活動記録其の45・北山川編part−2
文:隊長
2002年6月9日
初のキャンプツーリング!
〜チーム“鮫”、北山川でウグイスに起こされる〜
北山川といえば急流である。あくまで一般的には、であるが。

 チーム“鮫”初のキャンプツーリングを画策した昨年の北山川(最初は熊野川のつもりで行ったけど、結果的にそーなった)ツアーであったが、結局到着が深夜となったためテント張るどころか道の駅に車を留めて車中泊などという、おおよそ“キャンプ”という概念からは激しくかけ離れた結果となってしまった情けない我々(オレとイシカワ顧問、※活動記録2001北山川編参照)なのだが、今回は
ひと味違った。
 前回の反省に鑑み、前日土曜の夜・名古屋発などという暴挙を改め、昼前に出発。土曜夕方には現地入りし、日のあるうちに早々とテントを設営して快適な居住空間を確保するという、いかにも美しい作戦に出ることとする(←って、それが当たり前だって)。
 が、予定集合場所・道の駅「七里御浜」にオレ&アビルマン隊員が到着したのは集合時間を
約1時間30分ほど過ぎた頃だった。出が遅くなったアビルマン隊員を待ったり、「ザ・めしや」でゆっくりメシ食ったりしてたからだってハナシもあるが、ま、それは言わないでおこう。
 定刻通りに着いていたうーやん隊員は我々が到着するまでの間、一人ぼんやりと
荒れ狂う熊野灘を眺めて過ごしていたらしい(←見ようによってはヤバい風景)。今回の参加メンバーはこの3名に、相変わらず忙しくて午後7時まで仕事した後に名古屋を発ってこちらに向かう予定の“一人深夜特急”イシカワ顧問を加えた4名である。

 道の駅「七里御浜」で夕食の買いだしを終えた我々は一路、新宮市に向けて出発した。この段階ですでに5時近い。結局やっぱりいつものように予定より遅くなってしまう、しょうがない“鮫”なのだった。
 新宮から熊野川沿いを遡り、前回のツアー時にアウトポイントとした四滝付近の川原に到着した我々は、早速テントの設営に入った。説明書を見ながらテントを組み立てるオレ&アビルマン隊員。
 なんとテントの設営をやったことがあるのは紅一点のうー隊員のみで、オレもアビルマン隊員もキャンプ用のテントを組み立てるのは初めてというおそまつな状況である。うーん、さすが日帰りアウトドアマン(意味不明)。イベント用(運動会とかで使うヤツ)のテントなら1.8mくらいのから7.2mぐらいのまで各種、数え切れないほどの設営&撤去をこなしてきた(←フツーはこっちの経験があるほうが稀だが)オレ&アビルマン隊員であるが、ちゃんとしたキャンプ用はホントに全く
今回が初めてなのだった。
 初心者2人を含む3人がそれぞれ3人用テントの設営を終了するのに要した時間は約10分。なんとか寝られる準備が整ったので、まだ明るいのに早速鍋を作り始める。
 今回は鳥・豚・牛の肉を、シメジ・エノキ・シイタケなどのキノコが迎え撃つという
肉VSキノコ鍋である(ワケわからん)。ついでに他の野菜と餃子まで入っているが、結構ウマくできた。そしてビールとチューハイで乾杯をしながら鍋を食べ始めた頃にはとっぷりと日が暮れていた。いつものように
「うう、もう食えねぇ」
って言うまで食べ、その後明るい内に集めた流木を使ってたき火などをし、薪がなくなると川を懐中電灯で照らして寄ってきた川エビをタモ網ですくう、などということをして遊んだ我々は午後11時頃就寝。アビルマン隊員だけはまだ眠くないとか言って、たき火の燃え残りにダブルアクションポンプで空気を送って遊んでいた。
 
