活動記録其の59・雲出川編
文:隊長
2002年9月15日
雲出川の屈辱!
〜まったり系のハズが次から次へと瀬に見舞われ、リタイア&撃沈でまた庄内川パターン!?〜
  「くそ〜」
 その時、田んぼの真ん中の細い農道の路肩に車を寄せて、オレはパンク修理をしていた。

 敬老の日の9月15日、それとは
何の関係もなくシーズン2002・新規開拓シリーズ秋バージョンとして、オレは三重県中部を流れる雲出川に向かっていた。しかし2ヶ月ほど前にスカウティングに来たにも関わらず、川を目の前にしていきなり迷ってしまった。
 すると集落の中の細い道を走っているときに
ガツン! という衝撃があって、その後「シュ〜」という、川の上では絶対(陸でもそうだけど)聞きたくない音が聞こえてきた後、タイヤがガタガタ言い出したのだ。  
 タイヤはキッチリと、それでいて
問答無用にパンクしていた。仕方なくトランクからカヌーを下ろし、その下からスペアタイヤを引っぱり出す。
 天気は雲が多いが晴天。人の姿はおろか、車すら5分に1台通るか通らないかという超・田園風景のど真ん中である。こんなトコでタイヤ交換なんて、まるで宮崎駿のアニメ「ルパン三世・カリオストロの城」の冒頭シーンのようだ(←密かにマニア)。オレは以前から
ルパン顔だとは言われているが、今日は次元もいない。残念ながらジャンケンするまでもなく一人でタイヤ交換だ。くそ。
 ジャッキを車の下に差し入れてキリキリと巻いていく。ロックボルトが意外とカタくて苦労する。タマに農道をブッ飛ばしていく車が迷惑そうに避けていくのがこっちも鬱陶しかったが、なんとか15分程で交換終了。やっと集合場所へ向けて再出発する。
 けっこうロスしたようだが、集合場所には時間より2〜3分早く着いた。やまちん隊員が手を振っている。もう一台止まっている車はどうやら本日が2度目の参加となる黒太ゲスト隊員のようだ。
 前回参加の武儀川ツアーではオレが欠席したので、会うのは今日が初めてだ。黒太ゲスト隊員は小さなサングラスが似合う静かな
ジャン・レノ風のナイスミドルだった。 と、miki-fish夫婦隊員の車がやってきた。乗っていたのは旦那隊員とその大学時代のラクロス友達(miki-fish旦那隊員は元ラクロスの選手なのだ)で、本日は飛び入り参加のsweetyゲスト隊員である。他の連中はいつものように遅刻していた。
 その後20分くらいの間にアビルマン隊員とうー隊員の豊田・ボートコンビ、かつお隊員とイシカワ顧問の理工系ラジオ製作師弟コンビが到着。最後にためごろう隊員が到着して、やっと本日のメンバーが勢揃いした。
 初めての川で何がどうだかわからないというのに、いきなり10人という大所帯になってしまっている今回の雲出川ツアーである。

 伊勢大井駅近くの堰堤下川原に移動し、そこをアウトポイントとする。車を半分置いてからエントリーポイントに向けて出発した。今日は上流の「家城」付近の沈下橋の下あたりからエントリーする、約8kmのコース計画だ。なにぶんクドイようだが、初めての川は何が起こるかまったく読めないので、距離は短めにしておくのが正しいのだ。
 なにしろこの雲出川に関してわかっていることといえば、下流のほうでは町ぐるみでカヌー競技を奨励しているということくらいで、この辺りを下ったという情報はどこにもなかった。といっても我々が過去に行った川やコース自体、普通のカヤッカーならまず行ったことがない所ばかりなので、我々にとっては川は
開拓するのが当たり前なのだ。つまりいつも通り、他のカヤッカーが知らない秘境を求めて、今日も我々は未知の川にやってきたというわけだ。
 
