原を歩く音が気になったのか、一人が不愉快そうな顔でこっちを見てくる。
(瀬の音のがうるさいのに神経質なヤツだなぁ)
と思うが、とりあえず無視してちょっと下流でフネを下ろそうとすると、
「おい! もっとあっち行け!」
と怒っている。ムカっときたがとりあえずさらに2mほど下流でフネを下ろすことにする。しかしそこはとても流れが速く、下ろしたはいいが乗り込むのが難しくて、すぐ後には結構波が立っている岩がらみの瀬がある所だった。しかしオレはサッとフネにまたがるように乗り込み、下の瀬も無事クリア。みんな続いて岩場をポーテージしてきてはその釣り師の横から次々とフネを下ろし、全員無事にクリアしてきた。
 しかしその釣り師は仕掛けを見た所、友釣りではなく、すでにエサ釣りをしているようだった。違反をしている後ろめたさがイライラを生んで、我々に当たってきたのだろうか。どっちにしろ文句を言ってくる釣り師は
たいてい釣れていないものである。エサ釣りをするなら瀬の前より瀬の下のが釣れるのに、と余計なコトを教えてあげたくなってしまうお節介なオレであった。

 さらに下っていくうちに、後から先ほどのポリ艇熟年チームが追いついてきて混じり合ってきてしまった。しかしバラバラで下るよりこっちも心強いし、釣り師からしても一団いったあとにまたしばらく経って別のグループ、ってよりはまとめて行ってくれたほうが有り難いであろう。
 とか思っていたら、今度はもっと前のスクールの人たちにも追いついてしまう。一気に20人のグループとなってしまった。
 しかしスクールの人たちは本当の初心者が多いらしく、フネのコントロールが満足に出来ていない人が多いため、進行が遅いようだ(自分の乗っているフネの名前を知らない人もいたし)。あっという間に後方に離れていってしまった。その中から一人だけ抜け出たカヌーがこっちへ近づいてきたな、と思ったら、遅れていたマリちゃん隊員だった。
 そういえばマリちゃん隊員は今日がマイカヌーのデビューであり、進水式なのだ。ちょっと目を離すと遅れてしまうものの、それにしてはしっかりと漕いでいる。途中のワリと激しい瀬でも普通にまっすぐ越えてきていた。上達は早いようだ。

 コースもゴールが近づき、流れが二股に分かれている所に出た。左が本流だが、釣り師が何人か見える。そしてその後にはこのコースの終わりを告げる「オーラスの瀬」が見えていた。うー隊員とアビルマン隊員は釣り師を避けて右へ。オレとクリ坊隊員、マリちゃん隊員も続く。熟年ポリ艇軍団とためごろう隊員、土居隊員は果敢に「オーラスの瀬」を攻めるべく左へ行き、釣り師の前はポーテージしていた。
 途中からオレたちの進んだ右の流れが左の流れに一部合流している所があったので、オレはフネを担いで浅い所を20mほど歩き、左の本流に合流する。しかしその流れの合流ポイントは「オーラスの瀬」よりも若干下流で、水量が落ちたとはいえ、そこそこ楽しそうな瀬を通ることはできなかった。
 と、その瀬の先の浅くなっている所で、フネを降りてライニングダウンしていた土居隊員が
「今なんて言ったんだ! もういっぺん言って見ろ!!」
と怒声を張り上げていた。どうやら左岸に3m間隔で並んでいた2〜3人の釣り師(これも間隔からして友釣りではなく、解禁破りのエサ釣りの模様)が
「あっち行け」
とか、
「邪魔だ」
とか、ボソッと言ったらしい。しかし竿が届くような距離でもないのに(約30m)文句を言われた土居隊員の耳に、それは瀬の音にもかき消されずシッカリと聞こえていたらしい。怒りまくる土居隊員。釣り師は一度怒鳴られると急に目線をそらして黙ってしまっていた。銀色のヘルメットに夕陽を反射させながら土居隊員は川の中に仁王立ちとなり、右手にはパドル、左手にはカヌーのとも綱を握りしめ、キッと釣り師を睨み付けている。これで
腹が出ていなかったらかなりカッコいい情景なのだが...。が、それでもすでに相手は戦意を無くしており、勝負は着いていた。
「川はみんなのもんだ!」
と、まだ怒っている土居隊員をなだめながらラスト200mを漕いだオレは川から上がった。後から右コースを進んできた隊員たちがゴール手前の流れ込みで合流してくるのが見えた。

 気田川はやっぱりきれいな川だ。釣り師もたいていは良い人で、スッと竿を上げてくれたり声を掛けてくれたりする人もいる。しかしごく一部に感じの悪い人間がいるのも事実である。やはり釣り師が多くても気持ちよく下れるのは、一部の川だけなのだろうか。そんなことを思ってしまった晩夏の気田川ツアーであった。




今回の教訓: 「あたりまえだけど、釣り師にもいい人と悪い人がいる。
 悪い人には会いたくないから釣り師の多い川は避けるべし。」