活動記録其の17・大井川編
文:隊長
2001年7月15日
汽笛が沈を呼んでいる!?
〜SLが走る“叙情系”大井川に3隊員沈む...〜
「箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川」
・・・越さないで下ってきました。

 どっかのチームの助っ人外人のバットの様に大きくカラ振りしてしまった今年の梅雨も明けた7月15日(日)、我々は渇水の危機をはらむ大井川へと向かった。集合場所となったいつもの東名高速・浜名湖サービスエリアにはオレ(隊長)、ラスティック伊藤隊員、そして今回初参戦となる、チーム“鮫”これまた初の“夫婦(めおと)鮫”となるmiki-fish夫婦隊員の4名がいた。朝だというのに超・晴天のため、やたら暑い。集合時間の10時を微妙に過ぎた頃、かわいい花柄アロハを身にまとったイシカワ顧問が到着。メンバーはこの他にまだ、その時東名・豊田付近を走っていた遅刻トリオ、土居隊員・イチロー隊員・オカモト隊員の3名を足して8名という、今年最高の遠隔地にも関わらず、参加人数も最高を記録していた。3隊員の到着まで30分待つ気がしなかった我々は、大井川に最も近い相良牧之原インターまで行き、そこで待つことにする。
 我々が相良牧之原に着いて20分後、遅刻トリオ到着。さっそく国道473号線を北にひた走り、金谷でスーパーに入って食糧を調達し、再び北上する。途中からグネグネした山道ばかりの県道に入り、しばらく走るといつのまにか、大井川沿いであった。

 大井川は静岡県の西部と東部の境目ぐらいを流れる大河...のはずだったが、なんだか川原がアホのようにだだっぴろいだけで、水量はちょぼちょぼって感じに見える。周りを山に囲まれていてロケーションはいいのだが、ちゃんと漕行できるのかイキナリ心配になる。

 そしてなぜだか川沿いの道のあちこちにやたらと、
カメラを三脚に据え付けて遠くを見ているおびただしい数の男たちが見受けられる。ってゆーか、ほんとにその数がハンパじゃない。多い区間になると100mの間に50人ぐらいはいそうだ。

「な、な、なんだなんだ?我々の遠征をどこかで聞きつけて写真を撮りに来たのか?」

「何か珍しい鳥でも飛んでくるのか?」


 などという会話が我々の車の中で交わされていたのだが、たかが鳥の写真撮るためだけにこれだけの数の人間が集まるとは経験上考えられない(←ジツは大学の時はバードウォッチングのクラブに入っていたオレ)。まるで日本全国から集まってきたぐらいの勢いの人数が、しかも男ばかりがその撮影にこれほどの情熱を傾けるものといえば「レースクィーン」と相場が決まっているが、こんな山中の川原にそんなハイレグなおねーさんたちが飛来するワケもなく、当然のようにその男たちの正体はいわゆる「鉄ちゃん」なのであった。
 そうである。大井川→大井川鉄道→SL→鉄道マニアという“鉄の方程式”が成立するため、日本全国から彼らは“聖地”大井川に集っていたのであった。かくいう我々も今回、このSLを眺めながらのリバーツーリングも楽しみにして来ていたのはいうまでもない。
昨年某ショップのツアーで大井川を下った経験のあるmiki-fish夫婦隊員に先導を頼み、途中の工事現場前の川原をアウトポイントに定めた我々は2台の車に分乗して15km上流の千頭(せんず)に向かった。しかし、途中の峠道で極度に狭い箇所がいくつかあり、そこを観光バスや宅配便トラックなどの大型車両が通過する際に起こる山道大渋滞に巻き込まれてしまう。10分もかからない距離を30分ほどイライラしつつ車中で過ごすことになってしまった。ラスティック伊藤隊員はガソリンの残量がジワジワ減ってきているのに神経を尖らせている。燃料を満タンにせずにここまで遠征して来てしまっていた彼は、高速代が思わぬ高額だったため、残った所持金の使途が帰りの高速代か、それともガソリン代か、という究極の選択を迫られつつあった。時々Eランプが灯いたりして、オレまでドキドキする。
 結果14時近くなってしまったため、我々は距離を縮める作戦に出ることにした。miki-fish夫婦隊員の“航空母艦”GUMOTEX オリノコ、“撃沈王”イチロー&オカモト隊員と土居隊員の戦艦・ヘリオス2隻というGUMOTEX軍団3隻と、ラスティック伊藤隊員とオレのスターンズチーム2隻、そしてイシカワ顧問のバトルシップ・AIRE−カラカルという6隻の大船団は、千頭より2・3km下流の柳崎大橋の下あたりからエントリーした。予定距離は14km前後のハズであった。


 大井川は以前に行った気田川を、周りの山から川幅から川原の広さ、サイズを2倍くらいに拡大したような川だった。眼前にはよく晴れた青空が大きく拡がり、川原も広いため非常に開放感がある。水質は結構いいのだが、水量は気田川の3分の2くらいなのだった。浅いところがやたら多く、ワリとしょっちゅうライニングダウンする必要がある。そーいえば小学校の歴史で習った大井川は「越すに越されぬ」といっても、単に徳川幕府の施策上橋が無くて川人足の人たちに担がれて渡る川、という意味だった。待てよ、ってコトは浅いってコトじゃあ...? 確かに歩いて渡れる所がそこらじゅうにある川だ。瀬も2級すらひとつもないような状態で、流れの蛇行の仕方、瀬の感じも気田川とよく似ているものの(気田川の直角の瀬みたいなところがいくつかあった)水量が少ないので迫力はない。やはり山が開けてしまうと、その分流れは緩くなってしまうのだろう。



