活動記録其の71・長良川編part-8
文:隊長
2002年12月29日
長良川・堰まで下ろうツーリング第3弾! 追い風でウェーブスキー!
    〜牧田川から長良川へ、一年の締めくくりはやっぱり迷走〜
   12月29日(日)快晴、我々は牧田川べりにいた。
 今日は長良川・堰まで下ろうツーリングの第3弾、のハズが、
「牧田川に行きたい」
というアビルマン隊員のたっての要望で突然の行き先変更である。しかし、ここまで来る途中の岐阜・上石津町は悪天候で
雪がチラつき、それは牧田川に着いてもなんら変化していなかった。
 その上水量は極端に少なく、これでは来週・年明けの1月2日に行われる名古屋カヌーチーム“鮫”2003年初漕ぎ&川原新年会の場所としても不適格であることが判明してしまった。今回はそのためのスカウティングの意味もあっての牧田川ツアーだったのだ。
 結局協議の結果、本日は中止として岐阜のショップを冷やかして、その後もう一つの初漕ぎ候補地・武儀川をスカウティングして帰ることとなる。

 が、岐阜へ向かって国道21号線をつるんで走っていると東に向かうにつれてどんどん天気はよくなり、かつ暖かくなってきているのがわかった。しまった。どうやら寒くて雪が降ってて、いかにも真冬なのは山の中にある牧田川だけのことのようだ。
 運転中にアビルマン隊員からメールが来る。
 数度のやりとりの結果、どうやらアピルマン隊員は風をやたら気にしているようだが、漕ぎたいのは漕ぎたいらしい。
 この季節の濃尾平野は北西にある伊吹山から吹いてくるモノ凄く冷たい北風、通称「伊吹降ろし」のため、風が吹くと天気や気温に関係なく
モノ凄く寒いのだ。前回の堰まで下ろうツーリング第2弾では向かい風に苦しめられたらしいアビルマン隊員が風を気にするのも致し方ないことだった。
 が、地理的条件で言えば、長良川は大垣の手前辺りから進路を西から西南、そして南へ向けて曲がっていく。今回、当初予定していた長良川コースはもうほぼ真南を向いているため、北北西から伊吹降ろしが吹いてもただの追い風である。
 その旨をアビルマン隊員に伝えると
「それなら行きましょう!」
という現金な返事である。岐阜のショップに着いた時には長良川・堰まで下ろうツーリング第3弾決行が決定していた。
 メールでやりとりしていたため、事情を知らないうーやん隊員に説明する。当然行くことになる。なにしろ3人ともカヌージャンキーなのだ。話は早かった

 元来た道を戻り、前回のアウトポイント・ゴルフ場を下見する。アビルマン隊員が荷物が全然積めない2シーターの車で来てやがるので回送が大変だ。そのエントリーポイントの草むらにカヌー道具を降ろして隠し、下流のアウトポイント探しに向かう。
 ウロウロした結果約7kmほど下流の大藪大橋下流の左岸に、車で入れて川からも容易に上陸可能なポイントを発見。そこに2台車を置き、オレの車に全員乗って再びエントリーポイントのゴルフ場を目指した。

 ゴルフ場からエントリーしたのは13時を回った頃だった。エントリーした時、風はそれほど吹いては居なかった。しかしそのまま行けると思ったのはちょっとアマかったということを、我々は後から思い知る事になる。

 天気は快晴、水質はアビルマン隊員曰く、
「先回よりいい」
とのことだ。11月に行った12月の気候での木曽川ツーリングよりは寒くない感じだ。意外といい感じに漕いでいける。南に向いているのでずっと前方に太陽が見えているのも心強い。

 長良川下流域は他の川の下流域とは違って、かなり流れている。堰まで30km余りとなったこのあたりでもまだ十分に流れていた。
 しかしさすがにこう川幅が拡がってくると景色があんまり変化しない。堤防の風景も、行けども行けども似たような感じである。風景が変化しないと面白くないから湖には行かないというイシカワ顧問だったら、ヒマでも絶対来ないようなコースであることは間違いない。
 
 左岸の工事現場のような所に外装のサビたしゅんせつ船が停泊していた。なんだか哀愁ある風景だ。こういうのを見るとついカメラを向けたくなるのだが、画素数の少ないイイかげんなWEB用デジカメなのであまり良いのは撮れない。残念だ。
 川からの風景は時々とてもフォトジェニックである。しかし多くの場合、結構流れている渓谷の中だったり、引っ掛かってしまいそうな瀬の直前だったりして、あんまりゆったりとは写真を撮っていられないような状況であることが多い。今回はワリと余裕があるにはあるのだが、やはりフネの上からというポジションでは撮れるものは知れている。
 しかも望遠レンズが無いどころかズームすら付いていない
テキトーなデジカメをビニールのお手軽マリンパックに入れてあるだけなので、画質もすこぶる悪いのだった。
 来年はもうちょっと画質のいいカメラで撮れる方法を考えようとカタく心に誓う。

