活動記録其の39・武儀川編part−2
文:隊長
2002年4月29日
GW第2弾! “癒し系”武儀川に倒れる木! 響く水音!? 
チーム“鮫”とろけるどころか4.5沈!!
〜そこに“ミスター・沈”の姿は!?〜
名古屋カヌーチーム“鮫”ゴールデンウィーク・ツアー第2弾は岐阜県・長良川の支流、超“癒し系”武儀川ツアーである。天候は晴れ時々曇り。約一年ぶりに対面する清流に向けて、オレはワクワクしていた。

 岐阜県・美山町美山の武儀川に掛かる橋のたもと、タイムリーの駐車場に着いたのは予定より早い約午前9時50分だった。ここが今日の集合場所なのだが、かなり前に着いているハズのアビルマン隊員の姿は無く、うー隊員だけが駐車場に立っていた。イシカワ顧問は
例によって遅刻。連絡によると、まだ一宮辺りを走っているらしい。オレと一緒に来た、先日の宮川以来2回目の参加となる、ゆかまる隊員を含めてもまだ3人しか揃っていない。とりあえず3人で武儀川べりを歩いてスカウティングする。前回より少し水が少ないような気がした。ちょっと心配になる。
 一回りして駐車場に戻ってくると、
鯉の柄の渋い色のアロハシャツを来たアビルマン隊員が、どこから現れたのか突っ立っていた。そしてその隣には細身の人が立っている。それがホームページを見て参加を希望してきた自称“中年鮫”シバタゲスト隊員だった。アビルマン隊員のアロハを見て
「“鮫”の方ですか?」
と声を掛けたらしい。アロハ着てりゃわかるってのが、チーム“鮫”のスゴイ所なのだ。シバタゲスト隊員とおぼしき人はオレたちが到着した時にすでに居たのだが、オレもうー隊員もアロハを着ていたのにも関わらず声を掛けてもらえなかったのは、どー見てもカヤッカーではなく、ただのチンピラに見えたからに違いない(←って自覚しとんのかい!)。
 いよいよイシカワ顧問待ちとなる。2週間前の宮川では
「酒が足らなくてノリ切れなかった」
などとほざいていたゆかまる隊員には、この段階でピューターに入った
テキーラを渡しておくことにする。するとゆかまる隊員は景気づけのつもりか、いきなりタイムリーの駐車場で飲み始めてしまうのだった。しかも
「プハー! このお酒辛いー。でも、おいし☆」
などとゴキゲンなのだ。もう顔が少し赤くなってきている。これでもホントに女子大生なのだろうか...。

 シバタゲスト隊員に根ほり葉ほり質問などしつつ、約50分(←長っ!)ほど駐車場で時間をツブした頃、やっと本日の給食当番・イシカワ顧問が到着。今日はこの6名である。
 しかし遅れてきたイシカワ顧問だが、この後夕方から仕事があるため、早く帰らなければならないという。仕方なくコース途中の堰堤前の河原で昼食のバーベキューをし、イシカワ顧問はそこで上がるという計画にする。
 タイムリーそばの公園に車を2台置き、バーベキューセットを積んだイシカワ顧問の車を途中の河原に置いた我々は一路、前回と同じく美山町役場を目指す。エントリーはその下の、正確にはまだ「神崎川」の河原からである。
 「神崎川」と、以前入隊前のうー隊員たちがさんざんな目に遭った「葛原川」が合流する所からが「武儀川」である。河原に荷物を下ろしてセットアップを開始する我々。今回はゆかまる隊員も一人艇にチャレンジするため6人で6艇という、意外と大船団である。
 河原でバーベキューをしていた人たちに見送られ約11時30分、我々はエントリーした。

 スタート直後のなんでもない瀬で、きゃあきゃあ騒ぐゆかまる隊員。スキップジャックでの一人艇初体験は安定感バツグンで安心なハズなのだが、やっぱりフラついてて、見てるとイマイチ不安だ。
 イシカワ顧問は前回ここではCHALLENGER K2に乗っていたため、本来の愛艇カラカルで来るのは今回が初めてだ。うー隊員は上流の葛原川でスーパーリンクスをザックリやって以来で、今日はカラカルだが、最初はいまひとつ不安な感じの表情を隠せてはいなかった。
 オレはもしものコト(ゆかまる隊員のスキップジャックのパンク)を考えて二人乗りできる“シャーク4号”GUMOTEX・ヘリオス380である。と、シバタゲスト隊員も4年前に買って
千葉・亀山湖や実家のある北海道の釧路川を漕破してきたというGUMOTEX・ヘリオス380である。オレのとは色が違うのと、土居隊員やイチロー隊員と同じラックスタイプであるという点が異なっているだけだ。ヘリオスの、しかも380が2隻というのは“鮫”的には珍しいことで、チーム・ヘリオスの結成もそう遠くないことかもしれないと勝手に思う。そして最後に“ミスター・沈”ことアビルマン隊員は、今日も“激烈最強号”GUMOTEX・サファリで調子こいている。どうせ今日もこの素敵な“癒し系”武儀川で疎沈の笑いを提供してくれることになっているのだ。

