活動記録其の27・長良川編part3
文:隊長
2001年10月8日
釣り師! 釣り師! 網! 網! 網! 久しぶり、秋の長良川は障害物競走!?
〜そして“鮫”には新たなる女性隊員加入か!?〜
 そこはかとなく秋の気配が漂い始めた体育の日、10月8日(月・祝)の朝、約10時過ぎ。オレ(隊長)は岐阜県は長良川の支流・板取川に向けて車をトバしていた。
 空は微妙な晴天、現地、板取川と長良川の合流ポイント近くに掛かる橋付近にはすでにイシカワ顧問と、このホームページを見て参加を希望してきた奇特な女性“チャレンジャー”うーやん新入隊員ともう一人のお友達新入隊員が待っていた。

 しかしこの所雨がほとんど降っておらず、板取川は水量が落ちすぎていた。オレの到着前にうーやん新入隊員たちはスカウティングしてくれていて、結果「本日の板取川は不可能」という判定が出たのはオレの到着から約5分後のことであった。そこで第2候補としていた長良川の「立花橋〜鮎の瀬橋」というコースと「鮎の瀬橋〜金華山辺り」という2案が検討される。
 結果「立花橋〜鮎の瀬橋」は来る途中やたら釣り師を目撃したことなどから廃案となり、2週間前の櫛田川で
猛爆→脱臼→病院送りとなっていたイシカワ顧問のリハビリの意味もあって、より「緩い」と思われる後案に決定する。

 早速途中、食糧を買い出しつつ、アウトポイントと目星を付けた長良川公園の河川敷に向かう。しかしその移動中、川の中に何カ所か川幅いっぱいに網のようなものが張ってある所を目撃した我々は、距離もさることながらポーテージの回数が増えそうなのを予感してイキナリ距離を縮める作戦に出た。 ってゆーか、前述の目標変更などで意外と手間取り、この時点で11時をとっくに過ぎていたことも一因となってしまっていた。

 少し上流に戻り、千鳥橋の下をアウトポイントと定めた我々はイシカワ顧問の車に4人分のカヌー&備品を強引に詰め込むと、約12km上流の鮎の瀬橋を目指した。
 ここは以前にオレが病欠した時のツアーでアウトポイントとなり、味噌煮込みうどんが制作された場所である。すぐにフネを組み立て始めるが、その時オレのフネから一匹のムシが這い出してきた。

 ...
ゴキブリだった。

「!!」

 ゴキブリが超・大嫌いなオレだったが、うーやん新入隊員たち、今日初めて会う人の前なので一応平静を装う。
 そういえばオレの愛艇・シャーク3号(スターンズ・リバーランナー)は、前回の櫛田川でイシカワ顧問救出のため、草むらの斜面を転びながらダッシュで駆け上がって
乾かさずにしまっていたのだ。
 そのため少々汚れたままで、ある種のニオイでも放っていたのだろうか、ヤツの快適なねぐらと化していたようだ。しかしオレの愛艇を勝手に使用した罪は重く、アスファルトの路面に逃亡したヤツを即座に殺害する。合掌。

 うーやん新入隊員とそのお友達(上司?)の水林新入隊員(なんと某大学病院のドクターである!)はそれぞれカラカルTとカラカルUであった。今までイシカワ顧問だけだったAIR勢が突然今回は75%の占有率である。我がスターンズ軍団のラスティック伊藤隊員は中国だし、もう一人のシミズ隊員は今朝方から始まった
米軍のアフガン空爆のせいで、局に緊急呼び出しを食らってこれまた緊急欠席(手短に言えばドタキャン)してしまっている。うーむ、今日は少数派か。