 で、エントリーポイントでいきなり岩場ゴツゴツの3級(イシカワ顧問曰く4級)オーバーの
激ヤバな瀬を発見して早速ポーテージ(いや、その瀬の下からスタートだからポーテージじゃないのか?)。落差2mの中に直径1〜2mの岩がゴンゴン尖っている、PTAのオバサンが見たら1秒で児童立入禁止区域に指定しそうな感じの危険な岩場である。
 ある意味PTAのオバサン以上に危険を恐れる過保護な我々、チーム“鮫”としては当然、その瀬の下からエントリーなのである。しかし、なんとその瀬の下10mほどの所にも左にヒネリの入った嫌らしい感じの落差5〜60cmの瀬が見える。またドキドキする。
「ど〜するんですか〜?」
と、アビルマン隊員が聞いてくる。オレは言った
「ヤバイと思った人はさらに下から行くように」
 結果、アビルマン隊員とうー隊員の“激烈”サファリコンビとアキレスSW126のやまちん隊員はさらに下から、残りの“シャーク3号”スターンズ・リバーランナーのオレ、同じくリバーランナーのためごろう隊員、カラカルのイシカワ顧問、アワーズの旅鴉を駆る黒太ゲスト隊員、そしてなんと“第2かつお丸”ことGUMOTEX・ヘリオスのかつお隊員と、同じく青のヘリオス340に乗り込むラクロスコンビ・miki-fish旦那&sweetyゲスト隊員はここからということになった。
 セルフベイラー付きのバトルシップであるサファリが2艇とも
瀬の下からで、ノンベイラー、ファミリー艇のハズのヘリオスが瀬の上からというなんだか不思議な逆転現象が起こっている。
 まず
「今日は初めての川だし、ボクが先頭を行きましょう」
というスマイリーな冒険野郎・イシカワ顧問がエントリー。嫌らしい瀬を前にサイストラップを装着する間、船尾を押さえて置いてもらう作戦で念入りに準備し、スタート。うまいこと流れに乗り、ヒネリのある瀬も普通にクリアしていく。カラカルの動きを見ていると、流れは一見激しく見えるがどうやら意外と早くはないようだ。オレも(行ける!)と判断して続く。
 そして無事クリア。そして二人乗りのラクロスコンビだが、これも普通にクリアしてくる。そして結果的にはかつお隊員、黒太ゲスト隊員、
全員が普通にクリアしてきてしまった。
 
 下からエントリーして溜まりで待っていたアビルマン隊員は、みんながひとり、またひとりとクリアして行くたびに(しまったー、これなら行けたかも)という表情に変わっていっていた。結果的にヘリオス二人乗りまでクリアした瀬をポーテージしてしまったのは、かなりな
屈辱であろう。

 雲出川はとろ〜んと流れている川、のハズだった。実際エントリーポイントの瀬の後はただの普通のトロ場であった。水質は正直イマイチだが、今日はまったり系ツーリングになるはずであった。しかしそのまま、矢作川上流か飛騨川を思わせるロケーションの所を5〜600mも行くと、いきなり前方に結構なウェーブが立っている所を発見する。
 そのウェーブの発生源はゴロリと転がった岩ではなく、川床の地形によって出来ているものらしかった。
 雲出川の川床は巨大な岩盤によって形成されている所が多いようだ。落差がある所は岩の構造線の方向に割れたように尖っており、そうでない川床は、一枚モノの岩盤そのままで、表面の褶曲がハッキリと見て取れるような所も多い。
 とか岩盤に見入っていると前方に左岸よりの瀬らしきものが見え、ザァザァと大きな音が聞こえてきた。
 
 初めての川で、見えないところに瀬がある時はスカウティングが鉄則である。左岸の岩場(これも一枚岩盤だった)にフネを付けて、ちょっと歩いて見に行く。すると障害物となる岩がいくつか見えるものの、300mほどそこかしこに瀬があるのがすべて見渡せ、先のトロ場までしっかりとルートが確認できた。戻ってみんなにルートを教える。
 と、聞く前にもう行ってしまったヤツがいる。
イシカワ顧問であった。
 今日は先頭宣言をしたので、自分が試金石になるつもりらしい。オレも説明を終えると続いて行く。
 ちょっと行くと一つ目の瀬を越えた所でイシカワ顧問が待っていた。どうやら瀬が予想以上に長かったので、躊躇したようだ。ルートが読めているので、そこからオレが先を行き無事クリア。一カ所、隠れ岩が出っ張っている所があったが、それだけ越えればなんとでもなるような所だ。続いてイシカワ顧問が抜けてくる。続いてアビルマン隊員、うー隊員も無事に瀬を抜けてきた。
 しかしかつお隊員は右岸寄りのポーテージルートを進んで来ていた。賢明である。いや、
堅実である。これこそかつお隊員の必殺技“堅実ポーテージ”なのだ。
 同じヘリオスに二人で乗っているラクロスコンビのmiki-fish旦那隊員&sweetyゲスト隊員は瀬に突っ込んできた。そして隠れ岩にかすってヒヤリとしながらなんとか抜けてきたが、結構水船になっている。黒太ゲスト隊員も大事をとってかつお隊員と同じポーテージコースを来ていた。
 ポーテージコースは結局岩場を少し歩かねばならない。黒太ゲスト隊員は早々とフネを降りて歩いていたが、かつお隊員はギリギリまでフネに乗ったまま来ていた。と、その時、岩と岩のすき間を通ろうとした“第2かつお丸”が岩に引っ掛かかり、そのまま流れに押されて横転、
ポーテージコースで撃沈してしまった。流される荷物と“第2かつお丸”。しかしその下はすぐトロ場のため、回収はカンタンだった。
 やまちん隊員も水船になりながらも余裕で抜けてくる。“やまちん2号”アキレスSW126はかなりの安定性のようである。そしていつもはベイラーが付いていないため、溜まった水を出すのに四苦八苦しているやまちん2号だったが、今回は
500円で購入したという電動ポンプが素晴らしい威力(笑)を発揮し、モーターでどんどん水を吐き出している。あっという間に排水終了である。凄い新兵器であった。しかしうー隊員はそれを見て一言、
「漁船みたい」
と呟いていた。

