活動記録其の48・北山川〜熊野川編
文:隊長
2002年6月23日
熊野川で月光浴!
〜熊野川キャンプツーリングで、3級の瀬はドコに!?〜
月2回、名古屋から和歌山までカヌーしに行くヤツはそうそう居まい。
 てなコトで6月2回目のキャンプツーリングは北山川〜熊野川という、前回の北山川のアウトポイントからスタート、十津川との合流点を通過して熊野川に入るというコースである。  
 例によって前日、昼前に名古屋を出たオレはとってもいい天気の下、またしても国道23号をひた走っていた。青い空をバックに白い雲のカタマリが流れていくステキなシチュエーションで、ただのドライブとしても十分キモチいい。途中でシミズ隊員、うーやん隊員と合流し、これまたまたしても松阪の「ザ・めしや」で遅い昼食をとった我々は一路和歌山を目指した。この3人が今回の昼入り組で、キャンプサイト決定後、夜にはsakuzo隊員とmiki-fish夫婦隊員がやってくる事になっていた。総参加人数は6名の予定である。

 例によって道の駅「七里御浜」で夜・朝・昼の食糧を仕入れた我々が、現地・熊野川のアウトポイント予定地キャンプサイトに到着したのは午後約6時である。テント設営後、前回の反省に鑑み、早速薪集めを始める。前回キャンプした北山川の川原に比べると、かなり川幅が広く、従って川原も広かった。水のある所までかなり歩かなければならない。川原の広さに比例して流木はとっても豊富だ。しばらくして前回・北山川の倍近い量の薪を収集することに成功したので、今度は夕食の準備に入る。
 今夜はうー隊員の発案によりチゲ鍋である。本日のサービス品として半額で仕入れたサーモン・トラウトの開きをブツ切りにして豆腐と野菜と共に煮込む...ハズが、
トラウトの皮がゴツくてなかなか包丁で切れない。結局ナイフを取り出して三枚におろすようにして皮を剥ぎ、身だけを入れるコトにした。うーむ、鮭は皮がウマいというのに...。
 鍋を煮込んでいるうちにシミズ隊員がたき火に点火し、日が暮れてきたのと相まって俄然キャンプ気分が盛り上がってきた。前回は川原が道路からすぐ降りられる所で民家もすぐ近くにあり、また川幅が狭かったため「近所の川原でバーベキュー」感覚だった。今回は川原まで道から結構距離があり、またその道自体が細くて全然車が通らない所だったのと、川原がだだっ広いのとで、かなり「山の中のキャンプ」気分である。うしろに車じゃなくて馬でもつないであったらウェスタン気分になるところだ。つい、いつもの探検帽を早くから被ってちょっと気分を出してみたくなった(←もう少し酔ってる。酒じゃなくて自分に)

 そしてたき火がいー感じに燃え上がり、鍋がいー感じに出来上がり、ビールで乾杯する頃にはとてもいー感じの素敵な光が我々を包んでいた。
 
月の光である。
 満月ではないのだが、ほぼそれに近い形の月から眩しいくらいの青い光が降り注ぎ、白っぽい石の多い川原を青白く、幻想的に照らし出していた。手を出してみると川原にくっきりと手の影が写る。たき火の周りだけがオレンジ色の炎で照らしだされて、周りはいちめん青白い石の海原である。
 対岸の山の端が、紺色の空をバックに真っ黒なシルエットを見せている。その少し下の道路を、時折通っていく車のヘッドライトが移動していくのが不思議なくらいに見える。そしてずっと下の熊野川の川面には、青い月の光がキラキラと反射して光っていた。黒い中州をはさんで、二すじの流れが青白く輝いている様は何か現実とは違った世界に来てしまったような錯覚を覚えさせる。振り返ると車のナンバープレートまで、月の光でハッキリと読めた。まるで月光浴だった。空には月のほかにほとんど星は見えなかった。

