活動記録其の63・櫛田川編part-4
文:隊長
2002年10月6日
牙をむいた癒し系! 
〜伊藤隊員お帰りツアーで親子鮫と撃沈シスターズを飲み込んだ凶暴な桃源郷!?〜
  櫛田川に来るのはもう4回目だった。2001年9月に発見したこの桃源郷に惚れ込んだチーム“鮫”は、今シーズンの開幕戦の3月、そして5月に続き今回、中国から帰国したRUSTIC伊藤隊員のお帰りツアーとして、またしても櫛田川にやってきていた。

 いつものように道の駅「茶倉」に集合した我々は、遅刻しているアビルマン&うー隊員の豊田ボート部コンビを待たず、これまたいつものアウトポイントの公園に移動した。ほどなく、ボート部コンビも到着。早速着替え、4台の車に分乗して上流のエントリーポイントへ向かう。

 と、ここまではほぼいつも通りの展開だったのだが、途中の道すがら
またしても天国が地獄になるその兆候は、徐々に我々の前に姿を現しつつあった...。
 移動中の車から見える川とその中の瀬は、
いつもよりちょっとだけ白く泡立っている感じがした。アビルマン隊員は
「なんかヤバくないですか?」
とさかんに気にしている。
「そーかなー? いつもあんなモンじゃなかったっけ?」
オレはあまり気にはしていなかった。
それが悲劇のはじまりだった。
 異変は確実に起こっていたのだ。

 エントリーポイントに到着し、セッティングを開始する。今日はまたしてもメンバーが多い。ってゆーか、櫛田川っていうとメンバーが増えてしまう現金な“鮫”なのだ。アビルマン隊員&うー隊員の豊田ボート部コンビは、今日も川に降りると“豊田の赤い2連星”として必殺・疎沈製造船GUMOTEX・サファリだ。シバタ隊員は“子鮫”マイちゃんを連れてきており、フネは“しばっち1号”GUMOTEX・ヘリオスと“しばっち2号”アワーズ・渡り鳥の2艇で来ている。今日は超☆癒し系・櫛田川ということもあって、“しばっち2号”でマイちゃん初の一人乗りの予定だった。
 そして前日も「自主トレ」として、最近休みが合わずにツアーに参加できないsakuzo隊員と二人で長良川を漕いできて疲れている黒太隊員は、今日は
「癒されにきました」
と、ゆったりスターンズ・レイカータンデムに一人乗り。
 同じくスターンズ・レイカータンデムで約1年ぶりの参加となる本日の主役・RUSTIC伊藤隊員は、なんと中国赴任中に
現地で極秘結婚しており、奥さんとなった琳琳さんを連れてのタンデム参加である。そしてシミズ隊員は今日は“飛騨之守参号”GUMOTEX・ジュニアで参戦し、ゲスト参加の隊員にいつもの“飛騨之守弐号”スターンズ・レイカーソロを貸すことになっていた。
 そしてそして、ゲスト参加の隊員は、
あの飲んだくれ女子大生・ゆかまるゲスト隊員と、その友達・おおたけゲスト隊員である。この二人にはシミズ隊員の“飛騨之守弐号”スターンズ・レイカーソロとオレの“シャーク3号”スターンズ・リバーランナーがレンタルされることになっていた。
 しかし、この女子大生コンビ二人は無謀にも、二人でオレの“シャーク4号”GUMOTEX・ヘリオスに乗り
“撃沈シスターズ”を結成するという。
 だが果たして、その野望は早くも川を前にして崩れ去ることになる。
 先ほども書いたように今日の櫛田川は結構増水していた。事前のインターネットでの水位チェックでは「ー0.07m」となっており、
何が基準の「0」だかワケがわからないまま、我々は
「7cm!? うそーん!」
などとノンキにも渇水の心配をしていたのだった。が、どーやらこの基準はあんまりアテにならないらしい。実際目前の櫛田川は、かつてないほどの水を湛えている。アビルマン隊員の言うとおり、これだと途中の瀬もちょっと大きくなっているように思えてきた。
 そこで我々は相談の結果、操艇が不安なマイちゃんは“親鮫”シバタ隊員と二人で二人艇ヘリオスに、マイちゃんが乗るハズだったアワーズ渡り鳥は、安定がかなりいいのでおおたけゲスト隊員が、参加三回目のゆかまるゲスト隊員はそこそこ安定しているスターンズ・リバーランナー、シミズ隊員は“飛騨之守参号”ジュニアから本来の“弐号”へ。結果、オレは“シャーク4号”ヘリオスに一人乗り、ということになった。

