活動記録其の36・宮川編Part-2
文:隊長
2002年4月14日
チーム“鮫”、宮川でも水中歩行! 
〜集団リバーツーリングはカヌーマラソン?!〜
チーム“鮫”4月の2週目に予定されていた「初心者ウェルカムツアー」は史上初の11人という大人数でのツーリング計画となっていた(でも結局初心者はわずか2名)。

 4月14日(土)午前9時56分、オレ(隊長)は宮川の河原へ降りる細い道を探していた。今回の集合ポイントであるこの長原の河原は、宮川初ツーリング(2001年9月)の時のアウトポイントだ。しかし入り組んだ集落の狭い路地の中の道をイマイチ正確に憶えていなかったオレは、助手席のゆかまるゲスト隊員のナビに従って集落の道を走る。来るのは2回目だというのに情けない。と思ったら、ちょっと行くとなんだか見覚えのある所(
ひなびすぎたカラオケ屋)が見え、それを目印に河原へ降りられる小道をどうやら発見することができた。それにしても前回は地図も無しによく、こんなトコを見つけられたものだと改めて感心する。
 河原に着いてみると、すでに前日からここでキャンプしているうーやん隊員、Dr.水林隊員、そして初参加の平木新入隊員と、すでに到着していたアビルマン隊員が待っていた。同じく前日入りしてキャンプしていたシミズ隊員は、集落の入り口まで他のメンバーの誘導に行っているらしい(あれ? でも会わなかったぞ?)。
 あとは昨日の「サタデーナイトフィーバー部」矢作古川で鮮烈...ぢゃないけど、デビューを飾ったクリ坊新入隊員とイシカワ顧問が来るハズだった。当初の11名からはすでに、今シーズン“第2かつお丸”GUMOTEX・ヘリオス340EXを購入して初参戦予定だった“鰹”にしお隊員が怪我のためのドクターストップでキャンセルし、すでに10名となっている。と、Dr.と一緒に来ているハズの5歳の子息の姿も見えない。聞いてみると、半年ほど前の「ダイ・ハード葛原川事件(※長良川編Part−3参照)」が本気でトラウマとなってしまったようで「
川なんか行かない!」とやはり直前キャンセルしたらしい。もう9名になってしまった。
 さらに「もしや?」と思い、携帯をチェックしてみると、イシカワ顧問からドタキャンメールが来ていた。昨日の徹夜明け矢作古川ツアーが結構こたえたようで、さすがに
徹夜連発で宮川まで来る力は残っていなかったらしい。これで8名である。

 なんだかんだで減ってしまったが、それでも過去最大人数タイ記録である。そうこうするうちにクリ坊新入隊員がシミズ隊員を拾って到着。本日の参加メンバー全員が揃う。今日は車の台数のワリに人数が多いので後で回送する作戦とし、一番デカいアビルマン隊員の車だけをそこに置き、残りの車で上流のエントリーポイントへ向かう。エントリーも前回と同じ近鉄・川添駅近くの七保大橋下からである。

 河原に着いてみると、なんだか前より河原がやたら広く見える。川はずっと向こうの方だ。
「水が少ないですねー」
前回の増水時を知っているシミズ隊員が言う。オレは実は宮川に来るのは今年2回目(1月に“オープン戦”と称してラスティック伊藤隊員と来ている)で、水が少ない時も見ているため
(こんなもんかなぁ)
と思っていた。しかし後にそれは少々甘かったことを思い知ることになる...。