 チゲ鍋を食べ尽くし、たき火にあたりながら青い月を見上げ、ワールドカップ対日本戦勝利に湧く国から帰ってきたばかりのうー隊員のトルコ土産のピスタチオを食べていると、sakuzo隊員から電話が掛かってきた。どーやら近くの道の駅「熊野川」まで到達したようである。シミズ隊員が山道を迎えに行く。
 30分ほどしてsakuzo隊員を連れて帰ってきたシミズ隊員は妙に興奮していた。聞いてみると途中の細い山道で、やたら毛並みの綺麗な
野生の鹿と出会ったのだという。しかもその鹿は車で間近まで近づいても退いてくれなくて、おかげで通るのに時間がかかったが、とても綺麗な鹿を間近で見られてよかったと感動することしきりのシミズ隊員であった。
 それから30分もしないうちにmiki-fish夫婦隊員も道の駅に到着したらしく電話が掛かってきた。今度はうー隊員が迎えに行く。30分ほどして戻ってくると、うー隊員たちも鹿を目撃したという。このあたりは人の手が少々入っている所でも、夜には動物たちの天国となるのだろう。オレも綺麗な鹿見たかったなと、少々みんなが羨ましかった。
 さて、この時点で深夜約1時30分だが、全員揃ってまたちょっと盛り上がる。ワールドカップの警備からから帰ってきたばかりの“特別機動公務員”いや、ウルトラ“7”ことsakuzo隊員の土産話と土産ビール、土産カップラーメンなどで再び盛り上がった我々がそれぞれテントに潜り込んだのは、それから約1時間後のことだった。
 
 翌朝、やっぱり
ウグイスの声で目が覚めた。先日のこの上流・北山川でキャンプした時もそうだったが、とにかくウグイスの鳴き声がやたらあちこちからとても頻繁に聞こえる。ウグイス天国である。
 朝飯は6人で1kg(今回はワリと普通の量)のパスタだ。ソースはトマトの水煮缶を買ってあるので、それを使ってベーコンとグリンピースだけのシンプルなトマトソースを作る。味付けは少々薄目だったが、朝はこんなもんでよかろうと思う。が、みんな天竜川の残り(しかも昨年の)の粉末バジルソースを振りかけている。ちょっと薄すぎたかなぁ?
 それと、うー隊員のお土産のトルコ・インスタント・スープなのだが、作り方をよく読まずに作り始めたため、最初のは粉末がダマになって失敗してしまった。2回目のチャレンジでなんとか飲めるような形になる。サッカーでは負けても、やはりインスタント・スープは日本製のが性能的に勝っている気がする。
 
 朝食後、約10時にテントなどを撤収し、エントリーポイントに向けて出発した。途中、志古のジェット船船着き場に寄ってトイレ&ビール&ドリンクの買い出しをする。その後前回のアウトポイントでもある北山川の四滝付近の川原に到着、我々はセッティングを開始した。

