活動記録其の11・武儀川編
文:隊長
2001年6月3日
員弁川+牧田川×2=武儀川!? チーム“鮫”武儀川の心地よさにとろける!!
〜隊長新型艇シャーク3号(スターンズ・リバーランナー)遂にデビュー!〜
今回のMAP

 初夏を思わせるカラリとした晴天に恵まれた6月3日(日)、チーム“鮫”2001年2ndステージは、岐阜県・長良川の支流「武儀川(むぎがわ)」で開幕した。参加メンバーはオレ(隊長)とイシカワ顧問、そしてラスティック伊藤隊員という、いつかの“癒し系・牧田川”の時と同じメンバーである。

 イシカワ顧問の入念な事前スカウティングのおかげで、初めての川にも関わらず今回はコースはおろかエントリーポイント、アウトポイントまでがしっかりと決まっていた。そして現地に着くや、我々はテキパキと準備を整え、すかさず川へ! ...と、それでもスムーズに行かないのがチーム“鮫”なのである。エントリーポイントの役場下、支流・神崎川の河原ではイシカワ顧問が、自身初乗艇となる“タンデムスキップジャック”「K2 CHALLENGER」の空気入れに四苦八苦していた。前回オレが借りた時もそーだったが、どーしても空気がスムーズに入らない。素直じゃないところはスキップジャックと大違いである。そこへ持ってきてさらにイシカワ顧問は、最近購入したコールマンの充電式電動ポンプで、西川きよしのキャッチフレーズの如く、コツコツ空気を入れようとしていた。しかしハッキリ言って電動ポンプはかなりオハナシにならない文明の利器なのであった。一応、空気は入るのだが、とにかく「遅い」のである。なおかつ「ツメが甘い」。どうやっても8割方しか空気が入らず、川下りに必要な浮力と剛性を確保出来るところまではどうやらパワーが足りないようだ。
「やっぱ電動ポンプなんぞに頼っちゃー、イカンよ、ウン」などと、したり顔で説教するオレの車にはその時、別のタイプの電動ポンプがシッカリと積まれていたことは言うまでもない(今回は電池を買い忘れ、使用できなかった)。
 結局いつもの足踏み式ポンプでチューブが変形するほどパンパンに空気を入れ、13:00を少し過ぎた頃、なんとか出発できることになった。ところで今回、オレのフネは遂に超・最新型艇(輸入されてくるのを待って購入した)、スターンズ・リバーランナーとなっていた。これこそが待望の“シャーク3号”である。チーム“鮫”にやっと2隻目のセルフベイラー付きのバトルシップがデビューしたのだ。今回はその試乗も兼ねての武儀川遠征であった。
 新艇の乗り心地ははっきり言ってかなりイイ。喫水も浅いが、インフレータブル特有の風の抵抗を受けやすい水面上の部分が、ツチノコの様に(って、見たこと無いけど)平たい形をしている。これならば、風が強敵と考えられている「浜名湖横断ツアー」でも強力な武器となるに違いない。また、サイストラップが標準装備されているのと、エアー注入式の浮力体を兼ねたフットブレイスのおかげでフネとの一体感はバツグンだ。思わず西表・仲間川で乗ったポリ艇の感触を思い出す。しかしあまりに安定しているため、万が一ひっくり返ったとしてもロールで起きあがるのはちょっと無理な気がした(もともとロールなんて出来ないけど)。
 そして横幅が結構あるのでスピードは期待できそうになかったが、フットブレイスのせいか非常にパワフルに漕ぐことができて、意外と速い。ひょっとしたらシャーク2号(GUMOTEX.Jr)よりスピード出るかも...。これからフネ買う人には超おすすめである。
 エントリー後すぐにある古いコンクリートで出来た橋ゲタの残骸横を水面を滑るようにすり抜けると、本来の武儀川との合流ポイントに向かう。そこから先は両側をうっそうとした森が覆い、木漏れ日が鏡のような水面に落ち、透き通った水の下の砂に不思議な影を落とす様がなんともいえず美しい。まさに“秘境”であった。いきなり全員漕ぐのをやめてボケーッと見とれてしまう。
 水の下は、3〜4mはあろうかというかなり深いところでも見通せるほど素晴らしい透明度で、4・50cmはあろうかという鯉と思われる魚影がすぅーっと泳いで行くのがあちこちに見える。その時我々は透明な水の上に“ぽわんと浮いている”ことを実感していた。まさに大自然、いや、何か日本昔話か「もののけ姫」の宮崎駿ワールドの中にタイムスリップして紛れ込んでしまったかのような、神秘的な世界が眼前に展開していた。