 さて、ここで一つ、重大な事件が起こってしまっていた。かつお隊員が撃沈した時にパドルが折れてしまったのだ。かつお隊員のパドルは長らく使用しているスキップジャック・アルミパドルなのだが、ジョイント部分がプラスチックのため、そこがヤラれてしまったらしい。シングルパドルで漕いで見せ、
「行けますよ」
というかつお隊員だったが、同じことをして
結局脱臼事件を起こしているイシカワ顧問の
「ここで上がったほうがいいよ」
という実感のこもったアドバイスで、かつお隊員はここまででリタイアすることとなった。
 スタート後1kmも来ていないのに、いきなりリタイア1名である。雲出川はいったいどんな川なのか? その全貌は徐々に明らかになっていった。

 雲出川は瀬とトロ場が交互にやってくる、一般的に言ってワリと標準的な川である。しかし基本的にまったり系だと思っていた我々にとっては結構バトルなイメージのある川になってしまった。瀬があってトロ場、瀬があってトロ場という繰り返しが続く。瀬は1級程度なのだが、時々岩がらみのちょっと大きいものも混じってくる。
 そのうち流れが右岸に向かっている大きな音のする瀬がやってきた。川が左右に切り分けられており、左は岩がゴツゴツで流れが早く、最後にズドンと落ちいて航行不能。右は大岩の横に落ちている落差2m近いザラ瀬を降りた所にいきなりデカい返し波が出来ていてストッパー風になっている。波高は1m前後でかなりデカい感じだ。
 中州を歩いてそれを偵察したオレは早々とポーテージを決意した。ザラ瀬だけなら行けるし、最後のストッパーだけなら行けると思うが、ザラ瀬を滑り降りて勢いが付いたところであの水柱に突っ込むのはコントロールができるか不安で、真っ正面から返し波の根本に突っ込んだら、こっぱみじんになってしまうように思えた。
 漕ぎ上がって右岸側の草むら寄りをフネを曳いていくことにする。すでにさっさとポーテージを決めていたためごろう隊員が先に歩いており、瀬の下にフネを浮かべていた。  
 続いたオレがフネを浮かべて瀬の下に漕ぎ出すと、瀬の上から入念なスカウティングをしている2人組が見えた。miki-fish旦那&sweetyゲスト隊員のラクロスコンビである。なんと彼らはこの見た感じ3級オーバーの瀬に二人艇のヘリオスで突っ込む気のようだ。
 そして3分後、本当に突入してきた。ルートはザラ瀬を滑り降りるのに勢いが付かないよう、内側を回るコースだ。が、その内側を回るためには流れの真ん中にある大きな隠れ岩の内側を通らなければならない。果たして二人の乗るヘリオスはその大隠れ岩に引っ掛かり、横向きになって止まってしまった。水流に押されるヘリオス。このままではヤバいと判断した後席のmiki-fish旦那隊員がいち早く降り、sweetyゲスト隊員の乗ったフネを押さえて押し出す。
 sweetyゲスト隊員一人となったヘリオスは瀬に落ち、下の返し波のど真ん中に向かっていく。波に乗り上げるヘリオス!
「終わったか(←何が?)!?」
と思ったのも束の間、sweetyゲスト隊員の乗ったヘリオスは返し波にブチ当たり、再び横向きになりながらもその大波を越える! しかしその瞬間超・水船となったフネは波の上で大きくビクンビクンと振動し、その姿はまさに
ケイレンするイモムシの様相であった。そしてそれでも無事に沈せず抜けて来るsweetyゲスト隊員。まさに奇跡的クリアであった。
 だが、その様を見て、ルートが読めたのか、みんな次々とこの瀬に突っ込んでくるではないか。アビルマン隊員、黒太ゲスト隊員、やまちん隊員、イシカワ顧問、うー隊員と結局それ以後は全員がこの瀬をクリアしてしまった。  
 なんということであろう。結局ポーテージしたのはオレとためごろう隊員のスターンズチームだけである。先ほどのエントリーポイントのサファリコンビに続いて、こんどは
こっちが屈辱である。
 てなワケでこの瀬は、隊長であるオレが率先してポーテージした瀬をみんながクリアしてしまったことから
『屈辱の瀬』と名付けられることになってしまった。くそう。
 その後もまた瀬とトロ場が交互にやってくる。すると先ほど、イモムシ的ケイレンで屈辱の瀬をクリアしたラクロスコンビが、流れが左岸に寄っている複合落差のある瀬で岩肌に接近しすぎて撃沈してしまう。フネにしがみついて流されてくる二人。波乱である。雲出川は何が起こるかわからない。