 セッティングを終えた順にとりあえず水の上に出ていく。そして全員がエントリーした所でスタートだ。この時点で午前約11時である。みんな一列になって最初の小さな瀬を次々と越えていく。と、スタート直後、200mほど行った所にあったちょっとした瀬が、今日はかなり大型の瀬に変貌しているではないか。
 豊田ボート部コンビを先頭に、次々入っていくメンバーたち。
数人の絶叫と悲鳴(喜びの)が切り立った渓谷に響くが、そんなものはすぐに荒れ狂う瀬の音にかき消されてしまった。オレはおおたけゲスト隊員とゆかまるゲスト隊員を後から見守りながら突入する。ふたりともかなりアセっているようだが、フネの性能が女子大生コンビを救っていた。かなり水を被ったもののなんとか二人とも無事クリアしていく。
 次はオレの番である。正直言おう。オレはその時
かなり後悔していた。これはヘリオスで入るべき瀬ではないと思った。
「うおぉぉぉー!!」
と超ビビりながら突っ込み、波頭に乗り上げるがなんとかヒネられることもなくクリアする。かなりドキドキだ。
 RUSTIC伊藤夫妻は大丈夫かと思ったが、さすがはレイカータンデムである。しかも二人乗っていて重心がしっかりしているためか、普通にクリアしている。もちろん同じくレイカータンデムに乗っている黒太隊員も余裕でクリアしたようだ。しかし“親子鮫”のヘリオスには少々無理がある瀬だったようだ。二人を乗せた“しばっち1号”は健闘むなしくこの瀬であえなく撃沈してしまう。
 今日の櫛田川は癒し系ではなくなっていたのだ。たしかにこの瀬はシーズン最初のツアーではアビルマン隊員を沈めて浮力体を流出させ、今年2度目のツアーではヘリオス初乗りのイシカワ顧問をも新艇・初撃沈に陥れた瀬である。しかしパワーは正直言ってそれほどのものではなかったハズである。
 その時、癒し系の櫛田川ははっきりと
牙をむいていた。
 その後一つ目の沈下橋を越えた所にも強力なウェーブを伴った瀬が出来ており、かなりビビる。しかし最近サファリ乗りのサファラーとしてめきめきと頭角を現してきているアビルマン隊員と、危険な魚“鮠”(はや)ことうーやん隊員は結構楽しそうだ。にもかかわらず、この瀬を越えた所で結局疎沈してしまったのは誰あろうアビルマン隊員その人である。こうして今日も早々とノー沈クリアが消えてしまった“ミスター沈”なのだった。

 スタート後はしばらく飛騨川ちっくな峡谷のような所が続く。しかし瀬らしい瀬は先ほどの沈下橋の後の瀬で終わりだ。“親子鮫”はリカバリーに手間取っており、流出した荷物などを拾っていて結構時間が掛かってしまっていた。なんとか隊勢を立て直し、進み出す。
 “親鮫”シバタ隊員は今日の櫛田川ではヘリオスの親子鮫は危険と判断し、比較的安定の良い黒太隊員のスターンズ・レイカータンデムに“子鮫”マイちゃんを預けることにした。しばらくは
“養子鮫”である。しかしこの判断は正しかったのか、シバタ隊員はこの峡谷の出口付近で岩に引っ掛かり、乗り直す時に乗り沈してしまっていた。すでに最初の撃沈&漂流でかなり体力を消耗しているようだ。
 その後はちょっと流速がいつもより早い感じがするものの、なんとか癒し系っぽいリバーツーリングが続き、平穏な時が流れていた。しかし今日の櫛田川は天気もいまひとつと言った感じで、ちょっと不穏なムードがチームの中には漂っていた。
 “夫婦鮫2”、いや
“国際夫婦鮫”RUSTIC伊藤夫婦(めおと)隊員はふたりともまったりと川を楽しんでいる。奥さんの琳琳さんは結構日本語が話せて、他の隊員とも普通にコミュニケーションがとれている。いい感じだ。しかし当然のように中国ではカヌーに乗ることなど普通はないことなので、今日がまったくもって生まれて初めてのリバーツーリングであり、また初カヌーでもあった。それにしては慣れたモンである。いや、旦那の伊藤隊員の操艇を信じ切っているいるのだろう。なんだかうらやましい感じの夫婦鮫である。
 伊藤隊員本人はといえば、あの
“鮫”史上唯一の途中撤退事件となった忌まわしき土岐川〜庄内川ツアー(※2001年活動記録参照)で2度の大撃沈をカマして以来のツアー参加である。幸せ太りか10kgも体重が増えたそうだが、それでも相変わらずパドリングは安定している。