 武儀川はやはり超・癒し系である。スタート後しばらくは森の中のようなロケーションが続く。まさにダウンリバー森林浴って感じなのだ。森の精気を肺いっぱいに吸うと体が生き返るような気がする(←って、今まで死んでたのか!?)
 緩く流れるこの川は大した瀬もなく、秘境ツーリングのような感覚をお手軽に味わえるのだ。
(ああ、さいこー)
と、オレがいつものようにトロけ始めたその時だった。前方に紫色の花をたくさんつけた藤の木が、左岸から倒れかかっている所が! イシカワ顧問、アビルマン隊員、うー隊員とキレイに右にかわして行ったが、
スキップジャックに乗ってまだ10分と経っていない酔いどれ女子大生・ゆかまる隊員には、それをかわせるだけの技術(笑)は備わっていなかった。流れに乗って為すすべなく藤の倒木に突っ込むゆかまる隊員&スキップジャック! 横腹から藤の枝に激突し、そのまま流れに押されて内側に傾き、沈。
「あ〜あ」
と思ったのも束の間、その後から行ったシバタゲスト隊員も藤の木をよけきれず、コアラのように枝にしがみついているゆかまる隊員の背中にヘリオスで突っ込んでしまう!
(ドスッ!)
「ぐえっ!」

とゆかまる隊員は呻いたそうだが、そんなことは聞こえなかったオレは、助けようと近づく。しかし流れは意外と速く、回避行動どころか近づこうとしたオレまでもが、2艇が玉突き事故を起こしている所に横から突っ込んでしまった(←人が沈した所を喜んで写真撮ったりしてるからだって話もある)。
(ドスッ!)
「ぐええっ! ブクブクブク...」

と、この時もゆかまる隊員はヘリオス2つ分の重みで水の中に沈められつつ、呻いていた(らしい)。
 シバタゲスト隊員はフネの上からゆかまるゲスト隊員を助けようとしたが、結局自艇も流れに押されて傾き、沈してしまう。しかし足が付く所だったので、立ってゆかまる隊員をフネの下の水中から救い出す。
 オレも藤の枝に引っかかったまま水流に押されて沈しかけていたが、ゆかまる隊員が救出され、シバタゲスト隊員もフネを押し出して脱出したため、脱出ルートが空き、なんとか沈せず脱け出ることに成功した。スタート後10分で、いきなり2名が藤の倒木の餌食となって
“藤沈”(←命々:アビルマン隊員)してしまった武儀川ツアー波乱の幕開けである。

 そんな水上多重衝突で何かが吹っ切れたのか、ゆかまる隊員はズブ濡れにも関わらずスッキリした顔をしている。しかしフネのコントロールには相変わらず四苦八苦しているようだ。とりあえず他の隊員の後をついて行く「ストーカー航法」を試みるも、やっぱりコントロールが利かないフネではそれはムリのようだった。

 そんなバタバタがありつつも進む我々に、超“癒し系”武儀川は惜しげもなく素敵なロケーションを見せてくれる。浅く蛇行する川は、晴れてきた空から降り注ぐ日光でキラキラと輝き、極上の自然風景を演出していた。
 イシカワ顧問は久々にトロけるような表情で、またしてもトロ〜ンと漕いでいる。アビルマン隊員もトロトロの笑顔で漕いでいて、油断しているハズだが今日はなかなか疎沈しない。うー隊員は川の中を覗き込みながら魚影を追っている。上流・葛原川の恐怖の記憶をどこかに置いてきたように楽しげだ。

 なんだかあっという間に堰堤前のランチポイントに着いてしまった。
 上陸してイシカワ顧問の車からバーベキューセットを出して組み立てる。炭火を熾してゼータクに炭焼きバーベキューで乾杯である。先ほどの藤沈で酔いが冷め、
「心が不安定」
になっていたというゆかまる隊員に再び元気を出させるため、
ビールを与える。
 河原でバーベキューしたことは多いが、こんな癒し系の川で、しかもカヌーのランチとしては初めてである。焼き肉、ウィンナー、チキンナゲット、ピーマン、タマネギ、ニンジン、シイタケ、さらにご飯まで炊いて食べ、かなり堪能する。

