活動記録其の61・天竜川編part-4
文:隊長
2002年9月22日
さらば、ためごろう隊員! 
〜一ヶ月ぶり今年3度目の天竜川・鵞流峡は渇水!? 〜
  ためごろう隊員がチームを去ることになった。
 約8ヶ月前、神奈川から会社の転勤指令によって名古屋にやってきたためごろう隊員だったが、今回思うところあって退社を決意し、また神奈川に戻ることとなったのだ。

 その離隊するためごろう隊員を送るツアーを開催する場所として選ばれたのが、天竜川である。その理由は
@ためごろう隊員が行ったことのない川であること
Aまだ鮎釣りが終わっていない川もあるため、現在行ける川であること
Bファイナルツアーにふさわしい“ドラマ”が生まれそうな川であること
 の3点による。

 さて、早速天竜ライン下りの時又港に着いた我々であったが、いきなりハプニングが起こっていた。
「すいません、
今日やめていいですか?
 土居隊員、川を目下にして早くもリタイア宣言である。
 それは、彼がここまで来る途中の国道153号線で実施されていたネズミ取りに引っかかり、38kmオーバーでマイナス6点という高得点を叩き出してしまったことに起因する。いきなりスターンズが買えてしまう金額が吹き飛び、へこんでしまった土居隊員は
「僕はもう帰ります」
とうなだれていた。しかし、ためごろう隊員には
「神奈川に帰っても頑張ってください!!」
と、やたら元気に言って力強く握手をした後、自分は
肩を落として去っていった。その後ろ姿にとても微妙な哀愁が漂っていたのは言うまでもない。川まで来て何もせず去っていくとは...。せっかく最近約1年ぶりに復活したのに、また活動休止になりそうな勢いである。しかしほぼ「勢い」だけで生きている土居隊員にとって、それを削がれるということは生きていくエネルギーが枯渇するのと同じなのである。仕方あるまい。また勢いに乗るまで待つしかないようだ。

 と、川まで来た途端参加者が一人減り、結果本日のメンバーはオレ、ためごろう隊員、シバタ隊員、黒太隊員の4名となった。そしてなんとフネはオレ&ためごろう隊員の30代コンビがスターンズ・リバーランナー、シバタ隊員&黒太隊員の40代コンビがアワーズの渡り鳥&旅鴉という不思議な勢力図となってしまっていた。
 土居隊員の棄権により、くしくも実現した
30代・スターンズVS40代・アワーズという日米艇&ジェネレーション対決の結果は如何に!?

 前回と同じコースだと距離が長くなるので、今回は標準コースとして弁天港エントリー、阿知川アウトとする。阿知川に移動すると釣り師の人が何人かいて、親しげに話しかけてきた。カヌーをしに来た我々にフレンドリーな所がさすが天竜川の釣り人である。
「今日は水が少ないよ、だいぶんと引いとる」
 という釣り師さんの言葉を引くまでもなく、今日の天竜川は水が少なかった。やはりここ最近、東の方は降っていないと思っていたが、それがてきめんに水量を下げる結果となっていた。以前来た時よりもかなり水際が後退している。
 といっても今日はオレ以外全員天竜川は初めてなので、水量は少ないほうが安全と思われた。オレも前回鵞流峡入り口の“
メンコ返しの瀬(←後からアビルマン隊員が命名)”で撃沈しているので、一応はリベンジである。

 約11時半、弁天港からエントリーする。天候はイマイチだ。釣り師さんの話だと
「今日一日はもつ」
とのことだったが、エントリー直後にはもう雨がパラパラ降りだしていた。当然重たい色をした曇天だ。なぜ天竜川に来るといつも雨が絡むのだろう。なんだか
龍神様の因縁を感じずにはいられない。
 エントリー後釣り師さんが何人か川の中に立ちこんでいたが、ライン下りのフネと同じコースを通ったり、後ろを通過したりで普通に抜けた。と、シバタ隊員が遅れている。エントリー直前に愛艇“しばっち2号”アワーズ・渡り鳥のフロアチューブの片方がエア漏れしているのか、柔らかくなってしまっていた。再注入したのだが、また抜けてきてしまっているようだ。
聞いてみると片ケツ状態だが、なんとか行けるらしいのでそのまま進むことにする。鵞流峡前でまたエアーを再注入するチャンスもあるし。

 流れが二股に分かれている所があり、いつもの左コースを行こうと思うが、一応ためごろう隊員の希望を聞いてみる。すると
「撃沈する可能性の低い方でお願いします」
とのことなので、右のライン下りコースを行くことにする(とか言いながらこっちのルートを行くのはジツはオレも初めてだったりして...)。
 どうやらためごろう隊員は引っ越しを前にしてこれが最後のチャンスとばかり、最近連日カヌーに行っているため、今日はかなり疲れが溜まっているようである。
 しかし今日は他ならぬそのためごろう隊員のさよならツアーなのだ。製薬会社に勤めるシバタ隊員から発売前の新製品のドリンク剤(試供品)を差し入れてもらって、エネルギーは十分のハズなのだが...。