 そうこうするうちに早くもランチポイントが近づいてきた。しかし無事にランチをゲットする前にはひとつの試練が待っているのだ。
 いつものランチポイントの少し手前にはゴツゴツとした岩場があり、初めて来た時は2級強の瀬となっていた。今日はその時より水量が多い。アビルマン隊員&うー隊員が先頭を行き、様子を見る。しかしこの二人はかなりウデを上げてきているので、二人がクリアしたからと言っても実はあまり参考にはならない。シミズ隊員に続いてオレもヘリオスで突っ込む。かなりバウンドするが、なんとかクリアできた。これなら今やヘリオス一人乗りとなったシバタ隊員や女子大生コンビも余裕でクリアするだろう。
 と、思ったら女子大生コンビが瀬に入ってくるのが見えた。最初はおおたけゲスト隊員である。おおたけゲスト隊員は先月初めて、旅行先の北海道・ニセコ川で体験カヌーに参加、
リンクスUで大撃沈をカマして以来、カヌー好きになってしまったという謎のチャレンジャーである。ニセコ川は結構なホワイトウォーターのようだが、そんな所の次に来たのがこの癒し系・櫛田川である。しかしそこは癒し系ではなくなっており、結構なバトルに引き込まれるも、意外にも慌てず騒がず、淡々とここまでクリアして来ていた。そしてこのランチポイント前の瀬も、意外と静かにクリアしていったのだった。
 対照的に“鮫”3度目の参加で、一人乗り2回目、おおたけゲスト隊員より1回だけカヌーキャリア(笑)の長い、酔いどれ女子大生・ゆかまるゲスト隊員は
「ギャアァァ〜!!」
という絶叫とともに瀬に突入。
「ヒィィィェ〜!」
という感想とともにクリアしていった。うるさいB型である。
 
 無事ランチポイントに到着後、上陸した我々は本日のお昼、スープ餃子を作り始める。11人いるので、今日は夢の
“餃子100連発”計画が実行に移されていた。そうである。あの天竜川・ためごろう隊員サヨナラツアーで実行される予定だったアレである。そしてその100個の中には、あの時余って冷凍保存されていた餃子50個がそのまま含まれていたのは言うまでもない。
 もう少々寒い季節になりつつあるので、スープはこってり系が用意してあった。鍋をふたつ取り出し、50個ずつ餃子を茹でる。そこでひとつの事に気づいた。今日の餃子はモトを正せば中華料理ではないか。そしてそういえば、今日のメンバーの中には
本場・中華人民共和国の主婦がいるのである。
 伊藤夫人・琳琳さんに調理を頼むことにする。しかし旦那の伊藤隊員曰く、
「味付けはまかせないほうがいいですよ」
とのことだ。中国でも琳琳さんの出身地辺りはかなり味付けが濃いらしく、何でもかなり濃い口になってしまうらしい。とりあえず味付けはオレがすることにする。
 ほどなくシメジとニラが入ったほかほかスープ餃子が完成。みんなウマそうに食べている。琳琳さんだけはやはり味が薄いと感じるらしく、皿に取ってから塩コショーをかなりふってから食べていた。うーむ、やはり地域が違うと味付けひとつとっても相当違うものなのだろうか。しかしオレが中国北部を旅した時は現地で出されるものはどれも絶妙な味付けで、普通にウマかった記憶があるのだが。
 
 ランチを終え、いつものように二つ目の沈下橋をリンボーダンスでくぐる...予定が、今日は水位が高くてとても橋の下をフネごとくぐれる状況ではなかった。仕方なく左岸からポーテージする。その時、おおたけゲスト隊員の乗る“しばっち2号”アワーズ・渡り鳥のサイドチューブがグニャグニャになっているのに気づいた。どうやら天竜川に続いてまたもやエアー漏れのようだ。
 とりあえず再注入してあちこち点検するが、急速に抜けるほどの穴が開いている様子ではないので、今回もダマしダマし行くことにする。

