活動記録其の25・宮川編
文:隊長
2001年9月16日
武儀川なみ!? チーム“鮫”宮川の透明度に感動するも、地図なしで距離見当メチャメチャ!
〜そして隊長・シャーク4号はいきなり3級に遭遇して...!?
9月は秋ではなく、断じて夏である。
涼しい日が続き、もうそろそろ秋? という感じがしないでもない気がしてきていた敬老の日の翌日・9月16日(日)、我々は員弁川に続く三重県遠征2番目の川(県境を流れる北山川は除く)、
日本で3本の指に入るという清流・宮川に向かった。

現地、近鉄・川添駅近くの七保大橋に9時集合というスケジュールのため、約7時に家を出たオレ(隊長)は国道23号線を走っていた。日曜の朝っぱらだというのに車は意外と多く、途中で迷ったりしたため到着は9時を15分ほど過ぎてしまった。さすがに2時間で着く距離ではなかったようだ(←いつもながらテキトーな計画)。しかしほぼ同時刻に名古屋を出たイシカワ顧問は高速を使い30分ほど早い約8時30分に、シミズ隊員もその約5分後に到着したようだ。そこで二人は川原に降りる道探しと、少し上流にある堰堤がポーテージできるものかどうか、スカウティングしているはずであった。今回の参加メンバーはこの3名である。

イシカワ顧問からの連絡で川原への進入ルートを聞いていたオレは、畑の間を縫う急傾斜の狭い道を川原へと降りていった。途中から舗装が無くなり、下は前日まで2日続けて降っていた雨でぬかるんでいる。
「ウーム、車が4駆でよかったー。じゃないとキビシーなぁ」
と、思いながら藪の中のジャリ道をさらに川原方面へと進む。すると4駆でないのに普通にイシカワ顧問の車が止まっている。シミズ隊員の車も見えるが、こっちはバリバリの4駆なのだった。二人は待ちくたびれたのか、川原の大岩の上に座ってのんびりと川を眺めていたようだ。これが男同士じゃなかったら、大自然に囲まれた
微笑ましいラブリーデートのような光景だ。
オレの車に気づいた二人が歩いてくる。聞くと上流にある堰堤は地図上では「堰堤」なのだが、実際には明らかな「ダム」で、とてもじゃないがカンタンにはポーテージ出来ないとのことだ。そこでエントリーはここからということにして、下流にアウトポイントを探しに行く。しかしここで重大な問題が発生してしまう。
何しろ近くを通ったことは何度もあっても、スカウティングしに来たことは一度もなく、したがって、この宮川に関する情報は事前にいくつかのホームページでコースを調べただけなのだ。川原への降り口探しひとつとってみても結構時間が掛かる。しかもそこへ持ってきて、初めての川の時は小さな道を発見するのにも活躍する国土地理院発行の5万分の1の地図が、オレが持参してきたのは範囲が宮川のここより上流域がメインになっているものだった(地図買ったのはかなり前のため、カヌーに適したコースがどの辺りか、まったく知らずに見た感じ“良さげな所”という基準で買ってしまっていた)。そのためエントリーポイントが地図のやたら右端にあり、それより東(宮川はおおむね西から東に流れている)の地図を持っていなかったのだ。
仕方なく非常におーざっぱではあるが、イシカワ顧問の持っていた普通のロードマップ(コレがまたこのヘンは家も道もかなり少ないので当然のようにロードマップにも詳細図はなく、かなり縮尺が大きいページのみ)を頼りに「だいたい10kmくらい」下流の橋まで行き、そこから下で川原に降りられるポイントを車で探しながら走るという、あまり効率的とは言えない作戦に出る。
イッキに下流にある自然公園まで行ってそこをアウトポイントにする方法もあったが、距離が20km近くになってしまうことと、某ホームページには先ほどのエントリーポイントからしばらくは「ほとんど静水」という場所がしばらく続くとの記述があったため、「あんまり距離を長くしたくないなぁ」という気がしていた。