 しばらく行くといつもの鵞流峡入り口を示すヘンな竜の絵が左岸の護岸に見えてきた。その手前には、水量が落ちているものの結構なウェーブができていて、全員そこでストッパー突入の予行演習をする。ためごろう隊員が瀬のセンターをハズしているのがちょっと気になる...。
 片ケツのシバタ隊員にエアーを再注入するか聞くが、このまま行くというので、上陸はしなかった。と、前方に我々が車でスタート地点に着いた時、チラッと目撃したポリ艇の一団が見えた。瀬遊びでもしていたのか、足が遅いようだ。
 鵞流峡へ向けて進む第一弾の長瀬に突入する。水量がかなり減っているので瀬が浅くなり、いつもなら大きなウェーブになっている所が大人しい。
(こういう時は...)
と、思うとやはりである。水量が落ちている時は落ち込みの落差も大きくなっているのだ。案の定、長瀬の途中にかなりデカいストッパー状になった落ち込みが一つあってヒヤリとする。チキンコースを行けばどうってコトないのだが、それでは今日は面白くないのだ。全員無事に抜けてきたが、シバタ隊員は
「結構デカいのあるねぇ、鵞流峡ってのはあんなんがいっぱいあるの?」
と、やや不安げだ。確かに
片ケツでは不安になるのも無理はない。
「今のを越えられれば大丈夫ですよ」
と一応安心させておくことにする(←このヘンの気配りが一応隊長っぽい。ま、裏目に出ることも多々あるが...)。

 そしていよいよ鵞流峡入り口の橋が近づいてきた。しかし前回はあの橋の下にたどり着く前に撃沈し、漂流したまま橋をくぐるという痛恨の経験をしているオレはちょっと緊張していた。
 流れがいったん右岸に寄り、崖に向かって大きく弧を描いて左にカーブしていた。そのカーブの途中に崖から崩れ落ちた岩が作り出している大きな落ち込みが二つある。それがあの憎っくき“メンコ返しの瀬”だ。慎重にコースを選ぼうとするが、避けてしまってはリベンジにならない。ど真ん中に向かって突っ込むが、前回は水量が多くてウェーブだったものが、今回は水量が少なくて落ち込みになっている。
「うぉぉぉーっ!?」
と思わず叫んでしまう。落差は2級前後なのだが、何しろスピードが早い。これが
ハイスピードな沈を生む理由のひとつなのだろう。落ちる一瞬、歯を食いしばる。ザブゥンと波に突っ込んでグラリとするが、無事バランスを立て直して脱出。次の落ち込みもかなり大きかったが無事クリアすることができた。
 水中を流されてそのまま瀬に落っこちていた前回の忌まわしい記憶がフラッシュバックされたが、もう振り払うことができた。超・水船になったシャーク3号を、余裕が持てる所まで行ってからターンさせると後から来る3艇が見えた。
「ありゃ!?」
 ためごろう隊員が、
超内側のチキンコースでエディーにハマってくるっと回っていた...。なんじゃそらである。いきなりビビッてしまったようだった。

 続いてシバタ隊員の“しばっち2号”アワーズ・渡り鳥が見えた。こちらは思いっきりメンコ返しの瀬に突入、あの安定感バツグンのアワーズが木の葉の様に波に揉まれて激しくバランスを崩していた。
「あっ!」
一瞬終わったかと思わせるほどの角度になるが、なんとか持ち直してクリアしてくるシバタ隊員。さすが筋金入りのアウトドアマンである(←意味不明)。
 そして最後は“鮫”の新鋭・黒太隊員だ。しかしメンコ返しの
一発目でドン! という突き上げを食らってあえなく撃沈してしまった。前回のオレほどではなかったが、コテン! という感じの結構ハイスピードな沈であった。
 そのまま二つ目の瀬に落ち、フネもろとも流されてくる黒太隊員。まったくもって前回のオレを見るようである。そのまま橋をくぐり、オレが救出されたのとほぼ同じ位置でなんとか左岸に上がることができた。先に行ったポリ艇のみなさんがその一連の騒動を心配そうに見ていたが、黒太隊員が岩場に上がるのを見ると安心したのか行ってしまった。
 チームとしてはちょっとカッコ悪い所を見られたが、仕方がない。まぁライン下り観光の観光客に目撃されなかったのでヨシとしよう。

 岸に上がった黒太隊員は愛用の帽子と、黒太隊員をジャン・レノに見せていたレイバンのサングラスを失っていた(←帽子はすぐ後に回収に成功)。
「初めての撃沈です」
 黒太隊員は息も絶え絶えに言った。スターンズ・レイカータンデムとアワーズ・旅鴉という安定度の高いフネを駆る黒太隊員としては、撃沈すること自体かなり珍しい経験に違いないとは思っていたが、まさか初とは...。
 
