活動記録其の68・木曽川編part5
文:隊長
2002年11月4日
冬の青空にカモメが群舞! 
〜もう真冬!? チーム“鮫”12月中旬の気候にもかかわらず木曽川ツアー決行!〜
   西高東低の気圧配置となり、一応の晴天が数日続いていた11月4日(月・祝)、オレはホームリバー・木曽川の“鮫”的基本コースへと向かっていた。
 本日のツアーの参加者はオレ(隊長)、うーやん隊員、アビルマン隊員という冬でいくら寒くても漕ぐのを止められない“カヌー・ジャンキー”3人衆である。
 ってゆーかよーするに
もうカヌーバカである。だいたいこのクソ寒い、急に12月中旬の気候になってしまった時に、わざわざ吹きっさらしの川の上まで出かけていって水を被ろうなんてヤツはそうそう居まい。ヘタしたらこの東海地区全域の中でこの3人くらい(いや、他にも何人かいそうだが、いづれもウチのメンバーであるよーな...)であろう。
 しかしそうは言っても微妙な根性無しの我々である。非体育会系のため、今回のツアーも当初から
「沈するような瀬がある川は避けよう、だって水に落ちたら寒いし」
という
暗黙の了解があったため、行き先は気田川か木曽川・中流のどちらかとされていた。

 で、結局木曽川中流という、10回以上来ているのに未だかつてこのコースで沈したのは後にも先にもアビルマンただ一人という、超・基本的まったりコースである。

 いつものように名鉄・東笠松の駅に集合したのは前述のカヌーバカ3人衆だけでは無かった。黒太隊員までも集合していたのである。しかし黒太隊員は1日前にsakuzo隊員と二人で櫛田川を漕いできており、しかも体調を崩していた。今日は前に貸した
秘密のビデオ(←AVぢゃないよ)を返しに来ただけのようだ。
 そこでその黒太隊員からひとつ、提案が出る。
「今日はかなり寒そうですし、ちょっと距離を縮めたらどうですか?」
 反対する者など一人も居なかったのは言うまでもない。結局黒太隊員の先導で、黒太隊員がよく使うというアウトポイントへ移動する。
 行ってみると、そこは川の一部をせき止めて、釣り堀化してある所で、やたらてんこ盛りの釣り師のみなさんが、同じくこのクソ寒いのに釣りにいそしんでいた。まったくこんな寒さでコイツらは何考えているんだか、と思うが、
言うなればそれ以上に何考えているんだかわからないのが、誰あろう我々だった。
 何しろ川べりに居るだけならまだしも、わざわざ水の上に出ようとしているのである。そこに車を置き、自分はやらないのでエントリーポイントまで送ってくれるという親切な黒太隊員の車に乗り込んだ我々は一路、木津を目指して出発した。
 
 いつものエントリーポイントに着くと、そこはこれまたいつものように、テニスをする人、野球をする人、散歩する人などで賑わっていた。余談だが、ここからエントリーするコースは我々しか使っていないと思っていたのだが、黒太隊員も“鮫”入隊前からこのコースを使っていたらしく、よく知っていた。
 普通にスポーツを楽しむ人々の間をデカい荷物(カヌー)を背負ってパドルやらPFDやらクーラーボックスやらを担いだ我々が通るのはちょっと異様な光景だ。しかも服装はアビルマン隊員とうー隊員はウェットスーツ、オレはウェットスーツに昨日釣具屋で買ったばっかりのPVC製防寒ズボンまで履いていて、見た目はほとんど
魚河岸のオジサン状態である。しかしみんな表情だけはニコやかなのがかえって怪しい。
 
 セッティングを開始して約10分後、我々はすでに水の上に居た。今日は3人と人数が少ないことと、全員GUMOTEXということもあって準備が早い。
 今日はやらずにこのまま帰る黒太隊員が見送る中、我々は離岸した。

 オレは“シャーク4号”GUMOTEX・ヘリオス、アビルマン隊員&うー隊員はもうこれしかない、いつもの“激烈最強号”&“激烈うーやん号”の“激烈”(←しつこい)GUMOTEX・サファリ軍団、
豊田の赤い2連星である。
 木曽川のこのコースは春先に来て以来、今年はまだ2度目だ。あの時は雪解け水の影響か、やたら水量が多かったが、今日はオレのよく知っている水量のいつもの木曽川だ。スタート後しばらくはゆったりとした流れで、ちょっと行くともう浅い所がそこかしこにある。慎重にコースを選んでいく。
 風が冷たく吹いているが、天気は雲がよく流れていくものの晴天。結構いい感じだ。ズボンと同じく昨日釣り具屋で買ったネオプレンのグローブが大成功で、手がぜんぜん冷たくない。うー隊員などはこの気候で手袋なしである。強いと言えばそれまでだが、なんだかんだで冷たいらしく次回は自分もグローブを買ってくるようなコトを言いだしていた。

 一つめの橋が近づいてくる。この橋を越えた所にちょっとした瀬があるのだが、このメンバーにとってはもう瀬とも呼べないくらいのクラスである。しかし静水みたいな所に比べるとやっぱり楽しいらしく、歓声を上げている。
 オレは先頭を行き、越えてから振り返るとアビルマン隊員がまたしても一番大きいウェーブのセンターをハズして抜けてきている所だった。
「ど真ん中でしたよー」
というアビルマン隊員だったが、微妙に左に外れていた。いや、ひょっとしていつもセンターに突っ込んでいるつもりで、ジツは毎度毎度無意識に横を通っているのかもしれない。
 