 翌朝、オレはウグイスの鳴き声で目を覚ましてしまった。なんでこんなにウグイスが泣いているんだと思うぐらい、あっちこっちから
「ホーホケキョ! ホーホケキョ! ホーホケキョ!
の大合唱である。しかしまだ眠いので精神を集中して寝ることにする。が、しばらくまどろんだかと思うと、今度は早朝の川原を歩き回る足音で完全に目が覚めてしまう。
 近所の早起き老人が早朝の散歩で物珍しそうにテントに寄ってきたのかと思いきや、足音の正体は
“鮫”の“早起き老人”ことアビルマン隊員(でも見た目は中年)であった。うー隊員も同じく足音で起こされたようだ。仕方なくテントから出て、朝食の準備に入る。
 相変わらずウグイスがうるさい。ってゆーか、春先の気田川ツーリングではウグイスの声を聞いて日本の正しい春を感じていたのに、今日は
「うるせーなー」
などと勝手なことを言っている所が“鮫”なのである。睡眠不足はヒトから余裕を奪うものなのだろうか(←単に寝起きが悪いだけ、ってハナシもあるが)。
 しばらくして朝食のパスタが出来上がる頃、イシカワ顧問が到着。どうせもうちょっと時間掛かるだろうから、ゆっくりパスタ食ってりゃ食い終わる頃に着くだろうと思っていたら意外と早かった。相当飛ばしてきたに違いない。勢揃いした4人でポルチーニキノコのソースパスタ(先週に引き続き、うー隊員のイタリア土産)を食べ、テントを撤収してから田戸へ向けて出発した。


 瀞峡は素晴らしかった。前回もいいとは思ったが、今日は前回と違って晴れているのと、雨の直後でもないので水質がとてもクリアだ。かの有名な瀞ホテルの前を川原に向けてカヌーを担いで下りていく。川原にはすでに観光ジェット船が来ていて、観光客がいた。川原でフネをセットアップして、ジェット船の観光客向けの売店で昼食用の名物・目張り寿司とビールを買う。
350mlが400円という強気の値段だが、この天気である。ビールが無ければ後から相当後悔しそうなので購入してしまった。
 そして午前約10時ちょっとすぎ、我々は快晴の北山川・瀞峡へと漕ぎ出した。今日はここから15km前後の予定である。

 今回オレは超・まったりコース用“シャーク4号”GUMOTEXヘリオス、イシカワ顧問は前々回の櫛田川でヘリオスに懲りたのかいつものAIR・カラカルT、アビルマン隊員は懲りない“激烈最強号”GUMOTEXサファリ、そしてなんと今回、
うー隊員までもがGUMOTEX・サファリを購入してきていた。我が“鮫”のホームページを見た人から格安で譲ってもらったようである。しかも色もみんなと同じ赤なのだった。ううむ、これで元々ダッシュ隊員だけだったのが、アビルマン隊員、sakuzo隊員、そして今回のうー隊員までもが赤サファリ乗りになり、チーム“赤い4連星”となってしまったようだ。
 よりによってその安定度の悪さから
“疎沈製造船”と言っても過言ではないサファリが、なんと4艇である。いよいよチーム沈数が増えていく予感がする。ってゆーか、我々はヤバい川には行かない非体育会系・軟弱ツーリングカヌーでしかも安定のいいダッキーなので、沈すること自体まず無いのが普通なのだが...。  
 ひょっとして今日もこの急流・北山川...の超・まったりコースで、ありえないハズの沈を見ることになるのかもしれない。この瀞峡から下のコースには瀬らしい瀬もなく、ジェット船が来たらさっさと回避できるだけの技術(笑)があれば、どんなヘナチョコでも沈することはないだろ、ってぐらいのスーパーまったりコースなのにである。沈があるとしたらそれは“撃沈”ではなく、“疎沈”であることは疑いようもない。
 