 途中で川床の岩盤が全体的に露出して段差になっている自然の堰堤のような所が現れた。そこを引っ掛かりながら降りると今度はその先に岩場を深く削り取ったように蛇行するコースが出来ていて、途中の瀬が大きな音を立てている所があった。またしても歩いてスカウティングに行く。
 そこは大きなS字になっており、コースの入り口から瀬が続いて一つ目のカーブの終わりに大きな落ち込みがある。そしてそれを交わして次のカーブに入る所にまたひとつ、という一つ目の所で体勢を崩したらオシマイな
複合瀬であった。岩の上からそれを見て取り、
「なるほど。まぁコースはわかった。なんとかなるだろう」
と、
言うか言わないかのうちに、視界に入ってきたのは青いヘリオスだった。
「おーいっ!?」
と叫んだがもう遅かった。ラクロスコンビはザラ瀬の中をたくましく、必死に漕いでいる。S字のひとつめのカーブをクリアしたが次の瀬の手前で若干姿勢を崩してしまうヘリオス。しかしなんとか無事にクリアしていったのだった。ここ一番では見事なチームワークを発揮するようだ。後にイシカワ顧問は、ラクロスコンビがあまりに巧くヘリオスを乗りこなしているため、
「ボクのフネじゃないみたい」
と漏らしていたほどだった。  
 オレもフネまで戻って早速エントリー。S字の入り口の瀬はウェーブがデカいが、なんとか押さえ込めた。しかしひとつ目の出口の大きな瀬では結構強力なブチかましをまともに食らってしまい、姿勢が右向きに。そのまま二つ目のカーブの落ち込みが迫るがドリフト姿勢のまま保つのが精一杯で、やられたかと思ったが弾かれた方向がよく、瀬の一番大きな所には向かわなかった。結局グラッときただけで、無事クリア。しかしまた超・水船である。
 続いて黒太ゲスト隊員、うー隊員とくるが、うー隊員はひとつ目の瀬で大きく弾かれてよろめき、そのまま二つ目の瀬に突入して撃沈。流されてきてしまう。また撃沈した時に水を飲んだらしい。あちこちの水を飲むのが半ば趣味になりかけているようだ。
 先ほどの「屈辱の瀬」をクリアした時の余裕ぶりにアビルマン隊員が
「実はサファリを一番乗りこなしているのはうーやんかもしれない...」
などと言っていたそばからコレである。さすがうー隊員、そういう所が立派な我が“鮫”のメンバーなのだ。  
 続いたためごろう隊員も、これまた
スピンするように撃沈して流されてきた。その後のイシカワ顧問とアビルマン隊員は無事クリアしてきたものの、結局ここで2名の撃沈者を出してしまった。
 雲出川恐るべし。

 それからしばらく行くと右岸側がひらけて護岸され、家並みが見える所に出た。そこで我々はやっと、我慢していた空腹を満たすことができることになる。
 護岸の上から手を振っている人物がいた。かつお隊員である。
 やっとメシであった。