道端で農作業をしていた人に聞いたりしながらあっちこっち行ったり来たりし、やっと12〜3kmぐらい下流でキッツイ坂道を下り、ホントに4駆じゃないと間違いなく動けなくなるような石がゴツゴツある川原に降りることができた。そこをアウトポイントってコトにして4駆二台を川原に乗り入れて置くと、イシカワ顧問の車でエントリーポイントを目指す...。と、川原から出ようと思った時に次々と
カナディアン・カヌーやポリ艇を載せた車が狭い坂道を降りてくるではないか。どうやらここは河口付近に向けて15km前後のゆったりコースの出発点であるらしかった。

途中で食糧の買い出しをして、我々が元の七保大橋下のポイントからエントリーしたのは、結局集合から
2時間以上経った午前約11時30分頃である。地図や事前スカウティングが無いと、こんなモンなのである。


さて、宮川は水がキレイな川と聞いてはいたが、果たしてほんとうにその通りだった。とても上流にダムがあるとは思えないほど水は
透明度バツグンで、2・3日雨が降った後とは思えないほど全然濁っていない。ただ川岸を見る限り、水量だけがいつもよりかなり多いらしかった。
空も良く晴れ、朝、家を出る時は「寒いかな?」と思ったのがウソのように日差しが暑い。最初の小さな瀬でいきなり少し飛沫を被るが爽快に心地よい冷たさで、夏の高原での水遊びを連想させる感じだ。かなり気持ちいい。このところ小雨や台風に脅かされたツアーが続いたが、今日は久々に天気の心配なく楽しめそうな予感がした。

今回、オレは前回のシャーク2号(GUMOTEX Jr.)バルブ破損、前々回のシャーク3号(スターンズ・リバーランナー)ファスナー破損という災難連発攻撃に耐えかね、またそれらのフネの積載量不足を補うため新艇を購入してきていた。そのシャーク4号とは我がチーム“鮫”ではあの“撃沈王”イチロー隊員や“鋼鉄パドルアタッカー”土居隊員が愛用しているGUMOTEXの2人艇・ヘリオスである。しかし彼らのヘリオスがラックス(ノーマル)タイプの340であるのに対し、オレのシャーク4号はよりゴッツイ、EXタイプ(ボディのラバーがノーマルより肉厚のおかげで剛性・対磨耗性は高いが、重量は3〜4kgも重い)の、さらに380(つまり3m80cmもあるってコト)であった。
チャックが不安なシャーク3号はヤバい瀬がありそうな川だけにして、我がチーム本来のまったりリバーツーリングにはこれで対応しようという計画なのだ。
2人艇なので前か後ろか迷うが、一応土居隊員のマネをしてとりあえず前席に乗る。そして漕いでみるとこのフネは、いかにもダッキーといった感じで右に左にクルクルと巨体のワリによく回り、なかなか直進してくれないのであった。
「まっ、いっか。どーせ今日はそれほどコントロールが必要なコースでもないし」
と、オレはたいした瀬も無く、初心者コースという宮川に安心しきっていた。
だが、しばらく下った所で左岸寄りの緩い右カーブの瀬の途中に、なんだか
ミョーに大きめの返し波らしきものを発見した時、いきなり後悔することになる。
「エッ!? 聞いてないよ...」
と一昔前ギャグだった言葉を、
真顔で普通に呟いてしまうほどオレはマジになっていた。前を行く、“飛騨之守2”スターンズ・レイカーソロを駆って2回目のシミズ隊員は巧いことフネを操って落ち込みの右をすり抜けていった。オレも...と、続くつもりがフネが言うことを聞いてくれない! そのまま、なすスベもなく盛り上がりの真ん真ん中に直進してしまうシャーク4号&オレ。
「おおおぉぉぉーっ!!」
一瞬なんかのテレビで見た、ラフティングのボートがバウンドして水中に突入する映像がアタマをよぎる。
フネが浮き、次の瞬間ズバァッ! と日光でキラキラ輝く巨大な水しぶきがぶつかってくる。しかし「綺麗だ...」などと波に愛をささやいている余裕はオレにはなく、
「フゥッ!」
と、呼吸を止めながら(←息詰まるとはこのこと?)返し波にぶつかってバランスを崩すフネをコントロールする。グラッと右へ傾くが、なんとかパドルを振ってリカバーした。
「とりあえずデカいのは越えたぜー!」
と思ったのもつかの間、今度は流れがそのまま正面の崖岩にぶつかって方向が右へねじ曲げられている! 
「ぶぶっ!ぶつかるっ!!」
土居隊員直伝のパドルアタックで回避しようとしたが岩にハネ返る波が強く、フネごと弾かれたようになる。しかし二難去ってまた一難(?)、またもクソでっかい落ち込みが頼んだワケでもないのに目の前で待っててくれた。
「ああぁーっ!」
墜ちる感覚があり、直後にやはり前方から水の壁のぶちかまし攻撃だ。天竜川の鵞流峡前に突っ込んだストッパーと同じくらいの水の塊がシャーク4号を襲う。しかし突入がほとんど瀬に対し直角だったため左右にバランスを崩すことはなかった。となれば長さだけは3m80cmという巨大戦艦・シャーク4号である。バックドロップを食らうこともなく無事に瀬から吐き出された。