 11時すぎに我々は全員エントリー。オレは今回ゆかまるゲスト隊員(先日木曽川ツアーに参加した後、またロンドンに帰ってしまった九州男児・荒川隊員(♀)の後輩で、もちろん飲んだくれである)を“シャーク4号”GUMOTEX・ヘリオス380EXの前に乗せて行くため、ちょっと瀞場で練習する。ゆかまるゲスト隊員はヤル気マンマンだが、やはり最初からウマくいくはずもなく、何度も岩場への突進を繰り返す。うーむ、やはり今日も疲れそうだ...。
 シミズ隊員は先日の豊川で会得した新・必殺技“矢切の渡し”に磨きをかけるべく、さっそくみんなに披露している。“ミスター・沈”ことアビルマン隊員は昨日の矢作古川ではノー沈だったものの、相変わらずグラグラして
「疎沈するぅ〜! でも最強ー!!」
と、艇尾に
「危険」という蛍光シールをデカデカと貼り付けた“激烈最強号”ことGUMOTEX・サファリで騒いでいる。クリ坊新入隊員は今日もアビルマン隊員から譲り受けたスキップジャック、うー隊員はいつものAIRE・カラカルT、Dr.水林隊員もいつものカラカルU、そしてDr.の学生時代の同級生だという平木新入隊員もなんとAIREで、こちらはリンクスTである。今日は来ていないが、sakuzo隊員のリンクスUといい、もともとイシカワ顧問だけだったのが、徐々に「高級ダッキー」AIRE勢が増えてきているチーム“鮫”である。そーいえばsakuzo隊員とDr.、平木新入隊員の3人は同い年らしい(つまりオレより年上がなんと3人になった)。徐々に「オトナのチーム」となってきているというコトなのかも知れない。
 今日の宮川はとてもよく晴れていて、陽射しも風もとても心地よい。オレは今年初のウェットもウェダーも着ていない、単なる水着一枚とTシャツの上にPFDという、もう完全に夏と同じスタイルだ。みんなもTシャツ姿が多く、まだ4月中旬なのに
気分はもう初夏ぐらいであった。
 水量が少ない宮川は初めて来た時に比べると、やはり少々濁っていた。1月に来た時も濁っているように見えたのだが、つまり水量が少ないとこうなのだろうと納得する。しかし浅瀬が多く、結構引っかかって歩かなければならない所がある。自己申告で40kgちょっと、しかし目測では体重52kg前後のゆかまるゲスト隊員を前に乗せているせいかと思ったが、1月の時よりさらに水が少ない感じなのでそのせいだろう、というコトにしておこう。
 しばらく行くとあの、増水時には3級近くなっていた恐怖の瀬が見えてくる。しかしこの水量では大したこともなく、一つ目は少々の落ち込みがあっただけで初心者のゆかまるゲスト隊員だけは悲鳴をあげたものの、二つ目はフネが瀬の岩に引っかかって止まってしまう程度の深さと勢いのなさだ。
 ここでアビルマン隊員が岩に乗り上げ、
あわや疎沈!? という所まで傾くが、結局メンバー全員が期待の目で見守る中、無事クリアしてしまう。うーむ、残念。
 その後我がチーム“鮫”の基本、初代にして唯一の制式標準艇「スキップジャック」の試乗会が行われ、Dr.隊員とうー隊員が次々にクリ坊新入隊員に替わってスキップジャックに乗り、その元祖・お手軽カヌー感覚を味わっていた。うー隊員などは横着にも、
水の上でカラカルからスキップジャックに乗り換えるという荒技を見せる。2艇とも安定していなければできない芸当だ。

 宮川は水が少ないとはいえ、やはり素晴らしい川だ。何がいいってロケーションが最高である。前回かなり気に入った、日本で三本の指に入るという水質は、今日は減水しているためかイマイチだが、天気が良いときの宮川にはこのロケーションがあるのだ。両側は山・山・山である。人口構造物がほとんどなく、当然のように人の姿もほとんど見ない。またしても気分は「貸し切り」なのだ。
 と、シミズ隊員たちが右岸に何か白っぽいカタマリを発見し、近づいていく。するとそれは空き缶をギッシリ詰め込んだゴミ袋だった。
「なんでこんなものが!?」
また昨日(矢作古川)と同じセリフである。 
 まったく、なぜこんなキレイな所にわざわざゴミを捨てにくるんだ? よほど根性の曲がったヤツの犯行に違いない。崖の上に道路が無いところなので、おそらく上流の橋の上からでも投げ込まれたものが流れ着いたのだろう。また昨日に続いて不愉快な気分になる。
 しかもそれひとつだけかと思っていたら、下っていくに従ってまたひとつ、またあそこにもと、結局同一人物が捨てたと思われるペットボトルなどがギッシリ入ったゴミ袋を3つも発見してしまう。
 いつもなら不愉快な気分のまま通過するのだが、今日はフネも多く積載量にも余裕があるのと、宮川の美しさの中のゴミがやたら目立つためシミズ隊員が見かねて拾い、Dr.と平木新入隊員が積んでいくことになる。
 なんだかキレイな川に来ると、環境にも優しい気分になるのは本当の所だ。学校とかでやってる「自然学習」にはキャンプファィヤーや飯ごう炊さんなんかより、カヌーツーリングのが向いてるような気がする。

 その後も時に引っかかり、時に歩き、後はまったり漕ぎ続けた(ほとんど静水ばかりなので漕ぎ続けないとホントに進まない)我々は14時少し前、支流・注連指川の流れ込みが作った中洲に上陸し、ランチタイムとする。