 それにしても今日の北山川は最高である。爽快の一言に尽きてしまう。我々が川下りを楽しむ要素は主に3つあるのだが、それは

@いい天気 
Aいい景色 
Bキレイな水


である。今日はそのすべてが目の前にあった。
 前回来たときは小雨の降る曇天で水も濁っていた。あれはあれで風情があって良かったのだが、やっぱり天気も水質もいいに越したことはないのだ。
みんな口々に
「最高ー」
を連発している。確かにその通りだ。カヌー乗ってることの楽しさのほぼすべてが楽しめる今回の北山川ツアーだ。
 沈もなく、事件も起こらず、我々はただまったりと大自然の中を下っていった。大自然過ぎて、トロ場に子鹿の骸が浮いていたりするのだが、これも自然の一部である。不自然なものと言えば時折やってくるジェット船くらいだが、ここのジェット船は川を我が物顔で走っているのではなく、釣船やカヌーと普通に共存している。我々のカヌーを含めて、他のフネを見つけるとちゃんと減速して、引き波が大きくならないように配慮してくれたりもする。とても感じがいい。
 東海地方の人口の多い川には、川を自分のものと勘違いしている川船や釣り人やカヌイストやジェットスキーヤーが結構いるが、ここにはそんな醜いエゴが存在しようがない。やはり大きくキレイな川ではヒトの心も大きくキレイになるのだろうかと、またしても性善説になってしまうオレである(←前々回のツアーでは人が多いと楽しめないとか小さなコト言ってたのにコロッと変わってるヤツ)。

 ウグイスのホーホケキョをこんなに聞いた日は、生まれてこのかた初めてのことだろう、いや、ヘタすると
50年分くらいのホーホケキョをいっぺんに聞いてしまったのかもしれないと思うほどたくさんのホーホケキョを聞きながら、我々はまったりと下って行った。
 トンビが超低空で飛び、川面に突っ込むのを何度か見た。川魚でも取っているのだろうか? それとも暑いから水浴びなのかもしれない(←違うと思う)。川縁の崖下にはなぜだかアヒルが涼んでいたり、透明に見える淀みの中にはなぜだかカラフルな錦鯉がいたして、今日はやたらとのどかな感じがする。
 そしてあまりにもいい天気のため、かなり暑く、わざと沈するか飛び込みたくなるような感じだ。イシカワ顧問は結局ガマン出来ずに、飛び込んで泳いだりしている。
 ちょっと腹が減った午後約13時過ぎ、右岸の小高い川原に上陸した我々は木陰に入り、目張り寿司とカップラーメンという中途半端に貧しい昼食を摂る。しかしそんなメニューでも、スタート地点で買ってクーラーボックスに入れてあった冷え冷えのビールがあれば、
すべてオッケーになってしまうのだった。やっぱり買っといてよかった。

 その後しばらく逆風に苦労したが、相変わらずステキなロケーションの中を下っていった我々が、アウトポイントに着いたのは午後4時を少し過ぎた頃だった。
 結局サファリですら沈もなく、安定のいいカラカルに乗るイシカワ顧問などはまったく完全にいつもの如く、フネの上で寝たりしてしまいながら流されるという超・まったりツアーだった。しかし天気はどーやら良すぎたようで、かなり日焼けしてオレは腕や足が、イシカワ顧問は顔面が真っ赤になっている。うー隊員は流石に女性らしく日焼け止めをバッチリ塗って、しかも今日は長袖・長ズボンで完全防備だった。アビルマン隊員は元々真っ黒なので
変化なし、ということも付け加えておこう。

 前回来たときはイシカワ顧問と二人だったのと、フネも“貨物船”ヘリオスではなく、スターンズ・リバーランナーだったためか、サラッと終わってしまった感じがしていた。しかし今回は結構な距離を感じて、なんだかゴールが遠いような気がしていた。
 あとで地図上にヒモを這わせて正確に計ってみると、15kmぐらいと思っていた距離が
まるまる20kmあったことが判明してアビルマン隊員がブツブツぬかしている。まったく心に余裕のないヤツだ。楽しい所をそれだけ長く漕げたからいーじゃんと思うのだが、今年の開幕・櫛田川でひいひい言いながらセッティングのマズいサファリで長距離漕がされて以来、長いコースがトラウマになっているようだ。こーゆーヤツはそのうち富士川の25kmコースに連れて行ってもっと鍛えてやろうと、カタくココロに誓うオレなのだった。

今回の教訓: やっぱり遠い所の川はキャンプツーリングで正解。時間が有効に使える