活動記録其の69・長良川編part-6
文:隊長
2002年11月24日
堰まで下ろうツーリング第1弾! 秋カムバック、ポカポカ陽気の長良川まったりツアー!
    〜今年は冬でもシーズンオフはナシ!?〜
   “鮫”の掲示板にsakuzo隊員の書き込みを見つけたのは11月23日、土曜日の午後8時を少し過ぎた頃だった。

 翌、日曜日の朝、約10時ちょっと前、オレは長良川・穂積大橋の下にいた。急遽決まった、またしても冬の大河まったりツアーのはじまりである。

 メンバーはオレとsakuzo隊員の2名のみ。sakuzo隊員によると黒太隊員も来るかも、とのことだったが、風邪を引いているらしく結局今日は不参加のようだ。
 一応10時まで現地で待った後、sakuzo隊員と協議の上、ひとつ上の河渡橋近くまで行き、そこをアウトポイントとすることにした。
 天候は空を見た感じだけでかなり寒気がしてくるような曇天。正直言ってちょっとしくじったかと思うような天気である。
 しかしsakuzo隊員は元気だった。いつもなら雨が降ったりすれば漕ぐコト自体をとりやめにするぐらい天候にはシビアなsakuzo隊員が、である。
 天気予報的には晴れるハズが、今日は曇ってしまっているのだが、何かこれから晴れてくる! という自信でもあるようだった。

 車を一台残し、約10km上流の千鳥橋まで行ってそこをエントリーポイントとする。なんだか見覚えがある川原だなぁ、と思っていたら、昨年秋の長良川中流ツアー時のアウトポイントだった。鮎の瀬橋からスタートしてここでアウトしたっけなぁ、と一瞬感慨に耽る。
 フネを引っ張りだしてセットアップを開始する。車の横で膨らませて、散歩をしている近所の人以外誰も居ない川原を、担いで水際まで運んでいった。
 11時5分エントリー。いきなりちょっとした波が立っている所がある。今日はもう中流ってよりはむしろもう下流って感じのコースなので、オレはシャーク4号ことGUMOTEX・ヘリオスで来ているが、この程度ならまったく何の心配もなく抜けられる。しかし同じGUMOTEXでも
“疎沈製造船”サファリで来ているsakuzo隊員にとっては、こういった隠れ石がありそうな浅い瀬こそ天敵なのである。
 でもカンタンにクリア。しばらくはとろーんとした水面が続くように見えた。が、水質が意外とよくて川底がクッキリ見える今日の長良川は、自分たちがとっても早く流されていることを自覚させてくれた。
 周りの景色は広々と開けているのであんまり急速には変化しないのだが、水中に目をやると結構なスピードで川底の景色が通過していく。
 特に今日は風が全然と言っていいほどなく、ベタなぎ状態のため鏡となった水面に前方の金華山がそのまま逆さになって写っているのが見えた。
 そうである。なんとsakuzo隊員の
予知能力が当たっていたかのように、空はいつの間にか晴れていた。いや、正確に言うと青空をバックに厚い雲が動いていき、陽が差すタイミングが多くなっていた。
 気温もなんだか思ったより低くはない。前回の木曽川ツアーが完全に「冬」って感じだったのに対して、今日はなんだか「秋」が戻ってきたような気すらするほどである。
 にもかかわらず、sakuzo隊員は
「寒いですわ」
などと言っている。その格好はアンダーウェアの上に釣り用ウェダー(ゴム長付き)を履き、上半身はフリースの上にスキーウェアまで着込んでいる。ライフジャケットを着ていなければ完全に冬の釣り師スタイルだ。
 一方オレは、同じく下は
チノパンの上にウェダーを履いているが、上はいつものサッカーシャツの上にパドリングジャケット一枚という出で立ちなのだった。それでも漕ぎ始めると寒くはなかった。
 この格好は今年の始め、オープン戦と称して1月に宮川に漕ぎに行った時と同じ格好である。あの時は最初、今回のsakuzo隊員と同じくフリースを着ていたのだがすぐ暑くなってしまい、途中で岸に寄せて脱いだりしていたのだった。パドリングジャケットは意外と気密性が高いせいか、はたまた風を通さないせいか、とても暖かいものだということをオレはその時学習していた。
 
 快調に漕ぎ、また快調に流され、あっという間に金華山のスグ下までたどり着いてしまった。そこにまたちょっと波が立っている所があったが、これまた何でもなく通過する。
 極めて快調なツーリングだ。しかし金華山の北側の長良川は日陰となっていて寒い。見ると左岸に走っている道路の下の崖の途中にキャンプしている人がいた。最初は何か人が動いているのだけが見えたので、
変態カップル!? と思って戦慄したが違った。洗濯物のようなものが干してあるのが目に入った。sakuzo隊員と二人で不思議がる。こんな所在住でやっていけるのだろうか? どうせ住むならばもう少し色々と便利の良いところもあるだろう。
 そんなコトを思いつつ下って行き、金華山の日陰から離れると空は完全に晴れあがり、たいして風もないのでとても暖かくなってきた。完全に冬のまったりツーリングだ。sakuzo隊員は誰もギャラリーが居ないのが残念らしく、橋や堤防の上に人を見つけると
「こっちを向いてくれんかなー」
などと言っている。この贅沢なレジャーに浸っている様を誰かに自慢したくて仕方ないようだ。しかし実際その通りであった。
 冬で寒さに震えている人たちからすれば、こんな時にカヌー乗って川下りなんぞやっているヤツらはアホ以外の何者でもない。しかし今日はそのアホたちがとっても楽しそうに見えて仕方ないハズの天気なのだ。今日ばかりはせっかく町中を流れていることでもあるし、この冬の川下りの楽しさを回りの人たちに見せびらかしてやりたいぐらいの気分だった。