 今日の「給食当番」はアビルマン隊員である。数日前からなんだかヤケに頭を悩ませ、
「宮川でおフランスざます」とタイトルを付けるなどウケを狙っていたらしいが、結局今日のメニューは「くりいむしちゅー」となったようだ。それと先日の気田川でアビルマン隊員のお気に入りとなった「たき火で焙ったフランスパン」のセットである。そこにオレが白ワインを一ビン提供し、宮川の河原は微妙に「おフランスな食卓」へと変貌していた。
 しかし残念ながら近くに牧場か鶏舎でもあるのか風向きによっては、いわゆるひとつの「田舎の香水」が漂ってきてしまう所が「おフランス」と言っても、「牧歌的な
田舎の方のフランス」って感じがしてしまうのがこれまた“鮫”らしいといえば“鮫”らしいのだった。
 アビルマン隊員特製の「くりいむしちゅー」は、牛乳の他にとろけるチーズを入れ、更にクリーミーにしてある所がポイントらしい。確かにかなりウマい。やはり「給食当番」制にして良かった。次回は一体何が食べられるのだろうと、早くも来週の根尾川で「賄い係」となったDr.隊員のメニューが楽しみになる。
 パンを切って河原で拾った木の枝に刺し、たき火で焙って食べる。
 
ウマイ! やはりパンは遠赤外線で焙って食べるのが最高のよーな気がする。しかしワインは8人もいるため、アッという間に無くなってしまい、少々物足りない。酒が無いとエンジンが掛からないゆかまるゲスト隊員などは後で
「酒が足りなくてノリきれなかった」
とこぼしていたくらいである。しまった。こやつはあの九州男児・荒川隊員(♀)の後輩だった。やはりワインだけでなく、ビールも(500ml・5本くらい)持ってきておくべきであったと少し後悔する。

 1時間30分ほどランチタイムに費やした我々は再びエントリー。今度はうー隊員がまた櫛田川に続いてアビルマン隊員のサファリに乗ってみるなど、カヌーとっかえ試乗会が続く。どうやらうー隊員は本気で“うーやん2号”としてサファリの購入を考え始めているらしい。どうもそろそろ、安定しすぎのカラカルでは飽き足らなくなってきたみたいだ。さすが超アクティブなデンジャラス“チャレンジャー”うー隊員である。
 それにしても今日はとにかく水が少ない。やたら浅瀬で止まっては歩くことが多い。いつだったかの「員弁川・地獄の水中歩行」に迫りそうな勢いだ。意外なことに“鮫”的にはベテランのシミズ隊員が
「もう疲れた〜! 宮川はこれを最後に
引退します〜!
とか言い出している。そういえば後半には必殺“矢切の渡し”が出なくなっている。
 と、ほとんどまったく何も流れがなく風もない、静水中の静水、鏡のような水面をした静かな瀞場に
いきなり響く水音!
 振り返るとアビルマン隊員が疎沈していた。
 やはり“ミスター・沈”である。何をどーやっても沈などしようもない、減水している宮川の、しかもド静水の瀞場である。本人曰く、
「サイストラップ付けて揺すってみたら、ああなったんス」
と、疎沈ではなく、豊川の時のオレと同じ“自爆ロール”であることを強調している。
 ま、でも
撃沈・疎沈・小沈・降り沈・乗り沈に加え、ついに自爆ロールまでしてしまうとは、さすが「沈のデパート」いや、「沈の総合商社」いやいや「沈の国際秘宝館」(ここは三重県だし)というべきだろうか。さすが“ミスター・沈”である。その長島茂雄も真っ青のカリスマ沈スター・アビルマン隊員に、みんなが敬意と憐れみの念を抱いてしまったことなど、もちろん言うまでもない。

 後半はとにかくみんな口数が減り、とにかくみんな黙々と漕いでいた。シミズ隊員が遅れていく。振り返って見ると、Dr.隊員と二人で岸に寄せ、エアーを再注入している。どうやら愛艇“飛騨之守2”スターンズ・レイカーソロがまたしても不調のようだ。
 再出発するが、また空気が抜けているらしい。結局Dr.のカラカルUに二人乗りし、“飛騨之守2”はロープで繋いで曳航していくことになった。オレ&ゆかまるゲスト隊員とDr.&シミズ隊員という2人艇2人乗りが2艇という、昨年の大井川以来の、“鮫”的には珍しい絵ヅラだ。

 そして日も暮れかかった頃、やっと我々はもとの長原の河原に到着。ぐったり疲れた一日のツアーを終えたのだった。お疲れさまでした〜。ってゆーか、土曜のサタデーナイトフィーバー部と連発で二日続けて漕ぐというのはやはりキツかった...。やっぱり週一回がいーなーなどと思ってしまう、軟弱なオレなのだった。

今回の教訓: 水量が少なかったら距離を縮めよう