活動記録其の57・宮川編Part-3
文:隊長
2002年9月8日
増水の宮川で爽快ツーリング!
〜3年ぶりの参加・ハマちゃんゲスト隊員はスキップジャックで増水した川をクリアできたのか!?〜
  単身オーストラリアを一年も放浪してきた、たくましい女がいる。ほぼ野生のカンだけで生きていると思われる、ある意味サバイバーな女である。それがハマちゃんゲスト隊員なのだ。

 1999年夏、“鮫”の原型となったカヌーチームにハマちゃんゲスト隊員は一度参加している。といってもツアーではなく、同じ所をグルグル回るだけだったが...。しかしその時は運悪く風が強く、その影響をモロに受けるインフレータブルカヤック(特にスキップジャックは軽くて表面積が広いので、とっても風の抵抗を受けやすい)が初期メンバーたちを乗せてどんどん岸とは反対の風下に流されていく中、ひとり
逆風を突いて漕ぎ戻ってきたのがハマちゃんゲスト隊員なのだ。カヌーなんてまったく初めてで、パドルの使い方さえ誰にも教わっていないのに、それはほぼ快挙といえた。その野性的たくましさから将来を嘱望されたが、いきなりオーストラリアに旅立ってしまったハマちゃんゲスト隊員。
 ふらっと帰ってきたかと思えば今度はまた徹夜のバイト明けでカヌーに来るとか言い出して、今回本当に来てしまったのだった。

 しかし早朝7時、名古屋・金山駅で土居隊員に拾われたハマちゃんゲスト隊員は、車に乗り込むやいなや、
いきなり爆睡モードに入ってしまい、現地に着いても眠り続け、オレがマリちゃん隊員を乗せて現地に到着した時も眠り続け、ためごろう隊員と合流した後もまだ眠っていた。アウトポイントで置いていく車を決めて着替えを始める段階でやっと起き出してきたハマちゃんゲスト隊員は、寝ぼけ眼マナコでやっぱり川をナメきっていた。なぜなら

@水着などの用意は全くしてきておらず、
シャツとジーパンで漕ぐつもりだった。

A水中用の靴を持ってきていないばかりか、履いているのはよりよって
ハイヒールである。

土居隊員があきれて、
「そんな格好でやんのか? 水に濡れるたらシャツが透けるっちゅーねん!」
と、
アビルマン隊員がいたら大喜びしそうなコトを言っている。仕方ないのでオレが予備に持ってきていたナイロンの短パンを貸すことにする。マリちゃん隊員も予備に持ってきていたナイロンの長袖シャツを貸してくれた。しかし靴だけはどうにもならない。
「大丈夫です!」
と何の根拠もなく明るく言い放つあたりが野生のたくましさなのだろうか。いや、
単に超アバウトなだけ、という話もあるが(←むしろそれが正解)。