「怖かった...」
そう呟いた時フネの中は水深約25cm、中で金魚が飼えるほど浸水していたことは言うまでもない。
「ちょっとびっくりしましたねぇ」
というシミズ隊員のスターンズ・レイカーソロもかなり激しく水船になっている。後からきたセルフベイラー付きの“バトルシップ”カラカル(愛称募集中)を駆るイシカワ顧問でさえ
「いやぁ、ちょっとチキンコースに逃げちゃいました」
などと言う瀬であった。オレはよくスカウティングしてなかったコトを棚に上げ
「何でこんなトコに3級があんだよー! もーちょっとでサイド・スープレックス(※注:横方向に放り投げるプロレスワザ)食らうトコだったじゃーねーかっ!」
と一人で怒りながらフネを岸に寄せ、水抜きをしたのだった。

その後は地図がない悲しさで前方に見えた赤い橋を
「あれっ!? 国道に続く橋? もうそんなに来ちゃったの?」
と「ほとんど静水」のハズが意外と早く流れていたりで(周りの景色が開けてて川幅も広いので、流速をあまり早く感じない)距離見当を誤った我々は、
「あとちょっとみたいだから、もうメシにしよう」
と右岸に上陸。ラーメンを作り始めた。目の前を流れていく水は、そのまま沸かしてラーメンが作れそうなくらい水道の水のように澄んでいる。

そしていつものように3人で5人前のラーメンをアッという間にたいらげた我々は午後約1時30分、再びエントリー。それほど距離が残っていないと思っていた我々はトロ〜ンと流され、岸辺からの子供の呼びかけにもトロ〜ンと手を振り返すような気の抜けた状態で流されていった。しかししばらくして、どうやら先ほどの橋が我々が渡った国道への橋じゃないような気が徐々にしてくる。案の定、ちゃんと漕ぎ始めてもなかなかアウトポイントは見えない。
しかし、幸いなことに時間はまだ十分すぎるくらい余っていた。ってゆーか、そんなコトどーでもいーやってぐらいに宮川は我々をまったりさせてくれるスバラシイ川だったのだ。
水はとにかく綺麗で、イシカワ顧問がパドルを差し込んで計ると、水深が2m50cmくらいあった所でも川底の石がちゃんと見えるのだ。その驚異的な透明度はあの武儀川に勝るとも劣らぬものなのだった。さすが日本で3本の指に入る川である。しかも鮎のシーズンが終わったのか、心配していた釣り師の姿さえ4〜5人固まって見ただけで、あとはバーベキューしている人さえ10人も見ないという、またしても“貸し切り”状態の宮川だった。
「あの3級さえなきゃ、初心者連れて来たい川だねぇ」
などと話しながら下っていく。そして途中の流れの真ん中にある巨岩に上陸して昼寝したりしつつゆったりと川を下った我々が、やっと本物の、国道へ通じる橋(赤じゃなくて煤けたオレンジ色だった)の下を通過して、予定のアウトポイントに到着したのは午後約4時30分であった。
車で1時間で来れるトコだったら間違いなくホームリバーにしている所だ。今度来る時は今回の約2倍、河口までの30kmを、テント積んで川原に一泊のキャンプツーリングで来たいなぁ。
そう思わせるほどのステキな、宮川ツーリングだった。


今回の教訓: 「初めての川には地図を持って行こう。
 初めてのフネは緩い川で試そう。」