 しかし史上初、4人もいるのに全員セルフベイラー付きバトルシップという、
“鮫”史上最高の戦闘力の高さを誇る布陣であるにも関わらず、今日は

「瀬って何? それはドコ?」
 なんて言いたくなるような超・まったりコースである。が、しかし、瀬より遙かにうっとうしい釣り師と、川幅いっぱいの網が我々の行く手を阻んだ。いや、阻みすぎた。
 とにかく、かつて他の川では見たことないほどの
釣り師! 釣り師! そしてまた釣り師! である。 
 さすがにこのヘンの長良川になると川幅が十分にあるため、コースは結構選べる。おかげで豊川の時のような、釣り師との火花散る一触即発の緊張感もほとんどない。しかし網の多さには本当に参ってしまう。
 
 落ち鮎を一掃するためのものらしーが、ほぼ1kmごとに等間隔で付けてあるんじゃないかと思うほど、
ちょっと行くと網! ちょっと行くと網! そしてまた網! なのである。その度にフネから降りて網をまたぐ。ウェットスーツを着ているのでベツに寒くはないのだが、やっぱりスイスイ行くのに越したことはない。

 そういえば今回、オレは初ウェットスーツである。しかし着心地はサイズがパツンパツン(注:とてもキツイ、の意)のためか、体が締め付けられていてワリと苦しい。もうワンサイズ大きいものを買えばよかったかも...。
 うーやんゲスト隊員もDr.水林ゲスト隊員も、同じく買ったばかりの初ウェットらしかったが着心地は悪くないようだった。
 くそお、オレもちゃんと試着してから買えばよかった。イシカワ顧問は3月のシーズン開幕時より愛用しているウェットで参戦しているので着慣れた感じだ。


 長良川はこんな中流域でも結構水質は良く、水の中はよく見える。しかしそこで良く目に付いたのは活き活きとした魚たちの姿ではなく、水底に沈む鮎の死体ばかりである。
 そういう時期なのか、多いところでは10mぐらいの間にゴロゴロと、7〜8匹も銀色の腹を見せた死体が転がっている。最初はみんな「死んでスグぐらいなのは拾ったら食えないかなー」などと軽く言っていたのだが、あまりにもたくさんの死体が転がっているのを見たため、だんだん陰鬱な気分がしてくる。しまいには

「なんか化学物質でも溶け出してんぢゃねーのか?」

 と勘ぐりたくなったくらいたくさん死体が沈んでいるのだ。
 障害物競走のように釣り師と網を次々交わし、千疋大橋をくぐってしばらく行くと、我々の前にやっと難所が現れる。それはあの武儀川が長良川に流れ込むポイントで、そこでは長良川が二股に分かれ、広大な中洲を作っていた。
 左を行くと小さな堰堤があることをあらかじめ車からのスカウティングで確認していたため、武儀川が合流している右へと進路をとった我々を待っていたのは、結構な落差のある落ち込みと両岸に並ぶ釣り竿の放列であった。

 しかもよく見ると落ち込みの部分は3級程度の落差なのだが、それは岩場ではなく、
テトラポットが作り出している瀬だった。
 当然、自然石に比べて非常に複雑な流れとなっているばかりか、水面下には鋭利に尖った障害物がたくさんありそうである。右岸にフネを置いて歩いてスカウティングに行ったオレは、それを見て即座にポーテージを決断する。
 ついでに言うと両岸に、てんこもりの釣り師ご一行様が
険しいオーラを発してるし...。
 そして実はそこは、またもや流れが二つに分かれており、左岸側の方はなんとか下れなくもない感じに見えはしたが、やはりテトラである。その時、オレのアタマの片隅をひとつの事実がかすめていた。

 今回参加のうーやんゲスト隊員は先月、我々のホームページを見て
“とろける”武儀川へと出掛けたつもりが、そうとはしらず上流の“ダイ・ハードな”葛原川まで行ってしまい、激烈な岩場攻撃で記憶を失うほどの恐怖の中で借艇のスーパー・リンクスをザックリ破ってしまったという武勇伝の持ち主なのだ。

 そうである。最近忘れかけていたことなのだが、「インフレータブルは破れる」ことがある。オレは思った。

(ここは安全策をとらねばなるまい)