 約1時間後、ここで上がるイシカワ顧問に見送られ、我々は再び武儀川に出た。そしてすぐ例の「魚道ポーテージ」である。左岸に寄せ、ぽっかり開いた魚道トンネルに入る我々。相変わらず別世界に繋がっていそうな怪しい雰囲気のトンネルだ。増水時に流されてきたのか流木が詰まっていて通れないため、まずそれらを引っ張り出さなければならなかった。なんでこんな所で
トンネル掃除しなきゃイカンのか謎だが、うー隊員とアビルマン隊員ががんばって流木をどけることに成功する。
 落差約50cmのコンクリートの棚を、フネを引いて順番に降りていく。途中でオレはズルして、先日の根尾川の様に魚道の縁に上がり、フネを流す作戦に出た。しかしなかなか流れず苦労する。と前を行くゆかまる隊員が魚道の途中でコケ、持っていた2本目のビールとテキーラの入ったピューターを白濁した流れの中に落っことしてしまう。二つのアルコール飲料は帰らぬものとなり、こうしてゆかまる隊員のエネルギー源は武儀川の藻屑と化してしまったのだった。

 堰堤後の武儀川は、少し根尾川の上流っぽいロケーションに変わる。相変わらず水は澄み、水中には魚影が見え、空気も美味しい。小さな瀬をいくつか越えるが、今日は水が少ないせいか、浅くて引っかかる所も多い。何度かフネを降りて引く。気が付くとゆかまる隊員のスキップジャックはフロアチューブから空気が抜けてしまっているようだ。浅瀬では尾テイ骨を打つ状態となり、だんだん遅れていくゆかまる隊員。やはり酒を流されてエネルギー切れしたのが効いているのか? と振り返ると、最後尾となったゆかまる隊員が疎沈したように見えた。またか!? と思うが、本人は
「してない! 0.5沈くらい」(←してるぢゃん)
と言い張っているので、そーゆーコトにしておこう。しばらく行くと再び谷が深くなり、底を打つ所も少なくなってまた快適になってくる。



 もうゴールも近くなってきた頃、左岸寄りに少々落差のある瀬が現れる。すると上の橋からは先に帰ったハズのイシカワ顧問がカメラを構えているではないか。もちろんアビルマン隊員の
疎沈狙いである。それに気づいたアビルマン隊員は
「くそ〜、オレの疎沈を狙ってる〜!」
とびびるが、今日は本当に疎沈しない。もちろん少々の瀬でも撃沈しなくなってきているアビルマン隊員である。徐々にレベルを上げてきているのかもしれない。
 またしばらく行くと、やはり左岸寄りにちょっとした瀬が。慣れてきたゆかまる隊員はバウンドしながらもなんとかクリア。と、続いたシバタゲスト隊員が、頭上から垂れ下がっていた枝をよけようと体を傾けたその時! それが運悪く瀬の真ん真ん中だったため、そのまま撃沈してしまうシバタゲスト隊員。
 
流されてくる荷物、流されてくるパドル、流されてくるフネ。
 シバタゲスト隊員はジツは、以前に下った釧路川ではほとんど瀬がなかったため、ちゃんと瀬がある川を下るのは今回が初めてとのことだった。「藤沈」に続いて
今度は「枝沈」である。初参加で沈連発は普通だと結構イタいものがあるハズだが、そこはこれまたジツは年季の入ったアウトドアマンでもあるシバタゲスト隊員は、冷静そのものだった。すぐ体勢を立て直し再びフネに乗り込む。流出した荷物をオレが拾っていたため、それを取りにこちらに漕ぎ寄せてくるシバタゲスト隊員。
 と、スピードが結構出ていて、すれ違いざまに荷物を手渡そうとすると、受け取ろうとしたシバタゲスト隊員はそのままバランスを崩し、再び沈してしまう。
 今度は「
受け取り沈(←命名:うーやん隊員)」である。3連発はさすがにキツかったようだ。しかしシバタゲスト隊員はヘコたれないどころか、足が付かない所であるにも関わらず水上でヘリオスによじ登ってしまった。安定のいいカラカルやスターンズならいざ知らず、GUMOTEXでそれを成し遂げてしまう所がタダ者ではない。さすが、最盛期には一年に30回近くキャンプに行っていたという、まさに“筋金入りのアウトドアマン”シバタゲスト隊員である。



 そしてそこからしばらく漕いで全行程約8kmを終えた我々は、アウトポイントの公園に上陸した。まだ時間も早かったのでフネを乾かしがてら車座に座り込み、コーヒーを湧かしてここでもまった〜りとしてしまったのだった(←ハタから見てると結構怪しい図)。う〜ん、今日も極楽でした☆


今回の教訓: 「竹沈だけでなく、藤沈、枝沈にも注意! 
 そして荷物を受け取る時は受け取り沈にも注意!」