 そうこうするうちにさっそく腹が減ってきた。流れもあって、微妙に追い風も吹いているため意外とスイスイ進み、既に半分くらい来ているのでそろそろランチポイントを探し始める。しかし都合のいい川原がない。
 いつもの如く、気持ちとしてせっかくカヌーで来ているのだから、カヌーでしか行けないところ(堤防から車なんかで入ってこられないところ)でランチを摂りたいのである。
 結局長良川のど真ん中、名神高速道路の橋桁下のスペースに上陸し、風よけに橋桁の陰でコンロセットを取り出してお湯を沸かし始めた。
 天気はすこぶるよく、南からシッカリと陽が差しているが風が強い。止まってみて初めて気が付いたのだが、ジツは結構追い風が強く吹いていたのだ。フネに乗っている間はほとんど感じていなかったが、意外と風速がある。知らず知らずの間にかなりラクさせてもらっていたようだ。

 うーやん隊員は寒がって
橋桁にピッタリくっつき、風を避けている。この師走にカヌーに乗るという時にいつものウェットだけで来ていたので、オレが以前の冬の木曽川ツアー時に買って履いていたPVC防寒ズボンを貸してあげていただけまだ全然マシのようではあったが。
 それにしてもその防寒ズボンを履いたうー隊員は、どっから見ても完全に
「魚河岸のオバサン」であった。しかし本人曰く、
「寒いのには代えられない!」
とのことだった。ファッション的には許せないので履きたくないところだが、やはり着てみれば暖かく手放せないものなのだ。
 しかしオレとアビルマン隊員は、うー隊員のそれが余りにも似合ってハマっている、いや、もう完全に自分のものとして
着慣れているようにすら見えたので、別に笑う気にもならなかったほどである。

 強風の中やっとお湯が沸き、この冬の長良川・堰まで下ろうツーリングではもうお馴染みとなった“鮫”的には貧しい昼食・カップラーメンを作る。と、そこでこ
わばったような笑顔のヤツが一人居た。
 「お湯入れ終わったら鍋借りて良いですか?」
なんとアビルマン隊員はカップラーメンではなく
袋ラーメンを持ってきていたのだ。コンビニで買うのがめんどくさかったのだろう。自宅にあったのをそのまま持ってきただけ、という感じである。
 カップにお湯を入れた後、水が少なくなったので再び少し足して加熱する。結局、オレとうー隊員が食べ終わった頃にやっとぬるいラーメンを食べ始める悲しいアビルマン隊員なのだった。

 
それにしても寒い。風が吹いているというだけでこんなに寒さが倍増するものだろうか。我々はそそくさと後かたづけをし、再びフネに乗り込もうとした。
 と! 人の視線を感じるではないか。見ると、20mほど離れた対岸の橋桁下に3人の男達が仁王立ちしてまっすぐこちらを見ているではないか。
 工事関係者か何かかと思ったが、似たようなスラックスに、3人とも同じ紺色無地の布製ジャンパーを着ている。足下はお揃いの黒い皮のビジネスシューズだ。ファッションのチグハグさから一見して日本人ではない。何者? という緊張が我々の間に走る。  
 3人が3人ともズボンのポケットに両手を突っ込み、少し足を開いた構える様な姿勢で等間隔に並んで、ジッと仁王立ちしながら無言でまっすぐこちらを見ている。歳の頃は20代後半、七三に分けた
30年前のサラリーマンのような髪が強風で乱れている。なんかのチームだろうか。どちらにせよ、かなり怪しい(ってゆーか、真冬に橋桁の下にカヌー付けてラーメンすすってるオレたちもだけど...)。
 彼らの見守る中、我々はカヌーに荷物を積むと離岸した。怪しい男達が何かしゃべっているのが聞こえた。中国語のようだったが
(まさか今流行りの「ヤツら」では!?)
と思わせるような不気味さがあった。いったい何者なのだろう。我々が離れていくと彼らは橋桁の裏に消えて行った。とても怪しかった。sakuzo隊員がいたら
思わず職務質問してしまうところだったであろう。

   そんなこともありながら、我々は後半戦に突入した。風はますます強くなっている。遂に川面には波が立ち始めた。フネの向きと風の向きがほぼ合っていたので、微妙なコントロールで波に乗ることができた。ウェーブスキー状態である。
 我々はちょっと漕いでは波に乗り、またちょっと漕いでは波に乗るということを繰り返して遊んでいた。こうなると追い風も楽しいだけである。風ってヤツは冬には普通に吹いてるだけで寒くて寒くてたまらずムカつくものだが、こういうときだけは楽しませてくれる。そしてフネに乗っていると追い風なら寒さなどほとんど感じないのだ。

 こうして後半は遊びながら波に乗ってやたら早く進んでしまい、午後約3時半、我々は予定の川原に到着。堰まで下ろうツーリング第3弾は幕を閉じた。

 
 それにしても堰までまだ20km以上ある。この辺りから先はさすがの長良川とはいえ、流れも徐々に無くなって淀み、静水に近づいていくことが予想される。そうなると当然、一回あたりに漕げる距離も短くなってくるだろう。
 果たして、河口堰に辿り付くのはいつなのか? それは誰にもわからない。

 てなコトで公式活動回数42回(活動記録参照)を数えた名古屋カヌーチーム“鮫”の2002年、これにて閉幕。
 よいお年を。



河口堰まであと約24km




今回の教訓: 「伊吹降ろしに勝つためには、ファッションより防寒!」