「うわぁ、綺麗...」
ホントにそれ以外、言葉が見つからないようなロケーションである。武儀川はタマにせいぜい1級程度と思われる瀬があるくらいで、あとはあの“癒し系”牧田川よりも豊富な水量と優しさ、そして員弁川の上流部分に見られる“ゆったりとした秘境ムード”の両方を併せ持つ、素晴らしい川だった。空気までが森の精気を含んでいるかのようにすがすがしく感じる。水質はイシカワ顧問によると「根尾川と同等かそれ以上」という清冽さである。時折あるたまり場では、水は深い碧(みどり)色をしており、吸い込まれてしまいそうな気がするほど神々しい誘惑の色に見えた。
「川の主なんてのがいるなら、こんな所に棲んでいるんだろうなぁ」
たまり場にさしかかる度にそんな気がする。そんなところが川のあちこちにあるのだ。流れに身を任せながらずっと下を見ていると、水深2mぐらいの所を木の葉がすぅーっと、フネと同じ速度で流れて行くのが見えた。初めて心の深い所で川との一体感を感じたような気がした。
水はあくまでも澄み、所により少々のパワーはあるものの、水中の石に当たって盛り上がる水面の波までもが何やら水アメのように「つるん」とした感じで、白く泡だったりしていない流れが随所にある。それでいてキラキラ光って盛り上がる水面の、下の川底がすべて手を伸ばせば普通にさわれそうなぐらいハッキリと見える。その透明な波をこれまた「つるん」と越えたときの浮遊感がたまらないのだ。オレは新艇シャーク3号の乗り心地の良さとこの川の心地よさで、顔も弛み、とろけそうになっていた。
 イシカワ顧問はといえば当初、K2 CHALLENGERの左右の安定の悪さにこれまた四苦八苦していたが、座り位置をかなり前に設定したところいくぶん安定したようで、やはり弛みきった顔で「とろ〜ん」と漕いでいる。ラスティック伊藤隊員はエントリー後数分も経たないうちに船底に穴が開いたらしく、「ウォータベッドになってきちゃいました」と一時は困惑したものの結局は彼の顔もやはり弛み、ニヤケきっていた。
 はたから見るとかなり危険な図である。快楽にどっぷり浸かってとろ〜んとした顔の男が3人、黄色いフネに乗って上流からどんぶらこどんぶらこと流されてきているのである。我々は桃太郎と同じ様に流されていたワケだが、川で洗濯しているおばあさんが見たら腰を抜かして思わず念仏を唱えてしまいそうな漂流物と化していたところが大きな違いだったに違いない。

そして今回のランチタイムメニューは「水餃子」である。肉餃子・ニラ餃子・海老餃子とりまぜて約35個をトリガラスープが香る鍋の中でグツグツ煮て、ビールを片手に食べる。うますぎる! 余計にとろ〜んとしてきてしまった。地元の子供たちがやってきてすぐそばで水遊びを始めたが、泥がほとんどないせいで水があんまり濁らない。あまりまったりしすぎると後が大変なので早めに出発する。この後には本日最大の難関「魚道ポーテージ」が待っているのだ。

 今回のコースの中程には落差5〜6mの堰堤があり、そこはどうしてもポーテージしなければならない。結構道からは落差があり、登ったり下りたりが容易なところではないのだ。しかしスカウティング時、イシカワ顧問は堰堤の脇にある階段状の魚道に気づいていた。
「ひとつひとつの落差は50cmぐらいですし、それぞれそんなに深くないですから何とかフネ担いで下りましょう」というのが彼の意見だった。それはいーんだけど、モンダイの魚道に入るのには少々勇気が必要であった。何しろ草むらの中に突然ポカンとトンネルが口を開けており、そこが魚道の入り口なのだった。しかも入り口には蜘蛛の巣が張り巡らされている。フネを曳いて未知のトンネルに入る我々。なんかヘンな気分だ。そしてトンネルを抜けると結構流れのキツイ、階段状の棚が15・6段続いていた。腰まで水に浸かりながら石とブロックでゴツゴツしたところをフネを曳いて歩く。先頭を行ったイシカワ顧問は一番下までちゃんと下りて何とかフネに乗り込んだようだが、オレは途中の折り返しの所でズルをして魚道の壁の上にフネを引っ張り上げると、スグ下の川に落として飛び込むことにした。フネを投げる。飛び込む...のに躊躇しているとフネはスルスルと流されていく。オレは意を決して浅い方に飛び降りると水中を歩き、フネをつかまえ、飛び乗った。

 その後も武儀川は美しい水を惜しげもなく流し、我々のフネを運んでくれた。我々は相変わらず「つるん」とした透明な水の上を滑るように進んで行った。途中の河原ではバーベキューをしていた大学生風(聞いたら社会人だった)の7〜8人のパーティに出会う。なぜかイシカワ顧問は女のコに「ゼリー食べませんか?」と聞かれて素直に「下さい」といって貰っていた(オレもおすそわけしてもらった)。なんだか我々はいつもより素直になっていた。しばらく先の河原では、イヌの散歩をしていたオジサンに「こんにちはー」と声をかけるとニコッと笑って「キモチ良さそうだねぇ」と言われる。この小さな触れ合いもまたキモチ良かった。時の経つのも忘れかけた我々が全行程わずか8kmを終えて、アウトポイントに上がったのはもう18:00を過ぎた頃だった。
武儀川は、今まで我々が行った色々な川のいいところをすべて持っているといっても過言ではない。特に、荒ぶる瀬ではなく「のんびりゆったり・お気楽☆リバーツーリング」を求め、コンセプトとする我がチーム“鮫”にとっては「至高の川」といえるのかもしれない。あー、キモチ良かった...。

今回の教訓: 「この川の良さは、行ったヤツにしかわからない。最高でした!」