道の駅「織部の里もとす」に僕は立っていた。
今日はただの平日だ。みんな仕事をしてるはずなのに お盆休みに働いていた僕は振替でもらった休日に有休を混ぜて、「9連休」をとってきていたのだ。
そして僕はここで、つい三日前にはシミズ隊員を連れて「恐怖の自主トレ 上官とお呼び!!本部長への道編」とそれはそれは恐ろしいタイトルの自主トレを行ってきたsakuzo隊員を待っていた。
三日前の自主トレでは発電所の瀬で知られるコースよりも上流部を漕いだとのことだが、今日はその更に上流であり、まだ根尾川になる前の「根尾東谷川」をスカウティングがてら漕ぐコースだ。sakuzo隊員が事前にスカウティングしてくれていることもあり、インとアウトの場所は決まっているため 二人はそそくさとアウトポイントへ向かう。途中、シミズ隊員と下ったというコースを横目に見ながら上流を目指すが、川幅のわりに水が少なくザラ瀬が多い感じだ。
シミズ隊員も連絡板で「水量はギリギリ」と書いていたが、まさしくその通りであった。
そしてアウトポイントに僕の車を残し、更に上流の根尾東谷川へ向かう。
途中でsakuzo隊員が車を止めて
「この辺はスカウティングできんのですわ〜」
と、下を覗きながら言う。
たしかに木が邪魔をして川が見えない。隙間から見える部分だけでは白く泡立っている気もするが、遠いためわかりにくい。
若干の不安を残しながらも 男二人のスカウティングツアーで、できるだけ艇から降りてスカウティングをしながらの予定だ。最悪の場合、ツアーを途中でやめる覚悟できているのだ。
しかし、たしかに道路からは見れないコースが多い。トンネルの脇に川に沿って走る側道があるが、怖いので通るのをやめてさらに上流を目指す。橋の手前で交通整理のおばさんが立っている。どうやら先日の集中豪雨で土砂崩れが起きて通行止めになっているらしい。
迂回して根尾東谷川にかかる新松田橋のやや上流部で我々はセットアップを開始した。
今日は二人ともGUMOTEX・SAFARIで 赤い二連星だ。途中で小雨がパラパラ降り出してきたので天気予報が当たらないことを恨めしく思ったが、どうやらすぐに止んだようだ。
僕がエディーで漕ぎあがりの練習を始めると一台の車が我々を見つけて止まり、おじさんが降りてきた。
どうやらこの辺は菊花石の産地? で有名らしく、それを盗みに来る人が多いらしい。僕たちもそういう風に見られたのだろうか? たしかに、sakuzo隊員の風貌は怪しいが、僕はかなりマジメなサラリーマンっぽいのだが。。。(←それはナイ:by隊長)
僕らがカヌーで下ることを伝えると
「すごい落ち込みがあってそこは危ないね〜」
って言っている。そこはなかなか人も入って行けないトコらしく、釣りをするとかなりの大物が釣れる時もあるらしい。
その後にも越えられない堰堤があるよ、って教えてくれた。どうやらアウトポイントの後にある堰堤のことらしい。
心配してくれるおじさんに無理はしない旨を伝え、スタート!
川の水はかなりキレイだが量が少なく スタートしてすぐ腹を擦る我々。。
正直「ヤバイな〜〜〜」と、思いながら流される。最初は人家が川に沿って建っているので不思議な感じだ。しかしすぐにそれもなくなり、渓流的なロケーションへと変貌する。
僕はワクワクしてきた。初めて来る川特有の、このワクワク感が僕は好きなのだ。
次第に景色は人工物のない世界へと変わる。ビニールなんかのごみが枝なんかに引っかかっているのが気になるが、それでも山の木々に囲まれた狭い川幅が僕をトロけさせてくれていた。sakuzo隊員もスカウティングこそしており、景色は見ているが、ダッキーで下りながらの最高のロケーションにいつもは見せない満面の笑顔だ。
そうこうするうちに太陽が顔を見せ始め川面を照らし出す。最高のロケーションと水質に最高の天気。この時すでにみんなを連れてまた、来ようと心に誓う二人だった。
しかし、水量が相変わらず多くないのと、岩が多いためそれをよけるのに苦労する我々。
SAFARIのような小型の艇だからいいが、AIR系の大型艇では苦労するだろう。
ま、隊長のようにテクがあれば良いだろうが初心者向けではないかもしれない。さらに厄介なのは、見た目以上に流れが速いため岩を避けるのが難しいのだ。
そうして、二人で流されているうちに疑問が沸いてきた。
川の色が微妙に変なのだ。水質はかなりキレイなのだが、流れが帯のように見える。
たぶん、それは川の流れの速さの違いによって、速いところ=細かい砂利になっていて青白っぽい。普通のところ=コケが生えててやや茶色。に、なっているためなのだろう?