 てなコトでいつもの集合場所・中川大橋の下を今日はアウトポイントとし、上流のこれまたいつものエントリーポイント・七保大橋へ向かう。今日はオレ、土居隊員、ためごろう隊員、マリちゃん隊員、そしてハマちゃんゲスト隊員という5名でのツアーだ。
 午前約10時40分、我々は宮川にエントリーした。水量は初めて来た時よりさらに多く、春先のライニングダウンしまくったカヌーマラソン大会の時とはもちろん比ぶるべくもない。今日は快調なスピードで下れそうだ。しかし増水しすぎているためか、水質はイマイチ濁っている。それだけが引っ掛かる所だが、それ以外は天気・ロケーションとも最高の部類に入る。
 ここで今回のフネだが、オレはちょうど1年前の9月、この宮川でデビューを飾った“シャーク4号”GUMOTEX・ヘリオス380EXである。そして土居隊員はすでに3年目に突入した愛艇、同じくGUMOTEXのヘリオス340、ためごろう隊員はスターンズ・リバーランナー、マリちゃん隊員はGUMOTEXジュニア、ハマちゃんゲスト隊員はスキップジャックという布陣である。
 スタート直後の所にいきなりちょっとした瀬が出来ていた。クラスで言えば1級くらいなのだが、流れが凄い勢いで岸壁に当たっているため、
いきなりコワイ。なんとかクリアしたがもう結構浸水してしまった。でもやはり、水量が多い川はそれだけで面白いものだ。
 先週気田川で1年ぶりの復活を遂げた土居隊員も、ビビリながらも無事に抜けてきた。続いてマリちゃん隊員、ためごろう隊員、ハマちゃんゲスト隊員と続く。マリちゃん隊員は“ラブカヌー”GUMOTEX・ジュニアで2度目のツアー参戦だが、もうかなり慣れた様子で、結構な瀬でもちゃんと普通に抜けてくる。たいしたもんだ。  
 ためごろう隊員もスターンズ・リバーランナーにかなり慣れたようで普通に越えてきた。問題は3年ぶりのハマちゃんゲスト隊員である。  しかしスキップジャックの安定性とナチュラルな野生のたくましさで、なんてこともなく瀬を越えてきたハマちゃんゲスト隊員に、オレは改めて感心していた。
 
 今日の宮川はとにかく水量が多い。春先のツアーで擦りまくり、止まりまくって、シミズ隊員をして
「宮川卒業!!」
と言わしめた
あの水中歩行大会とはエライ違いだ。しかし水量が多すぎるせいか、水質は濁りまくっていて、碧がかっている。コイツを“笹濁り”と言うのだろうか? 透明度はまったくといってよいほど無い。それだけが残念だが、あとは晴天・ロケーションとも、しつこいようだが、とにかく最高である。そして漕がなくてもどんどん進んでいくのだ。今日はホントに早く着きそうな気がする。ちょっと行くと人工物はほとんど見えなくなり、川の流れる音とタマにする鳥の声以外何も聞こえない、ほぼ完全静寂の世界に我々は突入していた。人が入って来られそうな所でさえ、釣り師の姿すらもまったく見ない。

 我々はただまったりと漕いでいた。宮川のこのコースはもともと超・初心者でも楽々行けるコースだ。しかし一カ所だけ注意を要するポイントがある。そう、昨年、初ツアーの時にオレをヒヤリとさせ、イシカワ顧問に思わずチキンコースを選ばせた、あの3級である。今日はあの時よりも水量が多く、エントリーポイントの瀬がワンランク、グレードを上げていたことを考えるとちょっと空恐ろしい感じもする。
 記憶によれば、あの瀬は結構斜度がある所でまっすぐになっている流れの途中に大岩があり、それが大きなウェーブと返し波を作っていたハズだ。だが、構造的に一定以上水量が増えてしまえばツブれてしまっていても不思議ではないと思われる。
 
 はたしてそれは
かなり遠くからもう聞こえてきた。後を振り返ると土居隊員とマリちゃん隊員がしゃべっているのか、漕がずに流されているのが見えた。いつの間にかかなり離れている。ためごろう隊員も同じくらい離れている。大声で瀬の事を教えようとするが、その瀬の音にかき消されているのか聞こえた様子ではない。そうこうするうちに瀬は近づいてくる。
 一応出発前にこの瀬の事はしっかりと言い含めてあるし、ポーテージコースが取れなかったらさっさと中州に上がって歩くようにも伝えてあった。ハマちゃんゲスト隊員は近くに居たので大事を取って右岸側にできている側流(といっても乗ったまま通れるほどの水深はない)からライニングダウンするように指示して、オレは瀬の内側のコースを回ろうと試みる。が、勢いよく流れている今日の宮川はオレの狙い通りのコースをそうやすやすとは行かせてくれなかった。
 「ムッ! ムムムッ!」
微妙に瀬に近づいて行ってしまうシャーク4号。これでは
昨年の二の舞か!? と思われたが、あらかじめ気づいているのと、フイに気づくのとでは回避行動を始めるタイミングが全然違うのだ。とりあえず落ち込みのど真ん中は避けられたが、ちょっとカスる。
 しかし通過しながら真横から見てみると、ステキなことに脅威の瀬は増水で落差がツブれ、3級どころかちょっとしたウェーブに
成り下がっていた。返し波もあるが、ストッパーのようにはなっていない。
(くそー! あれなら真正面から突っ込めば良かった!)
と、思うが後の祭りである。だが、ここはこの次の2段目の落ち込みと、岩肌にブツかった水流の返し波が横からブチかましてくる瀬の方がヤバいのだ。見ると前方のそれは1段目のと同じく落差はツブれているが、岩肌からの返し波が大きく、渦のようなホールが出来ていた。
「うぉっ!」
と思うがなんとかクリア。正面から突っ込んだのでかなり水船になってしまった。
 エディーに入って後を見るとハマちゃんゲスト隊員が右岸沿いをライニングダウンしている。そのはるか後方には3人の姿が見え、やっと瀬に気づいて漕ぎ出したようだった。