 午前約11時35分、北山川にエントリーする。今日はここから今朝の熊野川・キャンプサイトの川原まで、約14kmのコースである。スタート時にいきなり2隻のジェット船が通過していく。志古まではジェット船に気をつけねば。
 しばらく行くすぐ、十津川との合流点である。初めてここへ来た時は雨が降り続いた後で、まだ小雨も降っていた。そのため土砂で黄濁した十津川と碧色の北山川がブレンドされていく様が宮井の橋の上からクッキリ見えたのだが、今日は十津川も北山川と同じくらいの水質の水を流している。合流ポイント通過。ここからが正式に熊野川である。水の流れはかなり速い。
 またしばらく行くとあっという間に志古のジェット船船着き場が見えてくる。事前にいくつか見たホームページの記述によると、この後しばらくして2〜3級の「最初の瀬」というのがあるらしかった。しかし以前ここから下を下ったことがあるmiki-fish夫婦隊員によると
「そんな瀬あったかなぁ?」
とのことだ。超・安定している“航空母艦”オリノコを駆る二人である。記憶に残っていない程度の瀬でも他のフネには難易度が高い、という可能性はある。一応瀬が見えたら注意しようと思うが、時折ある瀬はどれもせいぜい1級弱である。ホームページの記述が新しいものでも1年近く前のものなので、状況が変わったのだろうか? 野田知佑師の本にも
「3級の瀬がいくつか」
と出てきていたが、どうやら相当ムカシの話らしい。最近の日付のホームページでも「2級」と書いてあるのと「3級」と書いてあるのとがあり、バラつきがある。それとも今日は極端に水量が少ないのだろうか? それにしても水量が増えたらやばそう、と思われる所すら発見できなかった。
 先週の天竜川・鵞流峡で瀬遊びの楽しさを思い出したシミズ隊員は少々残念そうである。愛艇“飛騨之守弐号”スターンズ・レイカーソロも今日はそれほど水船になるチャンスもない。ウルトラ“7”ことsakuzo隊員は一ヶ月以上前の飛騨川・すりむきの瀬で、岩の上をケツを打ちながら流された時以来まだ
“ケツ痛”が完治しておらず(←骨折?)、今日は“激烈sakuzo号”赤サファリではなくて超・安定リンクスUでお気楽に漕いでいる。もちろん1級もない瀬では眠っていても余裕で通過である。しかしリンクスでも、結局ケツは痛いらしい。
 逆に1級どころか0.5級の瀬でも一切気が抜けない
“激烈うーやん号”同じく赤サファリを購入し、今日もそれで来ているうー隊員はちょっと緊張している。しかし相変わらず購入以来ノー沈なのだ。結構クセのある渦やボイルのあるところでもなんとか凌いでいる。イタリア・トルコ外遊とか言いながら、ジツはどこかで極秘練習でもしてきたんじゃないのだろーか?
 オレはと言えば、一応基本的には緩いとはいえ、初めての川なので“シャーク3号”ことスターンズ・リバーランナーで来ていた。普通のスナオな3級程度ならなんなく越えられるハズだ(←とか言いながら先日の矢作川では2級の瀬で撃沈してるし)。
 しかし瀬がない。そうこうするうちに赤木川の流れ込みを通過。なんだか今日は天気もハッキリしなくて、イマイチ盛り上がらない気がする。ちょっと時間が早いが、流れも速いので、もう左岸の川原に上陸して昼食にすることとする。と、シミズ隊員が
油断して降り沈している。期待通りの瀬がなかったので拍子抜けしたのだろうか。

 前夜がトラウトの鍋→、今朝がトマトソースパスタ→、そしてランチはインスタントラーメン10人前である。なんだか序々にメニューが
貧しくなってきているのは気のせいだろうか? 具もメンマの瓶詰めと缶詰のコーンのみで、ネギすらない。うーん...。
 とりあえず最近川原ではやたらとたき火をしたくなるメンバーである。曇っていて少々肌寒いのもあって、ラーメンを作る間にテキパキと薪を収集して、アッという間に火を付けてしまっていた。なんだか慣れたのか、妙に手際がいい。そしてこの熊野川は川原が広いだけでなく、流木も豊富なので薪には事欠かないのである。
 とかやってたら、遂に雨が降ってきた。昨日はとても天気がよかったのに移動日で残念だったが、今日降られるのはもっと残念だ。しかし幸いポツリポツリという感じで、本降りにはならなかったのでまだマシだったと言うべきだろうか。上流の小森ダムが北山川の筏下りのために放水しているからなのか、ランチの間に水量は増えていて、川原に引っ張り上げてあったフネが流れ出しそうになっていたりいた。
 
 2度に分けて、都合10人前のラーメンを作った我々はキレイさっぱりとすべて平らげ、再び熊野川にエントリーした。後半は川沿いを走る道路が上方に行ってしまい、両岸が切り立っているような所が多くなったりした。ロケーションはとってもいい感じなので、いよいよ天候がすぐれないのが残念に感じる。流速が相変わらず早い中、そこそこ1級を越えそうなくらいの瀬がいくつか現れ、シミズ隊員とうー隊員が先を争ってクリアしていた。
 午後約4時、我々は前夜月明かりに青く輝いていた川原に上陸し、北山川〜熊野川ツアーを終えた。その時には、あんな素敵な月明かりの下でキャンプできたことが夢のように思われるほど、空は鈍く曇り、またポツリポツリと雨が降り出していた。
 しかし車での帰り道、伊勢長島にさしかかる頃には夜空は晴れており、昨夜と同じ少しだけ欠けた月がまばゆいばかりの青白い光を放っているのを見ることができた。この月の下なら、もう一泊したいくらいの気分だった。

今回の教訓: キャンプするなら、月のキレイな夜がいい