 本日のランチ、給食当番はmiki-fish旦那隊員である。メニューはなぜか
高山ラーメンと磯辺焼きという謎の組み合わせだ。
 しかしまたしても些細だが、問題が発生していた。人数の割に水が少ないのだ。しかもラーメンはインスタントではなく、生ラーメンなのだ。
「物体Xになるのでは...」
誰言うともなく、あの昨年の長良川での事件を思い出す。黒太ゲスト隊員までもが活動記録を熟読しているらしく、よく知っていた。
 アビルマン隊員が次回から乾麺だけじゃなく、生麺も使用禁止というルールを作ろうと言い出す。昨日の根尾東谷川でも
「3回続けてアロハを着てこなかったらゲスト隊員に降格」
という新ルールを作ったばかりだ。まったくルール作りが好きな男である。
 しかし確かにゆで麺かインスタントなら、それほど水を使用しないで済むのは確かだ。結局ルール化はうやむやだが、人数の多いときはそうすることにしよう。
 で、持ってきた水が少ないのは、先ほどの右岸にあった「コブ取りの水」を旦那隊員たちがペットボトルに汲んできていたので、それで一度粉を洗い落としてから茹でることで解消しようということになった。だが、その水はイオウ臭いのでイマイチちょっと心配な感じだ。洗ってみるとなんと
麺がブヂブチに切れていく...。何か化学反応でもしているのではないだろうか!?
 それでもとりあえず高山ラーメンが完成したので、やっと乾杯ができた。時間はもう14時を回っている。ちょっと遅めのランチだった。
 つゆが良い香りで美味しい高山ラーメンと、これまた砂糖醤油の焦げた香りが香ばしい磯辺焼きを食べ尽くし、我々は後半戦に向かおうとした。と、その時
「もう今日の目的は達成した。ボクはここで上がります」
と言い出したヤツがいた。昼食時にビール500ml缶2本と350ml缶1本で
計1350ml(?)を飲み干したイシカワ顧問である。
 ちょっと前の天竜川ツアーでも、漕ぐのは少しでウマいビールが飲めればいいと言って、長距離ツアーに難色を示していたイシカワ顧問である。最近どんどん短距離派になって行っているようだ。
 そこで上がってかつお隊員の車に同乗していくイシカワ顧問のフネ・カラカルをsweetyゲスト隊員が借り、miki-fish旦那隊員が一人でヘリオスに乗って行くことになる。これでかなり身軽になったようだ。
 
 後半には堰堤が2つ待っていた。しかしキツかったのは堰堤越えではなく、堰堤前の500m以上あった静水だった。時々ちょっとした逆風になったこともあり、みんなここでかなり体力をそぎ落とされる。
 一つ目の堰堤を越えた所には見事な形に岩盤が露出した崖などがあり、ちょっと見とれたりする。
 そして後半最後のヤマ場は、車からも確認できていた岩場であった。しかし行ってみると、右岸寄りからワリとすんなり通ることができ、心配したほどでもなかった(っていっても2級くらいはあったけど...)。

 その後アウトポイント直前の堰堤越えでやまちん隊員が荷物を流出させるハプニングはあったものの、午後約4時30分、我々は全員無事に雲出川からアウトした。

 雲出川はヒツジの川をかぶったオオカミであった。道から見える所はまったり系なのだが、見えなかった所には結構な瀬が隠れていた。まさに庄内川パターンである。しかし庄内川と違ったのは、今回の参加者たちの感想である。
 みんな
「今日は楽しかったー。来年また来たい」
と言っている。かつお隊員はスタートからロクに行かないウチにリタイアして悔しがっているし、アビルマン隊員&うー隊員の
“豊田の赤い2連星”サファリ・コンビはエントリーポイントの瀬が、オレとためごろう隊員のリバーランナー・コンビは「屈辱の瀬」が、miki-fish旦那隊員&sweetyゲスト隊員のラクロス・コンビは痛恨の撃沈がそれぞれ禍根となっているのだ。
 来年のリベンジを期す我々に対して、満足げだったのはアキレスの戦闘力&電動ポンプで雲出川を満喫したやまちん隊員と、静水で苦労したもののノー沈で来て、アウト後正式入隊を表明した黒太ゲスト隊員、そして漕ぐだけ漕いだ後に飲んだくれて満足した挙げ句リタイアしたイシカワ顧問の三人だけであったとさ。




今回の教訓: 「初めての川は慎重に。しかし時にはチャレンジも必要。」