 余談だがそのような恐怖体験にも関わらず、その後1ヶ月も経たない間にシッカリとまた、こうしてカヌーに来ているうーやんゲスト隊員のそのド根性は、ウチの“撃沈王”イチロー隊員や鰯の“疎沈王・Mr.6”ことダッシュ隊員にも
見習って欲しいものである。
 ちなみにこれまた余談だが、その葛原川に同行したDr.水林ゲスト隊員のご子息は(なんとDr.は既に1児のパパだった!)カラカルUの前席に座っていたそうだが、それで懲りてしまったのか、はたまた寒いからなのか、今回は
川下りを拒否したそうである。ううむ、やはり現代っ子を大自然の中で教育するのはなかなかムツカシイのだろうか。
 

 
 400m近い距離をひいひい言いながらフネを担いでポーテージし、釣り師のみなさんの後ろをすり抜けて空いている所にフネを降ろす。やっと一息と思ったらまた網があって、それをクリアするとまたしてもテトラがらみで1級程度のクセのある瀬が現れ、その直後にはあたり前のように釣り師の姿が...。
 しかしスカウティングしてみるとどーってコトもなく、その瀬を次々クリアした我々は釣り師軍団の前をそそくさと通り抜け、もうしばらく行った所で昼食のため上陸した。

 しかししかし、ここでもまた事件が起きてしまう。本日のメニューは当初「天ぷらうどん」であった。だが食材購入時に
ちょっとした勢いで「きしめん」にしようとしたことから、いつもの「ゆでめん」ではなく「生めん」を買ってしまっていたのだ。
 その時、大の大人が4人揃ってなぜだか
思考停止しており、「生めん」を茹でるには「大量の水が必要」という、当たり前かつ決定的な事実をそれこそ決定的に忘れ去ってしまっていたのである。
 当然のように茹で始めたはいいが、鍋は小さいわ水は少ないわでとてもきしめんには見えなくなってきた。

「なんだかドロドロしてきましたね。」

「明らかに水が足りないんじゃない?」

「見た目、ほうとう(山梨名物)みたいだね。」

「いや、これはすいとんというほうが正しいのか?」

「なんだか昔を思い出しますな。」(←註:もちろんメンバー全員戦後だいぶ経ってからの生まれ)

 いや、または、単に焦げて異臭を発するドロリとした餅状の食糧風のもの、といった方がより正確だったかも知れない。しかも水が足りないのを補うため、苦肉の策を誰かが提案した。

「水の代わりに”壮健美茶”を足してみると、香ばしくていいんじゃない?」

 この提案が
事態を泥沼化させてしまったことは言うまでもない。

 一緒に買った寿司などの副食が救いとなったものの、メインであるべき「天ぷらきしめん」は、天ぷらが載った「謎の物体X」と化してしまったのだ。それでもそれを「なんとか食える」といっておかわりするDr.水林ゲスト隊員。うーやんゲスト隊員も同じく普通に食べている。そしてイシカワ顧問も。それを見てオレは最後に箸をつけたのだが、正直言ってこの「物体X」は“鮫”史上最悪のテイストで、一杯平らげるのがひ弱なオレには限界なのだった。それを頑張ってビールで流し込み、再び川に出る。

 夕方にさしかかったせいか、釣り師の姿は少し減ってきたようだ。その後は相変わらず網は張ってあるものの、もうイチイチ降りて越えなくなっていた我々は、パドルの先でひょいっと網の上に渡してあるロープを引っかけると、そのまま持ち上げてくぐるという作戦で次々とクリアするようになっていた。
 長良川はその後徐々に濁り始めたような気がしたが、相変わらず川底に沈む鮎の死体はクッキリと見える。「長良川に来るのはまだ早かったかなぁ」そう思った秋・入り口のツアーであった。






今回の教訓: 「食材の調達時には作り方をシュミレーションしよう!