 しばらくして土居隊員が突入してきた。一つ目の瀬を越え、岸壁の作り出す渦の瀬の方へ向かう。しかしカスっただけで無事に抜けてきた。でもかなり水船になっているようだ。
 続いてマリちゃん隊員の番だ。一つ目の瀬で大きくバウンドし、一瞬終わったか!? と思わせるが、なんとクリア。そして次の岸壁の渦はうまくかわして来た。
 二人とも無事であった。特にマリちゃん隊員は245cmの小舟、GUMOTEX・ジュニアである。度胸一発と言うべきか無謀というべきか、チーム“鮫”には魚へんに危ういと書いて
“鮠”(はや)と読む女性隊員がいるが、“金魚”ことマリちゃん隊員も同様のコードネームに化ける日も近いのかも知れない。
 最後に今回のフネの中では最高の戦闘力を誇るスターンズ・リバーランナーを駆るためごろう隊員が突入してくる。一つ目の瀬は余裕でクリア。しかしその後左岸寄りに行きすぎてしまい、二つ目の渦の瀬には
モロに突っ込んでしまった。ためごろう隊員は返し波を食らった瞬間、グラリと傾き腹側のグレーの部分を見せる! が、なんとか立て直してクリアしてきたのだった。
 
 その後は再びまったりモードでトロトロ漕ぐ時間が流れていった。午後約12時ちょっと過ぎ、ランチポイントを探していた我々はいつもの所よりもちょっと上流だが、このヘンでメシを食おうと、支流の流れ込みがある右岸の小さな川原にフネを付けた。
 しかし果たしてそれは、まったくもっていつものポイントなのだった。なんと、見ず知らずの所と思った小さな川原は注連指川の流れ込みが作ったいつもの川原で、大きな支流だなーと思ったのは、あの小さくて、前回は枯れていた注連指川そのものだったのだ。
 今日は先週の台風がこの辺りの山に降らせた雨の影響でそこらじゅうから水が出ているため、いつもとは違った水量になっているのだ。おかげでいつもの大きな川原は小さく、小さな川は大きくなっている。そんなことに気が付くのに数分かかってしまった。まるで
猿の惑星状態である。
 しかしオレ以外のみんなは宮川自体初めてなので無邪気に喜んでいる。結局昼食のパスタを茹でるためのお湯が沸くまでの間、注連指川の流れ込みから入って宮川本流に合流するボディラフティングで遊んでしまう我々なのだった。  
 土居隊員とマリちゃん隊員は調子に乗って本流の中に完全に入り込んでしまい、戻ってくるのに四苦八苦していた。
あほである。今日の宮川はとっても良く流れているのだ。適当な所で止めておかないと本当にそのままどんどん行っちゃうのだ。
 と、二人を笑っている間にお湯は沸騰し、オレはパスタを茹で始めた。今日はドタキャン者が続出したため、用意したパスタをすべて茹でると余りそうなので、7割方で止めておくことにする。味付けは永谷園の「梅干茶漬」を振りかけて和えるだけの簡単な和風梅パスタだ。それとボイルドソーセージ2袋が今日のメニューである。
 7割方にしたものの、本来8人分のつもりで用意したものを5人で食べるのはちょっとムリがあったようだ。そしてドタキャン者の中に
パスタクレイジーことイシカワ顧問が入っていたことが大きく影響していた。
 イシカワ顧問の場合はパスタなら2.5人前は必要なのを知っていたオレは、その分まで計算して多めに用意してしまっていた。ドカ食いが得意なハズのハマちゃんゲスト隊員も言うほど食べない。  
 結果、マリちゃん隊員がダイエット中なのか
0.2人前しか食べなかったこともあって、哀れ梅パスタはほぼ半分近くが川原の土中バクテリアの栄養分となる運命を辿ることとなってしまったのだった。