 櫛田川はここからキュッと左にカーブした後、ちょっと開けたロケーションながら大岩が点在するポイントである。ここをしばらく行くとあの櫛田川名物「透明な瀬」があるハズだった。
 しかし近づいていくと、そこでも櫛田川は
再び牙をむいていた。
 透明な瀬の所は3〜4個の瀬が続いていて、その一番最後の落ち込みが「透明な瀬」になっているのだ。手前の瀬は巨大なウェーブを形成し、岩場を緩いS字となって流れており、50mの間に5m程度の高低差がある。
 アビルマン&うー隊員のボート部コンビやシミズ隊員などは、普通にクリアして行った。おおたけゲスト隊員も波に翻弄されながらもアワーズの戦闘能力に助けられ、一瞬かなり傾いたりしつつもなんとかクリアして行った。
 悲劇が訪れたのは続くゆかまるゲスト隊員にだった。今日は
明らかに酒が足りないゆかまるゲスト隊員は、やはり本調子ではないのだろう。透明な瀬に向かう一連のワイルドウェーブで酒の無い酔いどれを乗せた“シャーク3号”はグラリと傾き、そのままステーンといった感じで撃沈してしまった。すぐ後に居たオレは投げ出されたゆかまるゲスト隊員が白く泡立つウェーブの中をどんぶらこ・どんぶらこと流されて行くのを見ながらも、どうすることもできないでいた。
 そうである。オレが“シャーク3号”に乗っていればなんてことはないぐらいの楽しそうな瀬であるが、今日オレが駆っているのは“シャーク4号”GUMOTEX・ヘリオスなのだ。こんな瀬では操艇するのが精一杯なのだ。
 その間も、ゆかまるゲスト隊員は波に揉まれて流されていく。一瞬カラダがこちらを向いた時チラリと表情が見えたが、怯えた感じではなく、なぜだか
憮然とした渋い顔をしていた。やはり酒が足らなかったのが気に入らないのだろうか。
 そしてオレは、そのまま前方を漂流するゆかまるゲスト隊員がその身ひとつで、今日は透明でもなんでもなくなっている瀬に
ぼてくり落ちて行くのをしかと見届けたのだった。
 瀬の下ではゆかまるゲスト隊員救助大作戦が展開され、プカプカ浮いているものは本体の他、フネ、パドルと順次回収されていった。しかしここでまた問題がひとつ起こっていた。パドルがまっぷたつとなってその片方が行方不明になっていた。ジョイントのスクリューが無くなっていたパドルのため、撃沈した時に泣き別れてしまったのだ。
 オレはアビルマン隊員とともにパドルのもう片方が流されて行っていないか、少し下流を捜索する。が、やはり発見できなかった。どうやら「透明な瀬」の下に沈んでしまったようだ。チーム“鮫”としてはイシカワ顧問・脱臼爆沈以来、
2本目の櫛田川様へのパドル奉納である。
 そしてゆかまるゲスト隊員は流されている時、岩に当たったらしく足にコブができていた(後日お尻にもできていたことも判明)。またしても「心が不安定」モードになってしまっていた。、
 が、その時ちょっと上流ではもっと重大事件が起こっていた。この一連の瀬の最初でヤバいと判断してポーテージしたシバタ親子隊員(ランチ後再びヘリオス二人乗りの“親子鮫”に復帰していた)が再乗艇後の瀬で撃沈し、シバタ隊員は流され、マイちゃんは一瞬ひっくり返ったフネの下敷きになり姿を消したように見えたらしい。結局事なきを得たのでよかったが、まさに超・危機一髪であった
 
 その後はアビルマン隊員が自分のサファリを畳んで、おおたけゲスト隊員の乗る“しばっち2号”アワーズ・渡り鳥に積み、“シャーク3号”スターンズ・リバーランナーに乗っていくことになる。パドルを失ったゆかまるゲスト隊員は前半のマイちゃんの如く黒太隊員のスターンズ・レイカータンデムの前席に乗り、励まされながら下っていくことになった。
 っていうか、パドルがないので
拾われた子犬状態で、まだ心が不安定なゆかまるゲスト隊員なのだった。
 
 そこからはしばらく緩やかな流れの所が続く。おかげで今日は癒されようと2日連チャンの疲れた体で来ていた所に、突然カヌー犬の如く推進力の足しにならないゆかまるゲスト隊員を乗せていく事になってしまった黒太隊員には、さらに
疲労が蓄積していったことは言うまでもない。
 それでも今日の櫛田川は、当たり前だが流れが結構早くて、色々事件が起こっているワリには意外と早く進んでいる感じがする。そして流速が早く、水量が多いせいなのか水質もあまりよくないようだ。