 てなコトでまたしても
鵞流峡に沈したまま突入してしまったメンバーを出したチーム“鮫”である。鵞流峡中程にある落ち込みをクリアした後、黒太隊員の体力回復の意味もあり、結局またいつもの岩場で昼食を摂ることにする。
 上陸すると反対側に先ほどのポリ艇の一団も上陸し始めている。川を挟んで右岸が我々、左岸がポリ艇の一団という、ちょっと謎の構図がその時鵞流峡には展開されていた。
 よく見ると向こうには女のコがいるばかりでなく、外人さんも何名か混じっている。男女混合多国籍チームのようだ。海外からわざわざ鵞流峡にチャレンジに来たのだろうか?(←んなワケねぇ)
 シバタ隊員は岩場に立って反対側のチームをジーッと見ている。かなり興味ありげだが、向こうはこっちをチラリとも見ない。趣旨が違うのか余所のチームには興味がないようだ。

 そうこうするうちに本日のメニュー、水餃子が出来たので早速乾杯する。本日はもっと参加者が多いと思っていたのと、直前リタイアした土居隊員が大食らいなのとで、
水餃子を100個も用意してしまっていた。しかしどう考えても4人で100個は食えないと思われたので、半分の50個だけを鍋に入れ、あとは凍っているのをいいことに持って帰って次回使うことにする。
 そして我々が水餃子を食べ始めた頃を見計らったかのようにいつものイベントが始まった。そう、ライン下りの観光船ご一行様の来訪である。
 それはいつものように立て続けにやってきた。一艘目はなんだかおじさんばかりの農協ツアー風の団体。一様につまらなさそうな感じだ。こっちをジーッと凝視してくるが、こっちもなんだか手を降振る雰囲気でもなかったのでジッと見ていたらそのまま行ってしまった。2艘目はおばちゃん混じりの謎の団体。ちょっとだけおねーちゃんも混じっている。
 と、シバタ隊員がそのおねーちゃんに向けて、浜村純ばりの
やたらニコやかな笑顔で手を振っている。なんだか上機嫌だ。
 次から次へと来るライン下りの観光船に我々は水餃子をほおばりながら手を振り、ビールを飲みながら愛嬌を振りまいていた。
 やれやれ。なぜこんなにサービス精神が旺盛なのだろう。ってゆーか、川に来るとキモチが軽くなるからこーも優しく、ニコやかになってしまうのだろう。しかしここはいつもの癒し系の川ではなく、ファイターな天竜川である。しかも天気が悪く、ためごろう隊員のさよならツアーというちょっと哀愁を帯びたツアーのハズなのだったが。

 さて、水餃子50個を必死になって食った我々が、ランチキットの片づけを始めた頃、ランチキットどころか防水パックに入っていたおにぎりをちょっと食べただけで休憩していた対岸の国際ポリ艇軍団は出発していった。それにしても趣旨が違うとはいえ、ランチの風景ひとつとってもたいへんな違いだ。我々はと言えば鍋を洗って、食器も洗って、燃えるゴミと燃えないゴミは分別して、燃えるものは燃やして、燃えないものはゴミ袋にくるんで防水パックに入れ、鍋はフネにくくりつけ...って、そりゃこっちのが時間掛かるワケである。
 結局国際ポリ艇軍団に遅れること10数分、我々も再エントリーし、鵞流峡後半戦へと突入。後半も水量が少ないせいか、前回より全然素直な感じがした。
 しかし今日が最後のハズのためごろう隊員は相変わらず瀬やウェーブの
センターを避けて漕いでいる。これではドラマも何もあったもんじゃない。アビルマン隊員のチョイ逃げ漕法となんら変わらないではないか。
 鵞流峡を抜けると今朝集合したライン下り時又港である。見ると先に行った国際ポリ艇軍団はここで上がるようだった。我々はもちろんそのまま通過する。

 そこから先の天竜川は川幅も拡がり、タマにちょっとした瀬があるものの、基本的には癒し系のような川である。我々は薄曇りの空の下、ゆるゆると漕いで行った。
 みんなもう瀬を満喫したかのようなまったりムードである。しばらく行くと天竜峡だが、ここは水量が多い時でも大した瀬は無い所だ。そして今日はライン下りの観光船も以前より数が少なく、団体記念撮影用の踏み台だけがポツンと川岸に寂しく見えた。

 その後もまったりゆっくりと下った我々は、午後約16時過ぎにアウトポイントの阿知川の合流点に到着。かくして
大したドラマも起こらないまま、無事にためごろう隊員さよならツアーを終えたのだった。

 それではためごろう隊員、アディオス!! またどこかの川で。






今回の教訓: 「さらばためごろう隊員。また東の方の川に行った時に会おう!」