本流とも言えるべき青白いコースは、コケも生えられないくらい石が細かく速いのだった。それが判る位水質がいいのもあるのだが。
ということは、できるだけこの青白い帯状のコースを通れば、流れに乗って進むことができるのではないだろうか? そう考えて僕はコース取りを決めた。
途中で集中豪雨のため、木々がなぎ倒されている箇所が幾度も現れ、自然の脅威を感じながら我々は進む。
根尾東谷川は地図でもわかるように、かなり曲がりくねって流れており、直角系のカーブが多い。最近はあまり沈しなくなった(?)僕だが、相変わらずドリフト航法ができないため、やはり沈。。もうずぶ濡れだ。さらに追い討ちをかけるように、アブや羽虫が僕らを襲う。羽虫はずっと顔の辺りにまとわりつくのだ。これはたまらない。
さらになんてこと無い隠れ岩に悩む赤い二連星。やはりSAFARIの敵は浅瀬なのだ。岩沈をそつなく増やす二人。。。
そして、前方にいかにも怪しい岩場が現れた。先が見えないため艇から降りてスカウティングすることに。岩場を登り、歩いていく。sakuzo隊員は慣れているのかスイスイ歩くが、都会(島)育ちのお坊ちゃん? の僕は次第に置いていかれる。
狭い川に大きな岩が多いため、かなりテクニカルなコースになっている。
前方のsakuzo隊員が僕に
「これですね。かなりやばい落ち込みです」
と声をかけてきた。
僕も追いついて見に行く。。。
「確かに、ヤバイっす!逃げましょう」
と判断した。
大岩が作り出すその落ち込みは真っ白で滝のようになっており、狭くてとても入れるところではなかった。幸い、その左手には迂回路があるためそこからポーテージすることに。
そのすぐ下には楽しそうな瀬があるため、そこから再スタートだ。
艇に戻って落ち込みの手前まできて二人でポーテージ。その下からすぐにエントリして、sakuzo隊員が先に瀬にトライ!
しかし、手前で岩にひっかかってしまった。そして動かないsakuzo隊員。。。
「????」
後から聞いたのだが、どうやらサイストラップが絡まって動けなくなっていたのだ。
結構、流れが速いところでひっかかってしまったのでうかつに動けなかったらしい。リカバリしているsakuzo隊員を横目に、僕は落ち込みのスグ下からトライ。
途中でひっかかりそうになるが何とかクリア!
それを見たsakuzo隊員も再チャレンジし、見事にクリア!
そして、ここで今日の昼食をとることに。今日は二人なのもあって弁当持参だったのだが、sakuzo隊員がソーセージを差し入れしてくれたので、ボイルしてかぶりつく。
マスタードとかは無かったが(次回からは準備させていただきます:sakuzo隊員談)十分、美味しい! 次の給食当番の時はビールとボイルソーセージでバイエルン祭り(?)もイイと僕は思った。
そしてカップスープも頂き、食後にはコーヒーまでご馳走になってしまった。カフェインは満腹でお眠りモードに入りかけた脳を覚醒する。
川は相変わらず見た目以上の速度で流れていた。雲の隙間から太陽がチラチラと顔を覗かせて川面を輝かせている。今日は平日なのに、男が二人で岩の上に登ってコーヒーを飲んでいる。しかも、ここは道路からは絶対に見ることができない景色なのだ。
鮫も最近では、過激なホワイトウォーター系の人が増えているが、僕は癒し系? のこういう川の方が好きだ。
そしてマッタリした後、後半戦スタート!
まもなく撮影ポイントがあり、かっこいい写真を撮ろうとカメラを構える。僕は難なくクリア。sakuzo隊員はまたもや岩に引っかかり撃沈。「私の恥ずかしい写真」になってしまっている。
そこから先はあまり岩場もなく川幅も狭くなっているが、帯状のコースを辿りながら川下りを楽しんだ。ここからなら初心者でもこの川を楽しむことができるのだが、残念ながら、道路からエントリする場所が限られるため難しいかもしれない。そしてさらにまとわり付く虫たち。
川の流れにドンドン流されて行く我々。sakuzo隊員はゆっく〜〜り漕いでいるせいか、僕とかなり離れている。後ろを振り向くとsakuzo隊員の後ろには大きながけ崩れの後が。。。漕いでるsakuzo隊員には見えないようだが、凄まじい傷跡だ。ちょっとビビる、アビルマンであった。
そんな中、川原で休憩しながらsakuzo隊員を待っていると、水面に大きな魚影が。出会ったおじさんが言っていたように、人が入りにくいため魚も大きくなるようだ。
すっかり上機嫌の我々はアウトポイントに着くのを惜しみながら漕いでいった。
が、、、前方になんと、堰堤が!
おじさんの言っていた堰堤とはこれのことだったのだ。しかも、2段式になっており1段目は15mくらいの落差はある。しかも、両脇は人が通れそうなコースもない。周りには道路もない。。。
少し焦ったが、やや上流に この堰堤を作るときに通ったと思われる道の跡を発見。どうやらここから道路に出られるようだ。
ひとまず艇をここに置いて、予定していたアウトポイントにある僕の車まで歩いて行くことに。
道の跡には木が倒れ道を塞いでいたが、それを避けながら何とか道路へ。そして根尾村の住宅街を通り抜ける怪しい男二人組。。。
どうみても怪しい。ずぶ濡れ状態で、荷物も何も持っていない男達が歩いているのだ。僕はまだしも、sakuzo隊員はかなり怪しい。(←二人とも怪しい!)
そんな二人を見つけたお婆さんが声を掛けてきたので、カヌーで川下りをしている旨を伝えると驚きながらも近道を教えてくれた。お礼を言って歩く我々。途中、間違えながらも何とか車に到着。上流に止めてあるsakuzo隊員の車を取りに向かい、また堰堤のところまで戻ってきた。
最後は重い荷物を担いで道の跡を登って車まで。これが一番疲れた。
それでも、人知れず僕らが来るのを待っていたかのように根尾東谷川は素晴らしかった。
「また、来ましょう!」
ここをスカウティングしてくれたsakuzo隊員にお礼を言いながら解散したのだった。
今回の教訓: |
「根尾東谷川は自然の素晴らしさを教えてくれる川です。 でも、虫に注意!」 |
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