活動記録其の8・長良川編part2
文:にしお
2001年4月15日
鉄砲玉の土居隊員、岩に突進し撃沈!味噌煮込みうどんは守られたのか?
「名古屋カヌーチーム鮫」、かっこいいのかダサイのかよくわからないこの団体の名前だが、僕(にしお隊員)はその存在を結構前から知っていた。大学生の僕は某サークルの関係で隊長&イシカワ顧問とは2年前からの顔見知りだったためだ。
趣旨・名前共に実に怪しいチームながらも好奇心を駆り立てられ、実は去年から「入れて下さい!」と弟子入りをお願いしていたのだが、何故か拒み続けられていた。どうやら僕は要領が悪いと思われているらしい。(ホントはとってもいいぞ!)
ところが今年のシーズンが開幕する前のある日、彼らの態度が変わった。何気なくもう一度頼んでみたところ、
「いいよ。」
隊長からの快い返事。嬉しい反面、
「なんでだろ〜??」
何か引っかかる。イシカワ顧問なんて、満員の地下鉄の中にも関わらず、僕に川の素晴らしさを熱く語ってくるのだった。前まであれほど素っ気無かった隊長と顧問のこと、腹の裏に何か隠しているに違いない。
一部の情報によると、就職で名古屋を離れるために脱退確実なジョニー隊員や、そこそこ経験を積んで少しうまくなったらしいイチロー隊員の代わりになる「撃沈王」のポストを探していたらしい...。どうやら「人の沈を見るのは楽しい」ということで、僕の沈を見て笑いものにする腹積もりのようだ。

「俺はぜったい沈しないぞー!!」
4月15日(日)、東海北陸道をぶっ飛ばしながら、僕は煮えたぎる闘志をふつふつと燃やしていた。
今回のコースは日本を代表する清流・長良川だ。そう、鵜飼で有名な。僕が初参加という事で、長良川の中でも初心者向けのところを選んでくれたらしい。
本日のメンバーは、イシカワ顧問、土居隊員、イチロー隊員、僕(にしお)であった。
この日は快晴で気温も高めだ。桜は散った後、川に花びらが流れていてそれはそれで風情がある。差す陽射しが心地よい。今回、隊長が体をこわしお休み(1週間前の花見で隊長自ら作ったカレーうどんが原因か?)した事以外は最高のコンディションであった。

全てが初めての僕、ヒイコラ言いながら空気を入れ、スキップジャックが完成。他の隊員に倣って僕も艇に乗る。乗り込んだ瞬間、艇の中に水が入り、ケツが不快になるものの何とか船出。要領の悪い人ならこの乗り込む時に沈をするらしい。これでさりげなく僕の要領の良さをアピールできたかも。
水の上を滑り出すと、僕はとりあえずパワーでパドルを振り回し漕ぎまくった。穏やかな流れなので自分で漕がないとのろいのだ。漕ぎ方が悪いためか、漕いでもあんまり進まん!しかし、流れに乗って水と一体になる感覚を味わうと、
「ほほほ〜、カヌーってこんなんなんだー。」
穏やかな流れと一体となって僕は少しハシャギ気味であった。
と、その横をイチロー隊員のスキップジャックに大きな二人艇で激突攻撃を繰り返す大人気ない土居隊員の姿が!!逃げなきゃ。
川にはこういう危険もあるのか...。

やがて進んでいくと、流れの荒いところにやってきた。ジャージャーという音と共に、子供が絵に描くような三角の波が船底のビニールを伝い僕のケツをボコンボコンと突く。それと同時にスキップジャックがぐわんぐわんと縦に揺れた。これがいわゆるという難所だ。川における大抵の撃沈は瀬の大きな波の中で艇がバランスを崩して起こるらしい。
「うぉ〜沈してしまうのか?」
諸先輩隊員達にすれば何とも無いヘナチョコな波なのだろうが、僕にとっては初めてのピンチ!前述の二人からは、柔軟性が無いと言われる僕、何でもない小さな瀬で沈することを期待されているらしい。くそぉ。何が新撃沈王だ。僕はそんなのにはならないぞ。・・・どうしたらいいかわかんない僕はとりあえずパドルを水に突っ込み必死で漕ぎ漕ぎした。これは後でイシカワ顧問から教えてもらったことなのだが、瀬の中では常に漕いでいる方が安定するらしい。ということは、僕は正解だったのだ。全く初めてにも関わらずそのコツをアドバイス無しに心得ていたことになる!?僕って柔軟性あるじゃん!!・・・って待てよ。瀬に入る前にアドバイスしてくれよ!!
やがて波は元に戻り、なんとかクリアー!
「沈しなかったぜ!」

荒波クリアーの後、後ろを振り返ると大量の水が土居艇の中に浸水しているではないか!フネはかなり沈んでいるため、まるで土居隊員が水面に座っているかのように見えた。しかし土居隊員自身にあせる様子は全く見られず、そんな状況を他の隊員に披露し、むしろその状況を楽しんでいた。
「あの余裕は見習わなくては!」
っていうか、本当はあせるべきなのか?理解不能。うう、柔軟性の無い僕にはこういうことが欠けているのか・・・?