 以前ならここで左岸の中州に上陸して、いきなりランチとなる所だが、それはムカシの話である。最近の“鮫”は午前10時に金山集合とかではなく、ちゃんと10時くらいには現地に集合しているので、以前に比べると断然スタート時間が早いのだ(ムカシはそれこそ13時くらいにエントリーすることがザラだった)。
 しばらく何もしないで流される我々。天気はのどかで、岸には今の所まったくと言って良いほど人の姿を見かけない(当たり前だ)。左岸の中州の向こう側に再び川が見えてくる。合流ポイントが近い。
 いつもならこの合流ポイント辺りで逆風となり苦しめられる所だが、今日はなんてコトもなく通過できた。次のイベントポイントは旧「カーウォッシュの瀬」である。しかしここも2年前の東海豪雨でツブれてしまい、今はどうってコトもないただのウェーブになっている。
 それにしてもこの辺りの木曽川は全体に浅く、流れが広い川原を縦横に走っている。二股に分かれるような所がいくつかあったかと思うと、すぐそれらが合流していたりで、三角の波みたいなのが、あちこちに立っている。
 こういう合流系の流れの有る所に弱いのがサファリである。アビルマン隊員がビビりつつも今度は一番波の高い所を狙って通っていく。しかしこんな冬でも波の上をバウンドするのは楽しいものだ。うー隊員もアビルマン隊員も表情が輝いている。なんて現金なヤツらなのだろう。
 その合流ウェーブを抜けた所で左岸に上陸してランチを摂ることにした。
 
 今日のランチはオレのかねてからの計画通り「カレーうどん」である。しかも使うルゥはシブく
「オリエンタル」のカレールゥなのだ。もちろんカレーうどんらしく、具は豚肉とネギのみだ。なんと言っても、こういうモノはシンプルが一番なのである。
 お湯を沸かすのに少々時間が掛かるので、その間に川原を歩き回って流木を拾い、暖をとるためにたき火をする。ちょっと湿った木ばかりだったが、アビルマン隊員が焚きつけ用にちゃんと新聞紙を持ってきていたため、カンタンに着火し、すぐに暖まることができた。
 たき火にあたっていると、どこからか野犬の吠え声が聞こえてきた。カレーうどんはまだ完成していない。一瞬の緊張が走る。例によってカヌーでなければそうカンタンには来られない川原のハズだ。とりあえずパドルを横に置いて、声のする方角に向けて座り直す。何が何でも
カレーうどんは死守せねば...。

 しばらくして前方の草むらを数匹が移動していく気配があったが、どうやらそのまま行ってしまったようで事なきを得た。犬はそんなにカレーの匂いが好きではないのだろーか。
 そしてカレーうどんだが、これがまた、いー感じに出来たのであった。あまりに堪能していたため、またしても写真を撮るのを忘れてしまった。
 
 再び河に漕ぎ出した我々を待っていたのは、左岸にテトラの並ぶウェーブの多い流れだった。それを抜けると今度はあの、春先のツアーでアビルマン隊員が“鮫”史上初の木曽川中流コースでの撃沈を記録した「アビルマンの瀬」の音が聞こえてきた。
 前回のツアー時はかつてない増水で大きな飛沫を上げていたこの瀬だが、今日はそうでも無い感じだ。しかしアビルマン隊員は緊張しているらしい。
 だが、あれからの半年でメキメキと腕を上げているアビルマン隊員である。その成果を見せる絶好のチャンスを与えるということで、先頭を行くように言ってみると意外という予想通りというか、
「いいですよ(スペイン系・笑顔)」
という返事が返ってきた。
 リベンジの瀬に突入するアビルマン隊員。そして、もはや当たり前のようにすんなりと抜けていったのだった。
 
 その後は青空をバックに雲が流れていくステキなロケーションの下、我々はゆるゆると下っていった。時々逆風の風が吹くが、なんとか耐えて進んでいく。やはり午後になると海風が風下から吹いてくるのだろうか?(って、まだ河口まで30km以上あるはずだし関係ない!?)

 そしてもう少ししてゴール地点を探し始めた我々の上をカモメが飛び始めた。それを見上げているとなんだか、河口が近いような錯覚がしてくる。
 そしてそこは突然発見された。左岸の一部が狭い水路のようになっている所があり、どうやらそこがアウトポイントなのだった。このコースは過去20回近く下っているのでよく知っているハズなのだが、このアウトポイントはまったく初めてのため確信が持てなかったオレは、うー隊員とアビルマン隊員が左岸寄りに注意深く進んでいるのをぼんやりと見ながら川の真ん中付近を流されていた。
 二人がその水路に入っていく様子を見て、初めて
「え? そこ?」
と思ったオレは漕ぎ寄ろうとするが、時既に遅く、そのまま後ろ向きに右岸の方に向けて流されていってしまう。逆らって頑張って漕いだのだが、意外にもそこは流れが結構あってとても漕ぎ戻ることは不可能だった。
「まっ、いっか」
とオレはつぶやき、漕ぐのを諦めてそのまま流されていくことにした。確かアウトポイントの下流は静水になっていて、川船がつないであったのを思い出したのだ。多分この先で左岸寄りの側流にあの静水につながる水路があって、そこから戻れることだろう。

 しばらく流され、流れが右岸寄りから大きく左カーブを描いて再び左岸に向かった所で、やはり静水の部分が見えてきた。ちょっと漕いで本流から外れると、そこからは上流に向けてカンタンに漕ぎ上がることができた。中州の草っ原の向こう側に回り込み、ゆったりと漕いでいく。空にはまた白いカモメが飛んでいる。
 ずんずん進んでいくとカモメの数もだんだん増えてきた。ほとんど群舞と言った感じである。漕ぐのを止めてデジカメを取り出し、空に向けて何枚かシャッターを切った。
 冬の空はとても青く写っていた。




今回の教訓: 「冬のツアーには冬のツアーの良さがある。」