しばらく行くと鉄橋が見え、岸辺のあちこちが鉄ちゃん軍団でてんこ盛りの箇所にさしかかる。カメラの放列の前を通り過ぎるのが少々こっぱずかしい(って、鉄ちゃんからすればまったく眼中になかっただろーけど...)。そしてオレとラスティック伊藤隊員が鉄橋の下をくぐった、その時! 「ボォ〜ッ!」という汽笛が聞こえ、周りの鉄ちゃん達が色めき立つのがわかった。SLが来たのである。ガタンゴトンと音を響かせ、列車がやって来るが、想像していたような「シュッシュッポッポッ」という白煙を吐きながらの登場ではなかった。窓から笑顔で手を振っている人が見える。それはどうやら鉄ちゃん達ではなく、川の上の我々、その時すぐ下でパドルを振っていたイチロー&オカモト隊員の2人艇や、ぼんやり上を見上げていたラスティック伊藤隊員に向けられているもののような気がした(←気のせい?)。青い空をバックに鉄橋を通過していくSL。川の上から手を振り返す我々。オレもパドルを頭上に掲げて応える。その時やっと大井川に来た、という気がした。後でわかったことだが、このSLは一日に一本だけ、しかもこの時間にしか走らないらしい。他はフツーの電車なのだ。俺たちはそんなSLを橋のすぐ下から見ることができて、本当に運が良かったようだ。

さて、いつも通りまったりと下っていた我々を突然の事件が襲う。その静寂を破った発信源はもちろんこの男、
もはやある意味チーム“鮫”を代表する、まさに押しも押されもせぬ不動の地位をゲットしたオールスタークラスのスーパースター(←意味不明)“ザ・スーパー・撃沈王”イチロー隊員である。なんでもない左カーブの瀬(1級もないと思われる)をイシカワ顧問、オレ、伊藤隊員、miki-fish夫婦隊員が通過した後、後方から「わぁ〜!」という悲鳴が聞こえる。振り返ると例のイチロー&オカモト隊員のお笑い二人艇が、以前の揖斐川の「Wの瀬」の時と同様の姿勢で、またしても“スライディング沈”をカマしていた。「撃沈」とは言い難いくらいのセコいところでの沈である。かといって“鮫”的には「疎沈」てほどでもないので「小沈(こちん)」と命名する。こんなユルい川に来てまでも、やはり油断大敵なチーム“鮫”なのだった。イチロー隊員たちはお互いに責任をなすり合いながらも、まるで人ごとのように
「左カーブがダメですな!」
などと明るくほざいていた。まったく愉快なオトボケ・コンビである。

 しかし、割ってみたら一人アタマ300円也という激安・かき揚げうどんの昼飯の後、しばらく行った所で今度は、miki-fish夫妻の夫隊員の方が小さな右直角カーブで岩肌に激突して一人だけ振り落とされ、小沈してしまう。小沈は伝染るのかっ?! ってゆーか、恐るべし“航空母艦”オリノコ! オレはその一部始終をスグ後ろから見ていたのだが、後部座席に座っていたmiki-fish夫隊員が沈しても妻隊員は「何で落ちたの?」とキョトンとしており、フネもビクともしていなかった。相当の横Gがかかっても、その405cmもある巨体は安定性バツグンのようである。さすがGUMOTEX最大にして最上位艇だ。


 それにしてもなぜ「二人艇に二人乗り」に限って沈するのか!? これもチーム“鮫”の謎のひとつであろう。

後半、午後17時を過ぎた頃、そろそろみんなに疲れが見え始める。先頭と最後尾の距離が目に見えて開いてきた。イシカワ顧問と共に先を行っていたオレは、何度となく溜まりに入って後続が来るのを待っていたが、徐々にみんなが追いついてくるのに結構な時間が掛かるようになる。漕行流域の地図がないので(もっと上流の地図しか持ってなかった...)よくわからないが、どうやら14km前後と思っていたのが大きなマチガイで、18km近くあるようだ。しかも水量が少なく、また、なだらかなため当然流速も遅い。
 予想以上に時間がかかり、結局オレがゴール地点に着いたのは約18時である。岸で待っているとしばらくしてラスティック伊藤隊員、またしばらくしてイシカワ顧問と、着々ゴールしてきたが、ラストの土居隊員が到着したのは18時30分を少し過ぎていた。

 それからフネを片づけ、上流の車をピックアップして帰路に就いたオレが200km近く離れた家にたどり着いたのは23時過ぎであった。イシカワ顧問とmiki-fish夫婦隊員は近くにある落合博光推薦(←意味不明)の温泉に寄ったりしていたため、帰り着いたのは日付が変わった頃であったという...。
 ゴールも遠かったが大井川も遠かった。カヌー疲れより運転疲れした。次回、遠出するときは前日入りで一泊し、早めに上がるようにしようと固くココロに誓ったオレなのであった。


今回の教訓: 「遠出する時は燃料は満タンにしておこう!
 ってゆーか、遠い所の日帰りはやめよう!」