この後も何度か瀬の荒波に出くわした。穏やかな波より多少のスリルのある荒波の方が断然おもしろい!!(と言えるのも、沈を経験していないからだろうか?)

今回の14キロの川下りも終盤に差し迫ったころである。のろいため殿を行く僕は見た。ひっくり返った緑色の艇と、水面からちょこんと出ている顔withヘルメット!
「あっ誰か沈した!」
土居隊員である。どうやら土居隊員は、大岩に真っ直ぐぶつかっていき、岩の側面にそって艇がぐるっと回転してしまったらしい。チーム鮫の「切り込み隊長兼鉄砲玉」と言われている土居隊員のは、とにかく威勢が良くて、強引なパドリングで定評がある。これまで少々の岩なら、彼の鋼鉄製のパドルで砕かんとする勢いで叩きつけ、よけてきたらしい。しかし今回の大岩はそんな彼の必殺技「鋼鉄パドルアタック」も効かず、土居隊員はあえなく轟沈してしまうのであった。ちなみにこのゴール手前で沈すると、ゴールのすぐ近くまで泳がなくてはならない。ゴール地点の河原にはこの日多くの人がいて、泳いでる姿を大衆の前に晒す羽目になってしまうのだ。これはかなり恥ずかしい。 ところで土居隊員が沈したその時、僕はちょっと不安になった。そういえば出発前、土居隊員の防水袋にスーパーで買ったみんなの食料を詰めていたじゃないか!俺の三食おにぎりとアロエヨーグルトはどうなっちゃったんだろう?僕にとって食い物は大事な問題である。

ゴール地点、鮎之瀬橋下の河原は多くのファミリーやパドラーたちがバーベキューを楽しんでいた。僕達は着替えた後、食事の準備にとりかかる。今回のメニューは「味噌煮込みうどん」であった。僕の三色おにぎりとアロエヨーグルトはなんとか無事だった。今回の沈で新たにわかったことらしいのだが、手っ取り早い防水の方法として、スーパーなどに売っている布団圧縮用ビニール袋はかなり有効だとのこと。ホッと安心したのも束の間、どうやら今回も必要なものを失っていることが判明した!前回は鍋がなかったらしいが、今回は水がない!食料運搬係の土居隊員は沈で長良川に「南アルプス天然水」を放流してしまったそうだ。おそらく清流・長良川といえど、飲料用の南アルプス天然水の水質よりは汚いだろう。水自体を流したならば、長良川の水質が、何億分の一かわからないが、若干きれいになるに違いない。しかし今回はペットボトルごと流したのだ。それではただのゴミを流したのとなんら変わらないではないか。
仕方がないので今回は公衆トイレを探し出して、そこの水で代用した。トイレで鍋に水を汲むのは、あまりいい気分では無い。
しかしうどん作りは順調に進んだ。鶏肉も入り、卵もいいかんじでで半熟の味噌煮込みが完成!!みんなでつついた味噌煮込みは、トイレの水ということを忘れさせてくれる最高の味だった。


日も暮れかけて、少し赤くなってきた夕日がきらきらかがやく水面を見ながら4人はうどんを堪能していた。
そんな川の中央、水面にぷかぷか浮かぶ物体が僕達の目の前を流れていく!
「あれ〜なんでしょうかねぇ。ペットボトルに見えるのは僕だけでしょうか?」
と土居隊員。そうである。確認したわけではないが、絶対にあれは僕達がスーパーで買った水である。
しかし、うどんも食い終りつつある4人にはもはや必要なものではなく、
「あとは寝るだけだな」
なんて平和な会話をしていた僕達の中には、とてもそれを取りに行こうというバイタリティを持った隊員もいなかった。
静かに流れゆく天然水を見守る...。

今回のコースは14キロ程の行程を約2時間半かけて下ったそうだ。とても早く感じられた。少々物足りない感じでもあるが、充実感はかなりあった。
帰り道、僕はまたカヌーをやろうと決めた。理由は楽しかったから。
実は理由はそれだけではなかった。大学に入ってから着実に太りつつある僕は秘かに「カヌーでついでにやせれたらな♪」と企んでいたのだ。しかし、味噌煮込み2人前とおにぎり3個をぺロっと平らげてしまった状況を思い出すと、すぐにあきらめるのであった。

今回の教訓: 「荷物は流されるな!防水は完璧に!」