活動記録其の19・奈良吉野川編
文:miki-fish旦那隊員
2001年7月29日
カヌー人生最大の瀬と、カヌー人生最悪のビール
 7月29日、参議院議員選挙の日だというのに、奈良吉野川にはmiki-fish旦那とmiki-fish妻の2名で構成されるmiki-fish夫婦(めおと)隊員の姿があった…。要するに夫婦でカヌーに来たのですが、「正隊員2名以上の参加と主催によるリバーツーリング」というチーム"鮫"の規約上、めでたく公認活動に認定されちゃいました。
 さてさて、なぜ奈良吉野川に?
 それは、吉野にある後輩の実家に1泊2日でカブト虫を採りに来たついでにカヌーをしたのである。後輩の実家に行く途中、「そこに川があった」のである。まさに登山家ジョージ・マロリーが山に登る理由を問われた時に口にしたコトバ、「そこに山があるから」と同じようなものである。
 とはいえ、ちゃっかり前日にスカウティングは済ませ、その夜には吉野の広大な柿畑に囲まれた山奥で、カブト虫20匹&ヒラタクワガタ&ノコギリクワガタをちゃっかりGETしていた…。


 そして日曜日、午前中はぐうたらと後輩の実家で過ごし昼頃に出発!! まずはアウトポイントである五条市永山寺に車を置き、生意気にも一緒に遊びに来た先輩にアッシーしてもらいエントリーポイントに向かった。ちなみに、昨晩捕獲した昆虫達を車に置きっぱなしにしたのでは全滅間違いないので、永山寺にある国民宿舎のレストランのオバちゃんに預かってもらうことにした。この場を借りてお礼を言いたい、「サンキュー、オバちゃん」。
 さて、エントリーポイントは下市という小さな町にある「吉野自動車学校」の脇から。この場所は分かりやすい。なぜなら、この自校の教習車は「まっピンクに塗装してある」からである。おそらく吉野の桜をイメージしたのだろう、あまりにストレートな発想に潔さすら感じてしまった。ともかくエントリーポイントに迷ったらピンクの車を追いかければよいのだ。ちなみになぜかBMWの教習車もあった。吉野自校おそるべしである。

 そんなことはいいとして、さっそく二人は"航空母艦"の名を欲しいままにしている「グモテックス・オリノコ」に乗り込んだ。先輩方のお見送りを受けて漕ぎ出すと、さっそく第一の難関、「釣り師二人組」が登場。カヌーのメッカだけあって、釣り師もカヌーに理解があると思いきや、いきなり怒鳴られた!!しかし、顔を見ると笑っているので冗談で怒鳴っていると思っていたら、どうも本気だ!もともとああいう顔なのだった。竹中直人調である。
 梁瀬橋をくぐり、ようやく落差1mはある瀬が登場。オリノコを岸につけてスカウティングし、中央の落ち込みに突っ込む。さすがオリノコ、荒波を踏みにじるかのように突破したものの、妻隊員は得意の絶叫。しかもその時、うかつにもパドルを落っことしたのだ!!後ろにいた旦那隊員(僕)が拾いあげ、セーフ。波乱の幕開けである。


 ほっとする間もなく第二の瀬が登場。妻隊員曰く、
「私のカヌー人生の中で最大の瀬が現れた!!」
「おいおい、カヌー人生といっても1年ちょっとじゃないか。」
おおげさである。しかしそう言うだけあって、なかなかのパワー。ホントにここは面白かった。


 この2つの瀬を越えるとしばらくは穏やかな流れが続く。というか流れがない。今回の行程全体として、時折現れる瀬以外はホントに流れがなかった。水量が少ないのも影響しているのだろうか…。しかし、周りの風景はなかなか良い。両岸に巨岩が迫る渓谷あり、緑いっぱいの穏やかな風景ありで、バラエティに富んでてそれなりに楽しめる。
 3つめの大きな瀬は「Sカーブの瀬」という名前がついていた。
 この瀬に突入する寸前、旦那隊員が座っていた板が突然外れ、カヌーの上でひっくり返りながら瀬に突入!!妻隊員の孤軍奮闘のパドルさばきで事なきを得たものの、ちょうど川原でBBQをしていた家族連れの視線が気になり、ややうつむき加減の旦那隊員であった…。