 またしばらく行くと徐々に川幅が拡がり、川原を川が蛇行しているポイントに出る。そのままちょっと行くと流れが二股になっていて右ははあの、オレ&はづきゲスト隊員の二人乗りヘリオスがイシカワ顧問の一人乗りヘリオスにぶつかった挙げ句、なぜだか二人乗りのこっちが撃沈したという「玉突きの瀬」である。
 しかし水量が多いため、ここは落差がツブれていて、ヘリオスでもカンタンにクリア。しかし後から来た親子鮫・シバタ隊員たちのヘリオスには左岸寄りのコースを勧める。
 問題はその後約400m先にあるちょっとした瀬だった。いつもなら少々波を被るぐらいで済むところが、今日はかなり強力な瀬に化けていた。
 両岸が岩場になっているカーブの途中にそれは飛沫と轟音を上げており、オレが行ったときには、もう
すでにシミズ隊員が撃沈していた。
 うー隊員が右岸の岩場に登って注意を即している。オレはスピードに乗ってカーブに入ってしまっていたが、もはや今日の櫛田川をここまでノー沈でクリアしてきているオレにとって、そんな瀬は屁でもなかった。余裕でフネをコントロールし、センターをちょいハズした右の
チキンコースをキレイにクリア!!(←結局自慢になってない)
 かなりな水船になったが、撃沈だけは避けることができた。
 しかし続いて入ってきたおおたけゲスト隊員はここで遂に力尽きて撃沈してしまった。トロ場を流されてくるおおたけゲスト隊員。しかしニセコ川での撃沈に比べればどうってコトないのか、ワリと淡々とした感じだ。うーむ、ジツは大物かもしれない...。
 RUSTIC伊藤“国際夫婦鮫”(←国際救助隊みたい)隊員&黒太隊員with“カヌー犬”状態ゆかまるゲスト隊員も、こんな瀬はスターンズ・レイカータンデムの敵ではないらしく無事クリアしてきた。
 しかし、おおたけゲスト隊員のフネは完全にひっくり返っており、アビルマン隊員の畳んだ“激烈最強号”が括り付けられているため、なかなか元に戻せない。結局右岸の砂地の所にいったん上陸して、ひっくり返し、ついでに抜けてきたエアーを再注入する。しかしなんだか後ろに積んだ“激烈最強号”が
ヤケに重い気がするのはそれこそ気のせいだろうか...。

 岩場のポイントはそこから大きなS字カーブを2度ほど描き、我々は500mほどで視界の開ける所に出た。
 秋の陽が射し、ここからは本当にまったりツーリングだった。しかし川は結構なスピードで流れているので、あんまり漕がなくてもよく進む。
 川は次第に拡がって浅くなり、川底が砂地や小石になっているのもあってもとてもよく見えるようになってきた。風もないので水面は鏡のようだ。平らな水の上を、カヌーはすーっと滑るように進んでいった。魚がいるのもよく見えた。これが本当の、いや、我々が期待していた櫛田川なのだ。

 この時、みんなとても静かになっていた。初秋の櫛田川はとてもいい感じで、今日がお帰り&結婚お祝いツアーのRUSTIC伊藤隊員夫妻も二人して極楽顔になっていた。伊藤隊員の必殺技“満面の笑み”を、シッカリと奥さんも体得している所がおもしろい。まさに二人の気分はシンクロしているように見えた。

 まったりとアウトポイントまで漕いだ我々が、全員どうにかこうにか無事に川から上がったのは、午後4時少し前だった。アビルマン隊員の“激烈最強号”がヤケに重くなっていたのは、フネを入れた防水バッグの口とフネ本体のバルブが開きっぱなしになっていたため、撃沈で流れ込んだ水がバッグとフネの本体チューブ内にまで侵入していたからだということが判明したのは、フネを全部引き上げて干し始めた時だった。本体内に水が入ったフネでは、最初から撃沈しているようなものである。
「うぉー! 水がー! 水がー!」
と、あまりのことに言葉が断片的にしか出て来なくなってしまっていたアビルマン隊員であった。合掌。




今回の教訓: 「水位の情報は継続的にデータを取っておかなければ意味がない。ってゆーか、やっぱり櫛田川は天国にも地獄にもなる桃源郷でした。」