 しばらく行くと流れが左岸寄りになっていてテトラが絡んでいる所に出た。コースを間違えると
「冬の極楽リバーツーリング」

「酷寒の地獄寒中水泳大会」
と化してしまいそうなデンジャラスポイントである。しかしなんてことなく抜ける。
 その後でランチ休憩をとることにして右岸に上陸。川のど真ん中の川原でいつものようにコンロセットを出してお湯を沸かし始めた。
 
 今日は二人だし、冬で日も短いことから超・簡単にカップラーメンとおにぎりという超・お手軽メニューである。暖かい天候とはいえ、なんだかんだで気温は低いのでお湯が沸くのに少々時間がかかる。しかしそれを待っている間、川原の石の上に寝そべっていること自体がポカポカの日差しが気持ちよい日光浴なのだった。

 ラーメンが完成してそれを食べ始めた頃、30mほどの川を挟んだ対岸の護岸の上に突然女の子の二人組が登場した。しかもなんだか怪しい(←人のこと言えるんか? ってハナシもある)。二人は水際まで降りてきてクツを脱ぐと、続いて靴下も脱ぎ始めるではないか。
「ど、どういうこと!?」
となぜか
うろたえる我々。特に以前の矢作川ツアーでビキニのおねーさんに見とれて疎沈回数を上積みしてしまったsakuzo隊員は、目が完全に二人にロックオンしている。
 二人の女の子は脱いだ靴下をクツの中に入れると、素足を川に浸けてジャブジャブやっている。何かの健康法だろうか(←違うって)。
 sakuzo隊員は
「あれは完全にこっちを意識してます! ちょっとワシ失礼して挨拶に行って来ましょうか?」
と希望的観測をもとに、行動を開始する一歩手前の臨戦態勢だ。
「ううむ、確かに場所はいくらでもあるのに
ワザワザ目の前まで来てあんなことしてるクセに、こっちをチラリとも見ないのが怪しい」
 川幅は約30m。こっちにはカヌーがある。ヤツらはまったくこっちを見ようとせず(これは返って不自然だ)、女二人で楽しそうに遊んでいる。シバタ隊員がいたら、絶対ニコやかに手を振ってお友達になろうとする所だ。
 しかし微妙に内気なオレとsakuzo隊員である。ラテン系のアビルマン隊員ならいざしらず、そうそうフレンドリーに声を掛けることもできず、結局しばらく無言のにらみ合い(ニラんでいたのはこっちからだけだけど)を続けたのち、我々はその場を撤収して再び川に出た。
 カヌーに乗り、そのまま離岸する。sakuzo隊員は名残惜しそうに対岸まで漕ぐようなそぶりを見せるが、流れは意外と早く、結局スルッと自然にそのまま流れてきてしまったのだった。
 
 後半もひたすらポカポカとした天候のもと、我々はゆったりゆったり漕いでいった。冬でも天気が良くてそれほど風がない日であれば十分に極楽ツーリングは可能であった。要はそれらの天候的要因とちょっとした装備、そして沈しない川の選択の問題なのである。ここでsakuzo隊員の発案で新企画が生まれる。
「長良川・堰まで下ろう計画」である。
 このコースの後、長良川は約40kmを流れて伊勢湾へと注ぐ。そこにあの悪名高き・河口堰があるのだが、そこまでを何度かに分けて下り、過去の分と併せてトータルで長良川の中流〜下流域を制覇しようという計画だ。確かに近場で、沈する危険もなくお手軽に漕げる所といえば、こういった大河の下流域である。この季節のように、行き先に困っている時にはちょうどよい。とりあえず今回をその第一弾とすることにした。
 さて冬の間に何回、そしてどこまで行けるのだろうか?
 
 上空を見上げると雁だろうか、群を作って飛んでいくのが見えた。川面にも無数の水鳥が浮いている。この辺りは渡し船の営業がある所らしく、両岸に船着き場のある所があって人が何人かいるのが見えた。彼らは先ほどの女の子たちと違って、もの珍しそうに我々のカヌーを見ていた。sakuzo隊員は実際にこの渡し船に乗ったことがあるようだった。
 渡し場の辺りの水鳥たちが浮いている中をカヌーで漕いでいくと、鳥たちはあるタイミングでザッといっせいに飛び上がり上空を旋回し始めた。我々のカヌーが通過するとまた元の辺りの水面に着水して、ふたたびゆらゆらと水に浮かんでいる。ちょっとおどかしてしまったかもしれない。
 
 長良川はこんな下流域でも結構水は澄んでいて、流れもある。そんなに漕がなくても勝手に進んでいってしまっている。ただ、もちろんのようにもうまったく瀬がない。  
 川は徐々に方向を西から西南に向けているように思われた。行く手に太陽がギラギラと輝いている。夏とは違って、明るいがアツいエネルギーを感じない、ちょっとやさしめの陽射しだった。水面もそんな陽射しを反射してユラユラと暖かそうに輝いていた。

 15時少し過ぎ、ほぼ予定通りに我々は河渡橋の近くでアウトした。とても暖かく、まだ秋、いやもうそろそろ春じゃないかと思えるほどの気持ちいいツーリングだった。


 
河口堰まであと約40km








今回の教訓: 「冬でも天候と装備次第でポカポカツアーは可能」