 中盤にさしかかると、カヌー教室のポリ艇約30艇ほどに出くわす。ここはモンベル関西のスクール会場になっているらしい。そんな中を「航空母艦オリノコ」は、まるで象に乗って市中をパレードするインド国王のごとく川の中央をゆったりと下ったのである。オリノコとポリ艇では、大きさが女王蜂と働き蜂ぐらい差があるのだ。どことなく羨望半分、卑下半分の視線を左右に感じ、むずがゆい気持ちになりながら体を小さくして通過した。なんとも小心者の夫婦隊員である。
 気を使って腹が減ったので昼食。今日のメニューは「吉野名物・柿の葉寿司!!」。昨日お世話になった後輩のお母さんがお土産に買ってくれたのだ。もともと柿の葉寿司好きの旦那隊員は、
「こんなに二人で食べれるかなあ」
と言いながらも、いとも簡単に一箱食べてしまった。それはいいとして、悔いが残るのがクーラーボックスを持ってこなかったこと&近くのお店で氷が売り切れだったこと!!せっかくのビールがぬるいのだ!!
「川の水で冷やそっか。」
「うーん、でもそれほど冷たくないよ。」
「仕方ない、そのまま飲もう。」
 先週、先々週と「ひと口めのビール」に至福の喜びを感じていた夫婦隊員にとって、これは後半戦へのパワー回復を遅らせる大きな痛手であった。結果的にこの”ぬるいビール”が今回の勝敗を分ける大きな要因であったことは間違いない。


 ”ぬるいビール”を悔やんでいる場合ではない。後半戦が始まるとすぐ、今回のハイライト「芝崎の瀬」が現れた。左手の巨岩を回り込むと、3段に連なる階段のような瀬が待ち構えていた。周囲で遊ぶカヌーイストの視線を感じながら、航空母艦オリノコは躊躇することなく勢いよく突進!沈する怖さがないので純粋に縦揺れを楽しむことが出来る、おそるべし航空母艦オリノコの安定性である。しかし、この過信がいつか大事故を引き起こすという思いをぐっと胸にかみ締めずにはいられない、夫婦隊員であった。
 この瀬をすぎると、ゴールまではひたすらパドリングという名の筋トレであった。ホントに流れがないので、ボーッと風景を眺めるにしても、頑張らないと今晩中にゴールできないかも?という恐怖心が襲ってきて、つい筋トレに勤しんでしまう。
時折、それなりの瀬が現れたり、それなりに怖そうな釣り師が現れたりして、それなりの緊張感を味わいながら下っていたのだが、”ぬるいビール”の影響が出始め、夫婦隊員は疲れを隠せなくなっていた。カヌーの上に寝そべりながら、たいした会話もせず、川は流れず、時間だけがただ流れていくばかり…。諸行無常…。
 そして、スタートから4時間近く、ようやくゴールである永山寺の橋が見えてきた。俄然筋トレのペースが上がり、見事ゴール!!決して冷たくて気持ちいいとはいえない川の水で足を洗って、駐車場に到着した。

 片付けが終わったあとは、夫婦隊員恒例の「温泉」である。今回は、カブト虫を預かってもらった「国民宿舎緑水苑」にて。基本的には宿泊施設だけれど、500円でお風呂だけの利用が可能。小さなお風呂だったけれど、ちょっと熱めのお湯が疲れをほぐしてくれて、なかなかGOOD。先週の、「天竜川を望めるって書いてあるのに反対方向にある露天風呂」とは格段の差。
片付け終えて車に乗り込んだのが夜の7時。名阪国道・天理インターに入るまでに1時間半。家に着いたのは11時。ホントに遠い、奈良吉野川であった。


今回の教訓: 「何はさておき、ビールは冷やせ!!」