 パスタとボイルドソーセージで超満腹となった我々はその後しばらくして再びエントリーした。しかし相変わらずたいした瀬はなく、しかし流れが速いのでずんずん進んでいく。
 ところが、もうあと3〜4km? という後半にさしかかった頃、西の空から雲が厚くなり、さらにしばらくして雷が鳴り始める。音はまだ遠いものの、少々心配になる。  
 しかしビビらすだけビビらせといて、30分もしないうちに雷は音を潜めて去っていってしまった。夏の雷は通過するだけなのだろうか。さて、これで後はゴールまで漕ぐのみと思った我々の前に、流れが二股に分かれている所が現れた。オレは瀬の音が大きく聞こえる右岸側を、残りのメンバーは左岸側を進んでいった。オレのとったコースはそこそこな瀬があって結構楽しめた。
 が、左岸からの流れが合流した後に、前方に見覚えのない巨大なウェーブが見えるではないか?! 
「アレッ!? こんなのあったっけ???」
と思うが、おおかたいつもはショポイ瀬だったのが、この増水で
2.5級に臨時昇格したのだろう。そんなハンパな成金のような瀬に負けるわけにはいかないのだ。例によってど真ん中に突っ込むオレ&シャーク4号。大きなうねりのようなそのウェーブは、一瞬フネをグッと持ち上げ、ドン! と落っことす。落ちた瞬間にドバァと水が入ってきてバランスを崩しそうになるがなんとか耐えてクリアした。
「うう、しかしちょっとヤバかった。ヒヤッとしたー」
と、オレが一人反省会をしていると、左岸から合流してきたハマちゃんゲスト隊員が瀬を掠めながらもウェーブに翻弄されて
もうちょいで! という所まで傾きながらもクリアしてくるのが見えた。さすが野生のカンを持つ女である。
 続いてマリちゃん隊員だが、これまた
終わったか!? と思わせるほどのバウンドをしながら無事にクリアしてきた。
 土居隊員はど真ん中に入ってしまい、ヘリオスをヒネられたように見えたが
ヒヤヒヤクリア。ためごろう隊員も瀬のセンターをかわして無事に通過してきた。なんだかんだで、みんななんとかするモンである。
 
 その後はちょっと曇り気味の空ながらも、途中の岩場に登って一服&またボディラフティングを楽しんだり飛び込んだりして遊び、午後約4時半、我々は中川大橋の下でアウトした。
 結局、増水の宮川をスキップジャックにハイヒール履きで乗り、ノー沈で普通にクリアしてしまったハマちゃんゲスト隊員。やはり世界を単身放浪するサバイバルパワーはカヌーの世界にも通用するのだろうか。ってゆーか、なんだかウチのチームに参加する女のコってフツーのコいないよね? などと誰にと言うわけではないが同意を求めてしまいたくなるオレなのだった。








今回の教訓: 「ボディラフティングは流れの早い本流に入る前にやめよう。
 じゃないとそのまま行くことになる。」